<卒業生インタビュー>「Coffee KOBAN」オーナーバリスタ 後藤 尚久さん
開業実績380店舗以上のレコールバンタンキャリアカレッジ。
外食産業を担う卒業生たちは、どのようなことを意識してビジネスをしているのでしょうか?
最前線で活躍されている卒業生にヒントをもらうべく、
神奈川県横浜市「Coffee KOBAN」オーナーバリスタとして活躍する後藤尚久にインタビューを行いました。
<在校中について>
――― レコールバンタンキャリアカレッジでのコース名、卒業年次を教えてください。
レコールバンタンキャリアカレッジでのコース名、卒業年次を教えてください。
2021年4月に入学しました。4月から9月にかけては焙煎を学ぶため「コーヒーロースト&ブリューコース」、10月からは3月まで経営に関する「開業プランニングコース」を受講しました。一度に授業を受けると頭が混乱しそうだと思ったので、半年ごとに授業を受けることにしました。入学したのは、52歳のときです。
――― クラスは何名くらいでしたか。
前期「コーヒーロースト&ブリューコース」は20名くらいだったかと思います。後期の経営コースは30名ほどだったのではないでしょうか。コロナ禍真っただ中でしたが、教室が一杯になるほど盛況でした
――― レコールバンタンキャリアカレッジを選ばれた理由を教えてください。
入学する前から、開業する前提でスクールを探していました。他にもスクールの候補はありましたが、レコールバンタンキャリアカレッジは、現役プロフェッショナルの方々が教えてくれるのがいちばんの決め手になりました。
――― 学びたい、身につけたい目標は何でしたか?
22、23歳のときから、漠然とカフェを開業したいと考えていました。
新型コロナウィルスが発生したタイミングで、開業するのであればこのタイミングだと思いました。それまで独学でコーヒーを焙煎したり淹れたりしていましたが、「開業するのに、独学だけでは……」と思い、やらなければならないことを整理しました。すべきことを洗い出した結果、働きながら開業に必要な技術や知識を学べるレコールバンタンキャリアカレッジに入学しました。
――― 印象的だった講師、授業はありますか?
焙煎では、PASSAGE COFFEE佐々木講師に、経営は宮崎講師に学びました。
これまでの仕事でも経営分析にも携わりましたが、「経営分析」と「経営」は別ものだと感じます。私自身は、簿記を持っているわけでもないですし、経営するにあたってのポイントを学べたことが、とてもタメになりましたね。
もう一名、印象に残っているのはバリスタ・篠崎講師です。申し込み後に、ミーティングルームに併設されているバーカウンターでたまたまお会いました。ドリップコーヒーのデモンストレーションをしてくださって「同じ豆なのに、淹れ方が違うだけでこれだけ味が変わるんのですよ」と教えてくださったのが、とても印象に残っています。篠崎講師が提唱する「お客さまに合ったコーヒーを出す姿勢」にも、とても感動しました。
自分が思う「美味しい」を一方的に推しつけるのではなく、同じ豆でもお客さまの好みに合わせて苦味を抑えたり、酸味を抑えたり。瞬時に好みに合わせた提案できるところは、実際に営業している立場から見ても凄いと感じます。
――― 授業の雰囲気はいかがでしたか?
焙煎の授業では、和気あいあいとした雰囲気でした。また、経営の授業は、席がほとんど固定されていました。(2021年4月入学当初は、座席の指定をしておりました。現在は、お好きな席で授業を受ける事が可能です)
なので、授業前後に席が近いクラスメイトとはいろいろな話をしましたね。今でもLINEグループで繋がっているので、近況報告しています。「Coffee KOBAN」にも、経営の授業のクラスメイトが遊びに来てくれました。
――― レコールバンタンキャリアカレッジでの学びが「実践的だった」「今のビジネスに活かされている」と感じることは?
技術面、経営的な面もそうですが、レコールバンタンキャリアカレッジに通っていなかったら、もたなかなったかもしれません。それくらい役に立っていると思います。
経営の授業では、「今は、広告よりもネットの時代。開業する前からInstagramのアカウントを開設しなさい」と習いました。ですので、授業が始まって早々にInstagramを始め、発信を始めました。最初はお店に関係のない投稿もありましたが、オープンまでの段取りまでを発信していると、新聞記者の方がご覧になっていたんです。
Instagramを運用していた結果、オープン2日前には、神奈川新聞に取材記事が載りました。また、神奈川新聞はネットニュースに転載されるので、それを機に、読売新聞、毎日新聞、タウンニュースからの取材依頼が舞い込みました。神奈川テレビも早々に取材に来てくださいましたね。メディアの方々に「どうやって、お店を見つけられたんですか?」と聞くと、皆さん「Instagramです」と言われます。なので、Instagramの発信はとても大事。毎日とまではいかなくても、こまめに発信することを心がけています。
――― 印象的だった授業は?
特に、宮崎講師の授業は的確で、すべてが新鮮でした。飲食店の基準を満たすキッチンの詳細も知ることができ、「飲食店経営について知れば知るほど、必要な機械が多いな」と感じたことを覚えています。
――― 在学中または卒業後に、アルバイトなど飲食業界の経験をされましたか?
高校時代、レストランでアルバイトをしていましたがキッチンの雑用でした。あとは、20歳の頃にホテルでアルバイトをしていましたが、サーブする仕事でした。
――― 在学中「開業サポート」は活用されましたか?
1回だけ活用しました。入学した早い段階で、講師に相談に乗っていただきました。
――― 開業サポートを利用した感想は?
「卒業後2回まで無料」とうかがっていたので、残り1回は今後のために取っておこうという気持ちでしたね。「Coffee KOBAN」をオープンするときは、経営の授業でお世話になった宮崎講師にコンサルティングに入っていただきました。コンサルタントとして入っていただくことで、分からないことも質問できるのが心強いです。
<卒業後について>
―――― 開業された経緯を教えてください。
20歳前半から開業したいと思っていました。
コロナ禍の在宅ワークを機に、2020年5月に鎌倉から横浜に引っ越してきました。物件も空きやすいと考え「今だ!」と本腰を入れて物件探しを始めました。しかし、半年ほど探しても思うような物件は見つからず……。住居から近い場所で探そうと思い、区役所前なども検討しましたが、見つかりませんでした。
そんなあるとき、当時勤めていたオフィスに出社しようとしたとき、交番の目の前を通り過ぎました。家から1分の場所にて、「あれ?ここって交番だよな?ずっと閉まっているけれどなぜだろう」と不思議に思いました。サイズ的にもコンパクトで「いいな、ココ」と調べていきました。すると、その交番は2018年に閉鎖され、2019から2020年頃には官公庁オークションに出されていました。1度目は落札者がいませんでしたが、2度目で落札されていることが判明。ということは、民間の人が持っているのだろうと思ったんです。
レコールバンタンキャリアカレッジで、「経営」の授業を受けているタイミングだったので、宮崎講師か中島講師いずれかの講師に事情を説明し、「気に入った物件があるのですが、どうしたら持ち主が分かりますか?」と相談しました。すると、「登記簿を調べたら分かるよ!」とアドバイスしてくださったんです。そこで、調べたものの建物の登記はありませんでした。しかし、落札されているので土地は登記されているはずだと調べていくと、所有者の名前と住所が判明したのです!そこで、オーナーに、カフェとして借りたいとラブレターを書きました。オーナーは「いったん中を見てみたら?」とおっしゃってくださって内覧させていただくことに。改装前は結構ボロボロでしたけれど、そこは掃除をすればなんとかなるかなと思いました。物件のユニークさはもちろん、広さも理想的で面白いと思いました。
―――― 開業された時期、場所、店名、コンセプトなど、こだわりを教えてください。
<お日にち>
2023年4月1日です。
<店名>
1案目は、個人事業主としての屋号「Roast and Grind Coffee」でした。でも、英語でもカタカナでもすごく長いです。なので、略して「RGC」に。3案目は、交番の跡地での開業にちなんで「栗田谷珈琲交番」にしようと思いました。ですが、浅煎りの爽やかなコーヒーを提供しているのに、「栗田谷珈琲交番」だと字面が漢字で、どうも重たい印象に。
考えた結果、皆さんが知っている「KOBAN」を使おうと思いました。また、「交番」は実はローマ字で書かれていることが多い。そこで、4案目「Coffee KOBAN」か「Cafe KOBAN」で悩み、字画的に良かった「Coffee KOBAN」に決めました。
<内装>
レコールバンタンキャリアカレッジで空間・デザインなどを教える、デザイナー佐々木講師にお願いしました。お店の方向性として、浅煎りのコーヒーと、お客さまの健康に配慮したヘルシーなメニューを提供すること。メインターゲットは女性で、スッキリとして居心地のいい空間にしたいといった要望を伝えたところ、3つほどデザイン案を出してくださいました。
その中で、白と淡い木の木目を基調にしたデザインを選びました。2022年夏から内装デザインに取り掛かり、工事は2022年11月頃から始めています。
<デザイン>
お店のショップデザインには、私が太っていたときの似顔絵イラストを採用しています。自分で描きました。かつては90kgほどあったのですが、ケトンダイエットで65kgに。
「Coffee KOBAN」で低糖質スイーツなどヘルシーなメニューを提案しているのも、自分のそうした経験に基づいています。
<お客さま層>
8割方女性です。年齢では、30~40代の若い女性が最も多く、上は70代の方までいらっしゃいます。
――― 入学前に描いていた開業とイメージに変化ございましたか?
そうですね、色んな面で違いますね。主にふたつあります。
まずは、キッチンの物の配置です。限られたスペースに、どのように物を配置すれば使い勝手がいいか。イメージして揃えてはいますが、実際に開業してオペレーションをしてみないと細かいところまでは見えてきません。
もうひとつは、当初はランチをやるつもりはありませんでした。コーヒーだけで営業する予定でしたが、近所の方から「ランチもやってください」というご要望を多くいただきました。「これだけご要望をいただけるのなら、チャレンジしてみよう」と思い、宮崎講師にランチメニューについてご相談しました。
現在、ランチは2種類のカレーを入れ替わりで出しています。黒カレー(税込1180円)と、グリーンカレー(税込1180円)は、どちらも同じくらい人気です。カレーには、約10種類以上の野菜を使っています。また、付け合わせのサラダにも、グリーンレタス、サニーレタスなど、4~5種類の野菜が入っていて3種類のデリも付きます。ご飯も22穀米なのでお皿の半分は野菜です。お客さまには、たっぷりの野菜を召し上がっていただきたいと思っています。
―――― 特に売れ筋のメニューについて教えてください。
(ドリンク)
金額的に多いものと、杯数的な売れ筋とでは異なります。
金額的に大きいのは、カフェラテ(税込550円)です。杯数としては、ハンドドリップ(税込500円~)が出ます。
ハンドドリップは、季節によって豆が変わります。同じブラジルでも農園を変えたりして、そのときにいちばん美味しい豆を揃えるようにしています。今は、ホンジュラスが、クセがなくて人気ですね。また、コーヒー目当ての人は、「ゲイシャ」(税込700円)を頼まれることも多いです。パナマのゲイシャは高いですが、エチオピアのゲイシャなので、手に取りやすい価格で出しています。
(フード)
ランチのカレーがいちばん多く出ています。あとは、軽く召し上がりたい人はサンドイッチをオーダーされることが多いです。特に自家製タルタル特製たまごサンドが良く出ます。タルタルで使用するマヨネーズから自家製となります。
―――― 「値付け」はどのように行われていますか。販売価格の付け方など、コツがありましたら教えてください。
宮崎講師に原価を出していただき、計算もしていただきました。
経営の授業でも、「原価は、売価の2~3割におさえる」と習っています。厳密にいうと、野菜の価格が高くなっているので粗利率は落ちている可能性はあります。
なので、工夫は必要です。具体的には、以前サラダのドレッシングは人参ドレッシングでした。宮崎講師にレシピを教えていただき、お客さまからも好評でしたが、野菜の価格が高騰し、原価を圧迫してきました。また、人参ドレッシングは日持ちがしないこともあり、オリーブオイルと塩に変更しました。塩は色々な種類を独自にブレンドしたオリジナルです。
―――― コーヒー豆&焙煎はどのようにされていますか?
商社を探して、気に入った豆を購入しています。
当初は、大きな焙煎機を導入し、自家焙煎豆を販売することを考えていましたが、この物件に焙煎機が入らないと分かりました。そこで、レコールバンタンキャリアカレッジ入学前から使っていた、自前の電気焙煎機で焙煎しています。
―――― 開業されて経験されたご苦労についてお聞かせください。
ランチの影響もありますが、休みの日は食材の買い出しと仕込みをしているので、純粋に「休日」とは言えません。その点は想定とは違いますが、ランチは、売上の7割を占めている印象です。
もうひとつは、安定的に売上をのばしていくこと。雨が降ったりすると、途端に客足が鈍ります。色々な飲食店に聞いても「良いときも悪いときもあるよ」と言われますが、お天気に左右されずに、どうしたらお客さんに根付くかが今後の課題だと思います。
―――― 飲食ビジネスの面白さ、喜びはどのような時に感じられますか。
お客さんと話をするときが、いちばん楽しいですね!自分が淹れたコーヒーや料理を「美味しい」と、目の前で喜んでもらえるのが魅力だと思います。
―――― 大変さはどのようなところでしょうか。
そうですね……。仕込みなど大変といえば大変なのかもしれませんが、料理も嫌いではないので、日々楽しんでいます。
―――― 飲食業界で活躍するうえで、必要なスキルはどのようなものだとお考えですか?
飲食業界なので、料理スキルと経営は必須だと思います。包丁も握ったことがない人が料理を作れるのかと問われると、練習などで、経験を積んでおかないとやはり難しいと思います。
さらに大切なのは、コミュニケーション能力だと思います。店員さんがムスッとしているお店には、あんまり行きたくないじゃないですか?個人的には、店員さんと気楽に話せると、「また行こうかな」と思うので、自分のお店でもそうした接客を心がけています。
―――― 今後の目標はありますか?
新しく焙煎機を購入して、焙煎に注力したいですね。
実現するためには、「焙煎」ができるくらいの広さのある2店目についても考えていきたいです。2店舗目を出すとなると、自分が行っている日々のオペレーションや、レシピをマニュアル化するというハードルもありますが……。周りからも、「2店舗を出したら」と、言われたりするんですよ。
―――― レコールバンタンキャリアカレッジへの入学を検討されている方に、レコールバンタンキャリアカレッジはオススメしていただけますか。はいの場合、理由を教えてください。
もちろんです。バンタンの紹介制度を利用して、入学希望者をふたりもご紹介したほどです。
業界の最前線でお仕事をされているプロフェッショナルが、技術を教えてくれるというのがすごく良かったです。単に学校の授業だけを教えている先生に教えてもらっても、「それは、本当に現場で使えるの?」という疑問が残ったと思います。
余談ですが、公庫のセミナーを受講したときに、「レコールバンタンキャリアカレッジで、開業ノウハウを学びました」と話すと、ラーメン屋さんを開業しようと参加されていた受講生が興味を示されました。そこで、レコールバンタンキャリアカレッジを紹介しました。実際に通うことになり、コーヒー屋さんに転向されると聞きました。
開業後も、お客さんから「実はお店を開きたいのです」と相談され、レコールバンタンキャリアカレッジを紹介したほどです。
―――― レコールバンタンキャリアカレッジへの入学を検討されている方に、ぜひ前向きなメッセージをお願いします!
「自分ができること」で考えるよりは、「何をやりたいか」を起点にし、とにかくやってみること。やらないで「できない、できない」というのはおかしな話だと思います。
一歩踏み出してみないことには、何も進まないよねと伝えたいです。躊躇しているのは、自分にできるか?できないか?と考えてしまうから。やってみてダメならダメでいいじゃないですか、チャレンジしたことや学んだことは必ず自分の身になります。
<SHOP INFO>
Coffee KOBAN
@roast_and_grind_coffee
神奈川県横浜市神奈川区栗田谷10-1 Coffee KOBAN(旧栗田谷交番)
営業時間:9:00 – 16:00(ランチ:11:00 – 14:00)
050-3749-2603
定休日:水曜、隔週土曜