<卒業生インタビュー> Alpaca Chiffon オーナーパティシエ 林 かおるさん
ウィズコロナの時代。
外食産業を担う卒業生たちは、今どのような心持ちでビジネスをしているのでしょうか?
最前線で活躍されている卒業生にヒントをもらうべく、東京都足立区「ことより酒店」にて、
間借りカフェ&パティスリー「Alpaca Chiffon(アルパカシフォン)」を営むオーナーパティシエ林 かおるさんにインタビューを行いました。
<在校中について>
―――― レコールバンタンキャリアカレッジでのコース名、卒業年次を教えてください。
2021年10月から2022年3月まで、飲食店開業コースを受講しました。
―――― クラスは何名くらいでしたか。スケジュールも教えてください。
36名くらいで、人数が多かったです。また、来校される方以外にも、2~3名ZOOMで授業を受けられている方もいらっしゃいました。
―――― レコールバンタンキャリアカレッジを選ばれた理由を教えてください。
会社員で勤めていたときに、激務で大変でした。
疲れ果てた状態で、近所の喫茶店に行ったときにとても癒された経験があり「癒される空間を作ってみたいな」と興味を持ちました。
飲食経験がまったく無かったのでネットでリサーチしていたときに、レコールバンタンキャリアカレッジを発見し、カリキュラムなどを見て信頼できるスクールだなと感じました。
―――― それまでのお仕事について教えてください。
派遣社員として、学会の事務局に勤め、その後、正社員に登用されました。具体的には、病院の教授や院長が専門医の資格を取得するためにプログラムを組んだり、講師の依頼を組んだりする仕事で、教授や院長がクライアントなので、失敗が許されませんでした。
―――― 開業を決意したのは?
53歳後半のとき、健康診断で引っ掛かり再検査になってしまったんです。大学病院で検査を待つ間、「このまま入院して人生が終わるのはつまらない。今なら、未だやりたいことができる」と思いました。検査結果は異常なしでしたが、子どもも手が離れて、自分の時間が使えるようになったことが大きかったです。
―――― 学びたい、身につけたい目標は何でしたか?
いちばんは経営方法です。飲食店の経営をするにあたり、どれくらいの経費がかかって、運転資金が必要か、利益が出ればいいのかを知りたいと思いました。
―――― 印象的だった講師、授業はありますか
開業プランニングコースの宮崎講師が印象的でした。実際に、家賃、経費、売り上を試算し、おおよその目安を知ることができました。
また、カフェプロデューサー中島誠講師も印象に残っています。プランニングの大切さ、コンセプトの大切さ、SNS活用をどのように売り上げに繋げていくかを学びました。
―――― レコールバンタンキャリアカレッジでの学びが「実践的だった」「今のビジネス」に活かされていると感じることは?
原価計算では、食材費を3割前後におさえることなどを学びました。また、宮崎講師から、「シフォンケーキは挑戦しやすく原価の面でもオススメ」とアドバイスをいただきました。
子どものときから、ケーキやお菓子作りが好きで、入学と同時にカフェ巡りをするようになりました。ケーキを食べ歩くうちに、これまでに食べたことがないくらい美味しいシフォンケーキに出合い、独学で研究しました。
試行錯誤し、なんとか近いものができるまでになり、「これなら、いけるのではないか?」とクラスメイトたちに食べてもらい背中を押してもらえたことも印象に残っています。
また、レコールバンタンキャリアカレッジの先輩・「林檎と紅茶と」(@ringo.to_koucha.to)オーナーパティシエ居石(すえいし)さんが開業されるため、シェアキッチンが空くことになりました。居石さんにも、開業について色々とうかがうことができ、心強かったです。
―――― 印象的だったイベント、販売実習などはありますか。
コロナ禍だったので、実施されませんでした。
―――― 在学中、アルバイトなどで飲食業界の経験をされていましたか?
アルパカシフォンと並行して、和カフェでのホールのアルバイトを週2回ほど続けています。主にドリンク作り、デシャップ、簡単なご飯ものの調理や、抹茶のスイーツなどを作っています。
<卒業後について>
―――― 開業された経緯を教えてください。
2022年4月に無店舗でスタートし、7月まで西池袋のコワーキングスペース&シェアキッチン「Attic」で、キッチンを借り販売していました。同じ場所で6月には、イートインも行いました。契約更新は1カ月ごとに行うのですが、腱鞘炎・ばね指が起こってしまい、「作業を辞めるか手術しかない」と医師に言われ、7月で契約更新を辞めました。短時間に一生懸命作っていたので、知らず知らずのうちに力が入ってしまっていたようです。また、ばね指は更年期の女性に多い症状のようですので皆さんにも気を付けていただきたいです。
2022年6月から酒屋さんの奥のイートインスペースをお借りして、週1回、カフェをやっています。8月は、体と相談し、シフォンケーキの代わりにマフィンを提供し、なんとかカフェを継続しました。9月から、シフォンケーキを再開しています。
―――― 開業された時期、場所、店名、コンセプトなど、こだわりを教えてください。
<お日にち>
2022年4月スタートです。
<コンセプト>
100%国産米粉と米油を使った、ヘルシースイーツのお店です。大好きなアルパカのふわふわ感をシフォンケーキで表現できたらと思っています。
<店名>
アルパカ牧場が好きだったんです。アルパカの毛でできたぬいぐるみも持っているくらい、大好きです。また、お子さんでも覚えやすい名前にしたいなと思いました。
1カ月くらい悩んでいましたが、「これだ!」と、アイデアが突然降りてきた感じです。
<場所>
実家のお隣で、幼馴染が営む地域密着型の酒屋さんです。父が酒屋さんの隣に住んでいるのですが、「ことより酒店さんは月曜、火曜が定休日だから、間借りできるか聞いてみたら?」と提案してくれ、何十年ぶりかに連絡をしたところ、快諾してくれました。
中島講師の授業で、「あなた方の財産はお金だけじゃない。育ってきた環境、経緯、周りの人との繋がり全てが財産だから、一度見直してください」と教わりました。
改めて、ことより酒店さんに「間借りカフェのメリット、デメリット」をプレゼンしようと思っていたら、「ビール会社さんに店頭を貸すときもお代をいただいていないから、一切いらないよと。両方がWIN-WINになるような運営方法を考えよう」と提案してくださったんです。ことより酒店さんの奥は、知る人ぞ知るスペースで、お子さんや女性が入りにくいという悩みがあったようです。
私がアルパカシフォンを営業しながら、生ビールや物販の販売を行うことで、酒店の売上にも貢献できるようになってきたようです。
カフェに来て下さった方がビールを買って帰ってくださったり、お子さんがケーキを食べて、お父さんやお母さんがお酒を飲んだりという楽しみ方もできます。
<客層>
平日12時から18時までなので、主婦やお子さん、保育園帰りのママとお子さんも多いです。
ことより酒店さんは五反野エリアで、50年以上続いている老舗なのですが、常連さんが人づてに知って足を運んでくださることもあります。
カフェの看板を出しているので、通りすがりのお客様だけでなく、リピーターも増えてきています。
―――― 特に売れ筋のメニューについて教えてください。
シフォンケーキ(レモン)(税込300円)です。シフォンケーキは、4種類前後を揃えています。また、米粉マドレーヌ(税込300円)や、プリン(税込350円)も人気です。ドリンクは、コーヒー、紅茶、カフェオレ、アップルジュースを揃えています。ことより酒店さんのサーバーで、クラフトビール、生ビ―ルを提供することもあります。おつまみは、ナッツ、トルティーヤなど乾きものを提供しています。
―――― 間借りカフェをオープンするにあたって、資格取得は必要ですか?
場所を借りる場合、飲食店さんが取得してくださっていると思うので不要です。ただし、シェアキッチンを借りる場合は、「食品衛生管理者」の資格が必要です。
私は、レコールバンタンキャリアカレッジ在学中に取得しました。保健所のセミナーに一日参加して、テストを受けるのですが、2~3カ月前に申し込まないと、なかなか予約ができません。私は、レコールバンタンキャリアカレッジ入学と同時に申し込みました。クラスメイトの中には、コロナ禍でなかなか講習会の空きが出ない、と嘆いている人もいたので、入学と同時に講習の予約をしておくことをオススメします。
―――― 開業されて経験されたご苦労についてお聞かせください。
自分の体調が悪くなってしまうと、お店が開けなくなってしまうので大変だなと思います。
―――― SNSでの発信はどのようにされていますか。
Instagramがメインで、Facebookは自動的に繋がるようにしています。Twitterは手が空いたときに更新します。
中島講師に「年代ごとに使っているSNSが違うので、まんべんなくやったほうがいい」とアドバイスされて実践しています。
いちばん良いのは、酒屋さんの常連さんの口コミです。SNSの発信も大事ですが、いちばんは地元のお客様の口コミが有難いです。
―――― 飲食ビジネスの面白さ、喜びはどのような時に感じられますか。
お客さまが「美味しかったよ」と言ってくださるとき。
あとは、ニシイケバレイのシェアキッチン「attic」で営業していたときに、家族で来て下さった人が印象に残っています。
シフォンケーキを買いに来てくださり、しばらくしてから、お子さんがアルパカの絵を描いたお手紙を持って来てくれたんです。
平仮名で「あるぱかしふぉんのけーきおいしいかったよ」と書いてくれていて、とっても嬉しかったです。
―――― 日々の営業、大変さはどのようなところでしょうか。
仕込みの数を見極めるのが難しいです。天候とお客さまの足並みに左右されるのですが、例えば雨の日は、少なく作ります。
でも、台風だと地域の方々が電車に乗らず近場で過ごされるからか、むしろ売れ行きが良いときもあり、判断が難しいです。でも、そこが面白いところでもあります。
―――― 今後の目標はありますか。
以前は、都心で開業したいと思っていたんですが、今は地域密着型で地元の方と交流ができる、温かいお店を作りたいなと思っています。物件を探している最中なので、「目を養っている」状態。中島講師にも「物件はたくさん見ておいたほうがいい。良いと思う物件は、他の人にとっても魅力的だから2、3日で決めないといけない」と言われていて、意識しています。
―――― 飲食業界で活躍するのに、必要なスキルはどのようなものでしょうか?
作る技術も大切だと思いますが、それと同じくらいホールを回すスキルは大切。注文を受けた順に丁度いいタイミングで提供する技術があると良いです。
それから、当然気持ちの良い接客だと思います。
―――― レコールバンタンキャリアカレッジへの入学を検討されている方に、レコールバンタンキャリアカレッジはオススメしていただけますか。はいの場合理由を教えてください。
授業料は高いかもしれませんが、それだけの価値はあります。開業への近道を教えてくれる場所だと思っています。
この年齢になると修行など、遠回りをする時間はもったいないです。年齢を重ねている人や、若い人にとっても、飲食店開業の「近道のチケット」を手に入れられると思います。
―――― レコールバンタンキャリアカレッジへの入学を検討されている方に、ぜひ前向きなメッセージをお願いします!
講師の方々は、「飲食店の経験が無くても開業できる」とおっしゃいます。個人的には、何かしらの経験は必要だと思います。短期間でもいいので、アルバイトをしておくことをオススメします。年齢的な理由で、もしも自分に合うアルバイトが見つかりにくくても、お客さま相手の商売を経験しておいたほうが、さまざまな状況が分かり開業後も対応しやすいと思います。
例えば、調理場では手指をアルコール消毒するだけでなく調理器具も、洗った後にすべて消毒を行います。
特に、アイスクリームや寒天など、火を通さずお出しするものに使う調理器具やお皿は、徹底的に消毒します。
デパートなど衛生管理が厳しい店舗で働きながら学ばれると、なお良いと思います。
<SHOP INFO>
Alpaca Chiffon(アルパカシフォン)
Twitter:@ChiffonAlpaca
Instagram:@alpaca_chiffon
住所:東京都足立区弘道1丁目35−1(ことより酒店さん)
営業時間:12:00〜18:00
営業日:月曜のみ(記事掲載時)