<卒業生インタビュー>den*encafe オーナー 皆川麻里さん
「ウィズコロナ」の時代。 外食産業を担う卒業生たちは、今どのような心持ちでビジネ スをしているのでしょうか? 最前線で活躍されている卒業生にヒントをもらうべくden*encafe 皆川麻里様にインタビューを行いました。
<在校中について>
―――― レコールバンタンキャリアカレッジでのコース名、卒業年次を教えてください。
2015年4月から半年間、カフェオーナーコース(※現在は飲食店開業コース)で学び10月に卒業しました。
―――― クラスは何名くらいでしたか。スケジュールも教えてください。
6か月コース、1年コースなどと合同のクラスで計24名くらいでした。
授業は、各週で平日に授業があったと思います。(※現在は土・日開講のみ)ウチのクラスはとても仲が良くて飲み会をしたり、記念のエプロンを作ったり異常に楽しかったです(笑)。
―――― レコールバンタンキャリアカレッジを選ばれた理由を教えてください。
44歳のときに入学しました。
専門学校卒業後は、ツアーコンダクターをしていました。母が旅行代理店を起業してからは、母の手伝いをするようになりました。
36歳のとき、母の同級生の息子さんがイタリアン食堂立ち上げることになり手伝うことに。立ち上げからの参加だったので、必要なもののリストを作りユニフォームも準備しました。キッチンを手伝いながらお菓子作りもしていましたね。料理も好きだったのでいつかペットも来られるカフェを作りたいなぁと思っていました。40歳での結婚を機に、宮崎から会津若松に引っ越しました。海外のカフェや日本のカフェを巡るうちに「こういうお店をやれたらいいな」という想いが強くなりました。
自分の中では「絶対できる」という気持ちはあったものの、同時に「基礎から学ばないと失敗する」という気持ちもあり入学を決めました。
―――― 学びたい、身につけたい目標は何でしたか?
飲食業は大変な事業ではあると予想していたので、経営的な面を学びたいと思っていました。知識がない状態で始めると1年以内、3年以内に閉業してしまうケースも多いです。通信の開業講座もあるけれど、プロ講師の声を生で聞けたらいいなと思っていました。レコールバンタンキャリアカレッジは、費用的にお手軽なコースもあったのでピッタリだと感じました。
通学は、会津若松から夜行バスに乗って通っていました。地元でカフェを開業したいと話すと「会津でカフェをやっても無理」「観光客がメインなので無理だよ」など否定的な意見を言う人が多かったので、プラス思考な人が多い環境で学びたいと思っていました。レコールバンタンキャリアカレッジは前向きな人が多かったですし、東京が好きなので通うのは苦ではありませんでしたね。
―――― 印象的だった講師、授業はありますか?
宮崎講師と佐々木玲(あきら)講師。宮崎講師は、考え方、決断力、感性どれも素晴らしかったです。佐々木講師も、センスが良く立地やインテリア選びについて教えてくれました。「場所が大事」というお話はとても印象に残っています。具体的には、人通りがあるところ、都会なら駅が近く、道路に面していても、入りやすい入りにくい場所があるのでそうした視点を持つことが必要だと教わりました。物件を見る際も、信号の近くでUターンできるかどうかなども気をつけて見るようになりましたね。
―――― レコールバンタンキャリアカレッジでの学びが「実践的だった」「今のビジネス」に活かされていると感じることは?
事業計画書や銀行からの借り入れなどの知識を得ることができたこと。
時期的にも良かったんです。猪苗代湖で行う新規事業に対して「1千万、無利息、10年返済」という融資があったんです。物件を購入するときに申請しようとすると、信用保証協会さんに「事業計画書」がないと貸せないと言われて。
そこで、レコールバンタンキャリアカレッジ1年コースに在学していた友だちに事業計画書を見せてもらい、それを参考に準備しました。
1月から12月までの売上げ予想、光熱費など経費を計算し、佐々木講師に教わった立地のメリット&デメリットも入れました。他に、提供する料理のイメージ、また自分が作っていた野菜の写真に至るまで細かく10枚くらい書いて提出しました。すると、「こんなの見たことない」とすごく褒められたんです。申請する人の多くは、ペラいちの資料で済ませてしまう人が多いそうなんです。
しっかりとした事業計画書が準備できたことは、レコールバンタンキャリアカレッジに通っていたいちばんの経験値だと思います。そもそも融資の存在を知ったのも講師たちに「開業前に公的機関や街の助成金をちゃんと調べなさい」と言われていたからです。
―――― 印象的だったイベント、販売実習などはありますか。
卒業生が最後に行う販売イベントはありました。校舎のスペース、メニューを考え、お店の名前をつけて1日カフェをしたと記憶しています。
<卒業後について>
―――― 開業された経緯をお教えください。
10月に卒業し、2年間は物件を探していました。やりたい場所が見つからず、「当分無理かもしれない」と諦めそうになるときもありました。
最初は土地だけ購入し、トレイラーハウスでやりたいと思っていました。宮崎講師に相談すると「新規事業で始めるのなら、なるべく1千万円以下で開業するほうがい」とアドバイスされました。長野県のトレイラーハウスを販売する会社にも行きましたが、やはり室内が狭くて。ましてや、新しく土地に建物を建てるとなると何千万とかかります。
「湖が見られる場所はどうだろう?」と探し、湖畔沿いの物件を見つけました。しかし、街の中心地からは外れています。また、湖畔沿いの物件はリフォームをする度に町や市に申請が必要なんです。
中古でもいいから、いい物件はないか……と探していたところ、不動産屋さんに「いいカフェがある」という話をもらいました。
そこは、100年以上の古民家を改築されたカフェでした。ものすごく素敵な空間で、前のオーナーさんが6,000万くらいかけて改修されたそうなんです。カフェをしていた50代のご主人が亡くなられ、奥さんはアメリカ人でお子さんもいなかったのでアメリカに帰りたいということでした。改修して7年目でしたが、埃、カビひとつなくとても丁寧に手入れがされていました。また、お店の隣にはご自宅があり一緒に売りたいという話でした。自宅と合わせても、借り入れが1000万で済むという運命的な出会いでした。物件は磐梯山の目の前に位置していて、遮るものが何もない。そんな贅沢な場所はココだけです。国道沿いには湖が、反対側には田園風景と磐梯山がのぞめて日々癒されています。2017年12月に購入し、2018年4月24日にオープンしました。
<エリアについて>
野口英世記念館があるエリアの一角です。私たちがカフェを始めた年に、すごい偶然が起きたんです。
まず、農業倉庫を改築した「cafe217」さんがオープンしました。県内でも有数のカフェです。4月頭には「三茶カフェ」さんがオープン。私たちの一週間前に「ボタニカルショップ&ファマーズCafe Ca-Ga」さんがオープンしました。同じ年に4件のカフェができて、「猪苗代カフェストリート」と呼ばれるようになりました。雑誌の特集もされ、相乗効果が生まれていると感じます。
―――― 開業された時期、場所、店名、コンセプトなど、こだわりをお教えください。
<店名・コンセプト>
猪苗代湖の田園を見ながら、くつろげるカフェにしたいと思いden*en cafe にしました。漢字はちょっと……と思いアルファベット表記に。
<デザイン>
東京のカフェ、海外のカフェを巡っていたので構想はありました。「いい!」と思うカフェの内装や外観は写真に撮っていました。
特に「木の温かみがある感じ」を大切にしています。主人は内装関係の仕事をしているので工事はすべてお任せしました。
<客層>
カフェ業態なので、若い人しか来ないだろうと予想していました。ターゲットは20代から50代を想定していましたが、実際には60代から80代の方も来てくれています。地元の方、リピーターの方が多いですね。
1階はトイレと食品庫のみでエレベーターがついているので、車椅子でも来ることができ、バリアフリーです。
<宣伝>
オープンした年の秋に、地元紙「モンモ」さんの取材を受けました。表紙に掲載され、その月は大忙しですごかったです。オープンして次の年にはテレビ局の取材も来ていただきました。雑誌やテレビ、SNSなどで紹介していただき、口コミで知っていただくことが多いです。
―――― 特にオススメのメニューについてお教えください。
カフェタイムのフレンチトーストがオススメです。「オリジナルフレンチ」1100円(税込)と「チョコバナナ」1500円(税込)が人気です。
こだわりは、フレンチトースト専門バケットを使っていること。食パンだとベチャベチャして食べ辛いイメージがあったので、展示会で探してきました。問屋さんを通して仕入れています。その専用バケットをバッター液に漬けて1~2日寝かせます。ただ、廃棄もでてしまうのでなんとか廃棄を少なくする方法はないか?と模索していました。
そんなとき、クラスメイトが文京区に「夢境喜茶(むきょうきっさ)」をオープンさせるというのでお手伝いに行ったんです。調理指導に来ていたパティシエさんに、漬け込みの裏技を教えてくれたんです。その裏技を活用しています。
―――― 開業されて経験されたご苦労についてお聞かせください。
メニューを考えたり、お菓子も全て作ったり、スタッフを揃えたり。閑散期でお客さんが来ない時期は、売上げも下がります。
最初の年は3人スタッフを抱えていたので赤字でした。売上げはあったのですが、かかるお金が予想以上に多くて。人件費の他に、食材の仕入れ、光熱費は毎月8万円かかっています。意外に知られていないのが、機材の「保守点検代」。年間18万円+消費税なので、約20万円かかります。具体的には、ピザ釜、3台の業務用冷蔵庫、ガス窯、製氷機などの点検にかかっています。
物件を買って開業する方は、「保守点検費」が結構かかるということを知っておくと良いと思います。
もうひとつは、スタッフとの相性。合う、合わないはありますね。スタッフと精神的に合わないと、楽しく働くのは難しいです。スタッフの人選はいちばん苦労するポイントです。
―――― 現在のスタッフ数は?
現在は、韓国に留学していた女性、会津出身の女性のふたりです。信用できるスタッフが一緒に頑張ってくれているので、私はストレスフリーで働けています。ときどき、主人も手伝ってくれています。
スタッフが楽しく働いていると、その雰囲気がお客さんに伝わり、お客さんがまた人を呼んでくれてお金がまわっていくと思います。明るく楽しく仕事をすることは何にも代えがたいです。
―――― 新型コロナウィルスの流行で、工夫された点や日頃、心がけていらっしゃることについてお教えください。
週1日、月曜日は定休日とすることにしました。土日の後に月曜日も営業するのは大変です。家事もしないといけないですし……。
佐々木講師は「カフェを始めると休めない。始める前にいろいろと準備して」と助言してくれ、宮崎講師も「最初の2か月は休みなしで仕事する人が多い」とアドバイスしていました。なので始めて2年目までは、仕込みから接客まで自分でやっていて、体のことはあまり考えられていませんでした。
新型コロナウィルスが流行し始めた時期に、一ヵ月間休業し、ゆとりを持って仕事をすることを考えました。もちろん、お客さんありきの仕事なんですが、自分の体も労わらなくては続けられないと気付いたんです。思い切って月曜、火曜も休みにして「休み方改革」をしました。視野が広がり、充実感が出ましたね。スタッフもゆとりを持てて仕事にのぞんでいると思います。
―――― テイクアウトなどは対応していますか?
もともとピザはテイクアウト可なので、対応しています。お弁当などは始めていません。観光地なのであまりニーズがないことと、急に10個などの注文が入っても対応できないからです。
新型コロナウィルスの観点でいうと、対策費用は増えました。ウチは、商工会に入るのが遅かったのですが、アルコール消毒代、マスク代、空気清浄機代など7割ほど出していただきました。ただし、申請が間に合わなかった検温器、アルコール自動スプレー機などの費用は、かかってきてしまっています。マスクケースとか、思ったよりもかかっている印象です。
―――― 飲食ビジネスの面白さ、喜びについて教えてください。
お客さんに喜んでもらえるのがいちばん嬉しいです。「美味しかったよ」と喜んでもらえたり、お客さんから反応が返ってくるときです。
―――― 大変さはどのようなところでしょうか。
開業したばかりは、田舎なのでスタッフを揃えるのが大変でした。denen*cafeのスタッフは知り合いにお願いして紹介してもらいました。
オープン時は、お花も上手に活けられる素敵なシングルマザーの方を雇いました。メニュー表も、その方の彼氏が引き受けてくれて、揃えるべきものも揃えることができました。厨房は知り合いのツテで応募してくれた方がいたので、3人でスタートしました。
始めたのは4月末でゴールデンウィークだったので、オープンしてすぐに忙しい時期を経験しました。開業当時は料理が出るのは遅いし、スタッフも慣れていないしで本当に大変でしたね。また、ゴールデンウィーク中に一名辞めてしまって……。知り合いの方や主人の息子が手伝ってもらったりしてなんとか乗り切りましたね。1日100人来た日はフラフラでした。オペレーションもスムーズではなかったので、お客さんに怒鳴られることも……。これもひとつの経験値です。こうすれば良かった、ああすれば良かったという細かな点を改善し、3年目ではできるだけ早く提供できるように改善されてきています。
―――― 飲食業界で活躍するうえで必要なスキルは?
周りと上手く働けて、楽しく働けて、自分自身を磨くスキル。
一人で始める人には関係ないかもしれませんが、開業すると自分が人を雇う立場になります。周りと上手くやれるスキルは大事です。大切なのは、お食事を作るスキルだけではないと思います。私は人が好きなので、人と心地よく働くように努力することは苦になりません。
―――― レコールバンタンキャリアカレッジへの入学を検討されている方に、ぜひ前向きなメッセージをお願いします!
絶対に通ってほしいです。講師の授業を聞くことによって、プラスのパワーをいただき、基礎的なお金の面を学ぶことができました。講師は、いいことばかりではなく、厳しいことも言ってくれます。あとは、ぜひ仲間を作ってほしいです。私は、クラスメイトと今もずっと付き合えています。それがいちばんの宝です。
den*en café
福島県耶麻郡猪苗代町三ツ和家北500-3
0242-93-8860