レコールバンタンキャリアカレッジは、製菓・カフェ・調理と、「食」の分野に特化した人材を育成する専門校です。
バンタングループの実績として、56年間で約19万人の卒業生 を輩出してきました。最前線で活躍されている卒業生に開業のヒントをもらうべく、宮崎県にて、「salty biscuits」を営むオーナー山本雪乃さんに、お話をうかがいました。
<在校中について>
―――― レコールバンタンでのコース名、卒業年次を教えてください。
2002年3月卒業です。2年制のパティシエ科で、1年次は恵比寿校、2年次は中目黒校で授業がありました。
―――― クラスは何名くらいでしたか。スケジュールも教えてください。
25から30人くらいでした。
―――― レコールバンタンを選ばれた理由を教えてください。
実技が充実している点に惹かれました。他のスクールは、「カリキュラムのフレームワーク」が、やや堅いと感じました。
文部省が定めた教科書通りに進めていく形式ではなく、現場に対応した臨機応変な校風が魅力的でした。
―――― 学びたい、身につけたい目標は何でしたか?
卒業後はフランスに行こうと思っていました。レコールバンタンに通いながら、週末はフランス語学校に通い、卒業と同時に現地で弟子入りしてそのままパティシエになろうと思っていました。
―――― 印象的だった講師、授業はありますか。
何人かいるのですが、名前を覚えているのは製菓の先生です。先生のお菓子はどれもとびきり美味しくて、当時も生徒に絶大の人気でした。全体的に先生・生徒という感覚ではなく、プロフェッショナルの卵として教えてもらったと感じます。
―――― レコールバンタンキャリアカレッジでの学びが「実践的だった」「今のビジネス」に活かされていると感じることは?
基礎が培われたことは大きかったです。小さい頃からレシピ本を見ながら、お菓子を作っていましたが、レコールバンタンでプロ講師に教わることで、料理本では吸収できない基盤を築けたと思います。
卒業後、3年半ほど料理の道、そして10年ほどビジネスの道に進みましたが、再び食の道に帰ってきた今、培った基盤は失われていないと感じます。
今思い返すと、当時習った講師の方たちはそれぞれ個性的で、一つのレシピをとっても、その人ごとの考えた方や見解が学べたのも良かったです。
結果、美味しければ一つのやり方に固執しなくてもいいという今の自分のスタイルの基盤になっています。
―――― 印象的だったイベント、販売実習などはありますか。
自分で創作したお菓子を展示し、投票してもらうという学祭イベントがありました。もう約20年前程になるのですが、放課後個別に講師の方に相談にのってもらいながら、自分のオリジナルのケーキを作り上げた嬉しさを今でも鮮明に覚えています。
―――― 在学中、アルバイトなどで飲食業界の経験をされていましたか?
知り合いにお願いして、パン屋さんの厨房を何ヶ月か手伝わせて頂きました。実習室とはまた違う緊張感や、リアルにお客さんの喜ぶ姿を見れたのが、頑張ろうと言うモチベーションにつながりました。
もし機会があれば在学中に関連するアルバイトを体験するのは、卒業後を考える上でもとても良い経験になると思います。
<卒業後について>
―――― 開業された経緯を教えてください。
卒業後の最初の何年間はワーホリ制度を利用して色々な国 (オーストラリア、スペイン等)に行き、現地のレストランで料理やケーキを作る仕事をしていました。
その後オランダのビジネス大学に進み、卒業後10年ほど外国でビジネスコンサルティングのお仕事をしていました。体調を崩したことをきっかけに、バリで食の仕事を再開し、コロナの要因も相まって2020年、日本の宮崎県でビーガンカフェを開業しました。
―――― 英語でのコミュニケーションは?
高校が英語科だったので、製菓学校卒業時はコミュニケーションが取れるくらいはできていました。
―――― オーストラリアやスペインのお仕事は具体的にどんなお仕事でしたか?
幸運な事に、一番最初の就職先のオーストラリアで凄く良いレストランに巡り合い、調理は未経験だったものの、包丁の握り方から調理の基礎まで全て実践で教えてもらいました。
現地では実力次第で採用が決まるのですが、たまたま初日がパイの制作(!)だったことから、製菓学校で習ったパイを難なく作ると、「いいね!明日から来れる?」という感じで即採用でした。
担当は料理でしたが、デザートセクションもやりつつ、メインを料理に転換しました。スペインではイタリアンレストランで1年ほど勤めました。ここでの採用も見られたのは職歴や言葉ではなく、何をどのくらいできるのかという‘実力’でした。
スペインで1年程過ごし、日本に半年戻ってきました。
―――― それからのキャリアは?
六本木のモダン地中海料理店で働いた後に、大手商社の子会社に転職し、中国支店で働いていました。ただ、学歴がなかったため思うような働き方ができず悔しい思いをしました。
そこで、大学に入り直そうと思い、オランダのエラスムス大学の国際経営学科に入学しました。卒業後は、中国・上海に拠点を持つコンサルティング会社に就職し、中国とシンガポールで10年ほど様々な世界的大企業とお仕事をしていました。
ところが仕事に打ち込み過ぎて病気になってしまったんです。手術を終えて、それまでの仕事を引き継いだら、病気を機に「食」を見直すように。知人にインドネシア・バリのヴィーガンシェフの仕事をを紹介され、バリに飛び、ヴィーガン食を追求しました。
面白いなと感じていましたが、日本が恋しくなり帰国。台湾からのお仕事の打診もきていましたが、新型コロナウィルスの流行で、そのオファーもキャンセルになり、宮崎で身動きが取れなくなりました。
出身は東京なのですが、サーフィンを始めた関係で宮崎に滞在していたんです。宮崎は居心地が良く、「身動きもとれないし、そろそろ自分で始めてもいいかな」と念願のヴィーガンカフェをオープンさせました。
―――― 開業された時期、場所、店名、コンセプトなど、こだわりを教えてください。
<お日にち>
2020年12月オープンです。
<店名・コンセプト>
個性が際立つ店名を考えていて、「正統派ではない」「印象に残る、個性がある」というニュアンスです。海外の人は、すぐにニュアンスを分かってくださるようですが、日本のお客さんからは「ビスケット屋さん?」と聞かれることもあります(笑)。
<場所>
閑静な住宅街になります。前の道が広くて、エネルギーが良い印象です。また、中心街でゴミゴミしていなくて、ご近所さんも温かいです。隣には、コーヒー豆を焙煎して販売している小さなコーヒ屋さんがあります。
<内装>
事務所だったので、まっさらなスケルトンにしました。知人の息子さんがとてもセンスの良い人だったので、何回も話し合いを重ねながら一緒に作り上げていったと言う感じです。
内装イメージは、Pinterestで集めて100枚くらい送り、共有していきました。ロゴやカフェのブランドデザインは、前職で一緒に働いていたマレーシア人のデザイナーさんに依頼しています。
まったく知らない土地での開業でしたが、これまでのキャリアの繋がりがあったからこそ、できていると感じます。
<客層>
メインは、30代、40代の女性が多いですが、若い方や男性もいらっしゃいます。
<営業日>
最初の1年半は毎日オープンしていましたが、半年前からペースを落としています。コロナが収束し始めて世界が動き始めたのと同時に、前職がらみのコンサルティングのお仕事も入り始め、現在カフェを含め幾つかのプロジェクトを同時進行で行なっています。2023年2月からは料理教室をスタートしました。
<商品の特徴>
バターや乳製品、肉など、動物製品を一切使わない「ヴィーガン食」です。料理はカラフルでしっかりと満足の出来る、旬の素材や大豆ミートなどを多用した週替わりランチプレートを提供しています。ケーキは聞かなかったらヴィーガンだと分からない(!)リッチで味わい深いケーキです。
―――― 特に売れ筋のメニューについて教えてください。
「ベイクドチーズタルト」、「チーズケーキ」、「キャロットケーキ」、「アップルパイ」、「季節フルーツのショートケーキ」、「ティラミスケーキ」や「季節のフルーツタルト」も好評です。
材料には特にこだわっていて、例えば価格は3倍ほどしますが、甘みは全ててんさい糖でつけています。このお砂糖はGI値が低く血糖値が急上昇しないので、「食べてもダルくならない」「もたれない」といったお声も多く、リピーターが多いです。
現在は一カ月に3日程の販売ですが、おかげさまで毎回大人気で完売しています。
―――― 「値付け」はどのように行われていますか。販売価格の付け方など、コツがありましたら教えてください。
ケーキの価格は630円(税込)です。宮崎は、日本全国で見たときに比較的所得が低い県で、物価が全体的に低いです。
とはいえ、素材にもこだわり、差別化も出来ているので、ブランディングの目線からも特別感のあるプレミアム価格帯にしています。
―――― 開業されて経験されたご苦労についてお聞かせください。
人を雇い育てることです。経験が全くない人たちに1から教える場合、ある程度育つまで時間がかかります。ただ、自分で何か始めたり海外に出ていくスタッフも多く、習得しても1年半ほど辞めてしまう人も。
現状料理もスイーツもスタッフの助けをかりて自分で全て作っているので、どこまで自分でやるのか、どこまで任せられるのかの塩梅は難しいのですが、今後はある程度任せていければなと思っています。
バンタンの卒業生でヴィーガンケーキに興味がある!と言う人は、是非一度ご連絡ください〜。開業1年半は、当初思っていたより10倍は働きました(笑)。
これから開業する人へアドバイスがあるとすれば、ベストはパートナーと開業することです。例えば自分が調理で、会計や接客が好きな人と組めるといい。
自分の他に、同じ目線で熱量の高い人がいつも側にいてもらえることは、精神面でも体力面でもかなりの相乗効果が得られると思います。
―――― 新型コロナウィルスの流行について、ご自身のビジネスへの影響は感じられますか?
開業当初から3カ月はものすごく混んでいました。しかし開業してすぐに緊急事態宣言が出て、2回ほど休業を経験しました。
ここまで長く新型コロナウィルスが続くとは思っていませんでしたし、開業当時のビジョンとしては、ヴィーガンの二ーズが高いインバウンドをつかんでいこうとおもっていましたが予想外でした。現在は、リピーターに助けられています。
―――― 飲食ビジネスの面白さ、喜びはどのような時に感じられますか。
素敵な出会いに恵まれること。「これまで誕生日は羊羹だった」という乳製品アレルギーの子が、初めてケーキを食べられたり、お店に入ってくるときは暗い印象だった人が、食べ終わったときにはすっかり笑顔になって帰ったりするシーンに出合えると、開けていて良かったなーと思います。
―――― 大変さはどのようなところでしょうか。
スタッフを育てること。メニュー開発は得意ですし、苦ではありませんが、全部一人でやるのは大変です。今は出来る範囲で、自分のペースで運営していこうと思っています。
―――― 飲食業界で活躍するうえで必要なスキルは?
マーケティングです。どのようにお店を知ってもらい、何が訴求ポイントで、どんなターゲットなのか?その人たちにどういったチャンネルでどんな表現でアピールするのか、最初に考えても良いのかもしれません。
これから私が開業をするなら、お店を空ける半年前ほどからFacebookやInstagramで発信を始め、「お店はいつ開くんですか?」という盛り上がりをつくってからスタートすると思います。
―――― 今後の目標はありますか。
いかにビジネスを国際化するか。グローバルに仕事をしたいです。あとは、オンラインでケーキの販売も考えています。これまでにイベント時に3~4回行いましたが、定期的に実施してみるのもいいと思いました。
―――― レコールバンタン/レコールバンタンキャリアカレッジへの入学を検討されている方に、レコールバンタンはオススメしていただけますか。はいの場合理由を教えてください。
はい、おすすめです。講師の方々のレベルは高く、施設も最新で整っていました。 すぐに就職したいと言う方は1年制に入学して先を見据えて動かれたら、効率が良いのではと思います。
―――― レコールバンタン/レコールバンタンキャリアカレッジへの入学を検討されている方に、ぜひ前向きなメッセージをお願いします!
レコールバンタンは、魅力的な立地にあることが多く、最新の設備が揃っていて、新たな視点、知識、仲間が得られます。ホテルで働かれても通じるような調理設備が揃っているので、貴重な経験になると思います。
振り返ってみると、レコールバンタンで学んでいたときは、同じような意思を持った人がたくさんいて、すごく充実していました。登下校は、常に最新のケーキの話をし、流行っているケーキ屋さんの食べ歩き等、胸もお腹もつねにいっぱいでした(笑)。
未だに連絡をとっていて、かけがえのない友達であり同志でもあります。
まずは、自分が学校に入って何を得たいのかを明確にするために、しっかり自分に向き合ってみてくだい。もし入学することで自分の得たいものが得られそうだったら、即行動することをお勧めします!
<SHOP INFO>
@saltybiscuits.deli (Instagram)
ご住所:宮崎県宮崎市天満2-1-2 三門ビル1F
営業日:月3日前後OPEN、料理教室3日程 公式SNSにて告知