レコールバンタンキャリアカレッジは、製菓・カフェ・調理と、「食」の分野に特化した人材を育成する専門校です。
バンタングループの実績として、56年間で約19万人の卒業生を輩出してきました。
最前線で活躍されている卒業生に開業のヒントをもらうべく、兵庫県多可郡にて、「パン工房 conana.」を営むオーナーブーランジェリー吉川由奈(よしな)さんに、お話をうかがいました。
<在校中について>
―――― レコールバンタンキャリアカレッジでのコース名、卒業年次を教えてください。
平成31年3月卒業に、大阪校ベーカリーコースを卒業しました。
―――― クラスは何名くらいでしたか。スケジュールも教えてください。
27名でした。毎週土曜日に1回授業がありました。
―――― レコールバンタンキャリアカレッジを選ばれた理由を教えてください。
全国にチェーン展開するパン屋さんで、製造の仕事をしていました。ただ、基礎を習得せずに入社し、所属する会社のレシピしか分からず現場で働いていると感じていました。
そこで、個人店のパンを食べ歩き、パン教室にも通ったりしていましたが、疑問や分からないことが解消できた感じがありませんでした。
レコールバンタンキャリアカレッジは、プロフェッショナルで現場に立っている人が教えてくださるのが魅力でした。
―――― 前職のチェーンのベーカリーに就職された理由は?
結婚して、子育て中にホームベーカリーを使ったパン作りを楽しんでいました。パンを作るのが楽しすぎて、最初はパートで働かせていただいていました。
徐々に社員さんがされている仕込みに興味を持ち、「任せてほしい」と頼み、仕込みをできるようになりました。
13年勤めて、ひと通りの製造はできるようになりましたが、もっと知りたいという気持ちに。子育ても落ち着いてきたので、自分自身で販売したいなと思ったことが独立のキッカケです。
―――― ご入学されたのは、おいくつのときですか?
47歳のときです。
―――― 数ある専門校の中で、レコールバンタンキャリアカレッジを選ばれた理由は?
もともと、社会人コースがある専門学校を、たくさん調べていたわけではありません。「パン教室」で検索をしていると、ネットのバナーでレコールバンタンキャリアカレッジさんが出てきて、知りました。
―――― 学びたい、身につけたい目標は何でしたか?
基礎的な技術、自分でレシピを組み立てるようになりたかったです。開業は、入学前から視野に入れていました。
入学後は担任の米澤講師には、開業について何度も相談しています。授業が始まる前にも、質問していました。
入学前はどなたに聞けばいいのかが分かりませんでしたが、質問できることも学ぶ目的のひとつでした。
―――― 印象的だった講師、授業はありますか
担任である米澤講師が、見学の際に教えてくださいました。とっても優しくて、明るい授業でした。何を聞いても即答していただけることにも、感心しました。
体験コースに参加し、「ここやな!」と思って決めました。
―――― レコールバンタンキャリアカレッジでの学びが「実践的だった」「今のビジネス」に活かされていると感じることは?
授業で学んだレシピの組み立てや考え方は、何度も思い出します。在学中は、あまりピンときていなかったこととも、独立後に思い出し理解できることがあります。
例えば、開業当初は、学んだレシピでパンをつくっていました。とはいえ、忙しかったので、どういう意味かも分からず、その通りにワーッと作っていましたが、材料の1パーセントの違いが、例えば生地を包みやすい設計になっているんだな、といったことが分かり、数年後に歯車が合う感覚があります。座学ではなく、調理の実践がメインだったからこそ体感としても覚えていられたのかなと感じます。
―――― 印象的だったイベント、販売実習などはありますか。
販売実習がありました。パンを企画し、たくさん作って売ることを経験したのは、楽しかったです。既に仕事で「たくさん作って販売する」経験はしていたので、クラスメイトでワイワイ作れた経験や、メンバーそれぞれのアイデアが知れたことが良かったです。
<卒業後について>
―――― 開業された経緯を教えてください。
卒業後、すぐに形にしたかったんですが、資金は潤沢には用意できていませんでした。そこで、在学中から「限られた予算でも実現できるのかどうか?」を講師に相談していました。
すると、こちらの予算で対応してくださる人をご紹介してくださいました。
3月に卒業して熱量の高いまますぐにスタートしたかったんですが、土地の関係で、予定よりもやや遅くなりました。
場所は家の裏と決めていましたが、蓋を開けてみると土地が斜めになっているということが発覚し、自宅から少し離れた場所に土地をお借りすることに。平成31年6月頃に、開業場所が決まりました。
―――― 開業された時期、場所、店名、コンセプトなど、こだわりを教えてください。
<お日にち>
令和元年11月オープンです。
<店名・コンセプト>
ブーランジェリーといった表現もありますが、パン工房がいいなと思いました。「パン工房 conana.」のコナナは、小学生の時から粉で料理することが好きだったこと。そして、ヨシナという名前と合わせてコナナとしました。
<営業日>
開業当初は、趣味の延長のような形で、しんどくないペースで始めようと思っていました。パートも続けていましたが、見込みよりも盛況でパートとは両立できないと、令和元年12月に前職を辞め、「パン工房 conana.」に専念しました。
金曜、土曜日で営業すると、2日分仕込みができるので効率がいいと思いましたが、想定していた以上にお客さまが来てくださったので2日連続製造でも難しくなりました。
体力温存のため、水曜、土曜日の営業に変更し、現在は水曜・木曜・土曜日の営業です。
<仕入れ先>
開業当初は、製菓材料は、cottaさんや富澤商店さんから通販で購入して、1カ月は乗り切りました。あるときに、機械を購入した会社の営業さんがご挨拶に来てくださいました。そこでお話をすると、仕入れ先を紹介してくださったんです。
問屋さんには、相手にしてもらえないと思っていましたが、大丈夫だと分かったんです。調べるのに長けた人でしたら違うかもしれませんが、こうしたご縁も、レコールバンタンキャリアカレッジに通っていなかったら、あり得なかっただろうと思います。
<場所>
もともとお店をされていた場所でしたが、閉業されて更地の状態でした。自宅からも近いです。
<内装>
講師のご紹介でデザイナーさんを紹介いただきました。予算が限られていても実装できるように、図面から内装までを考えてくださいました。機械も、天板一枚出しのものが2つ付いているオーブンで、スタートしています。
<客層>
お子さんから、おばあちゃんまで気軽に来られるパン屋さんになりたいと思っていました。近所にあるような、昔ながらのパン屋さんが理想です。
開業してみて、車を利用して来店される人が多いので、小さいお子さんだけで来られるケースは少ないですが、イメージ通り幅広いお客さまがいらっしゃっています。
―――― 特に売れ筋のメニューについて教えてください。
オープン当初から人気があったのは、ソフトフランス生地の「あんバター」(税込240年)や、「ミルクフランス」(税込270円)です。作っても作っても売り切れました。
4年目となり、売れ行きとしては落ち着き、すべて平均的に売れています。常連のお客さまが多いので、毎週ごとに「週替わりパン」をつくり、限定商品のような形で提供しています。
―――― 「値付け」はどのように行われていますか?販売価格について、コツがありましたら教えてください。
原価3割を基本としています。ただ、高価な食材を使うと、どうしても原価が高くなってしまいます。
そこで、原価が少し高くなっても買いやすい価格で設定しているものと、一方で原価3割が掛からないものもあり、お店全体で考えたときに、平均して原価3割になるように調整しています。
目を引く商品と、シンプルな商品とで全体のバランスを考えることも大切です。
―――― パンのメニューは何種類ありますか?
常時40種類は並んでいます。大きく3つの方向性で考えています。まずは、年配の人が好んで食べるようなもの。ホッとするような見た目、定番です。
次に、洗練されていて「こんなのもあるんだ」と、ワクワクしていただけるようなパン。若い人が、思わず手に取りたくなるようなパンです。
最後は、お子さん向けに食べやすいパン。バランス良く作っているので、選ぶのが楽しいという感覚も味わってほしいです。添加物は使わず、どのパンも美味しくできるよう、日々、試行錯誤しています。
―――― 開業されて経験されたご苦労についてお聞かせください。
オープン当初は、予想した製造数と、売り上げとが合っていないことがありました。お店の棚がすっからかんになってしまったときに、焼くまでに時間がかかります。なので、いったん閉めて追加焼きをして間に合わせていました。
一体どれくらいお客さんが来て下さるのかが読めなくて、一カ月くらいは苦労しました。
厨房の広さにもよりますが、一人で運営しているので作るのにも限界があります。「もうないの?」と言われると、申し訳ない気持ちにもなりました。
―――― 新型コロナウィルスの流行について、ご自身のビジネスへの影響は感じられますか?
新型コロナウィルスが出始めたときとオープン時期とが、重なっています。
開店当初、小さい店内に、5人ほどお客さまが入られると、私自身もパンの補充に入るのが難しいですし、お客さまも身動きがとれませんでした。
そんなときに、入店する人数の制限が生まれたので、決められるようになりました。結果的に、お客さまはゆっくり見られて、運営はスムーズになりました。
振り返ってみると、コロナ禍は、テイクアウトの需要が増えていたのだな、という印象があります。緊急事態宣言が明けると、遠くにお出かけする人が増えるなど、人の流れが変わる印象があります。
―――― 飲食ビジネスの面白さ、喜びはどのような時に感じられますか。
自分がいいなと思ったものを作れることと、お客さまとお話ができること。お客さまに直接要望を言ってもらえたら、応えることもできます。
勤めているときは、「自分が考えた」パンではないので、そこが違うかもしれません。
―――― 日々の営業の大変さは、どのようなところでしょうか。
睡眠時間と体力のバランスですね。全部、自分で決めることになります。頑張り過ぎると、体調が悪くなってしまいます。一人で営業するということは、販売に立つまでに焼き切ってしまわないといけません。
平日と土曜のスケジュールは違いますが、平日は4時30分起き、土曜は2時30分起きです。体力維持のためには寝るしかないと思っていて、20時30分から4時30分まで、約8時間は寝るようにしています。
―――― 飲食業界で活躍するうえで必要なスキルは?
お客さまがおっしゃることに関心を持つこと。世の中の動向や流行も耳を傾けて、気にしたほうがいいかなと思います。
―――― SNS 発信で、気を付けていることは?
文章や写真で、オープン日などを分かりやすく伝えるように意識しています。
―――― 今後の目標は?
パンのそのものの美味しさをもっと追求し、頑張っていきたいです。開業した後も、他店のパンを買ったり、本も読んだりして勉強を続けています。
―――― レコールバンタンキャリアカレッジへの入学を検討されている方に、レコールバンタンキャリアカレッジはオススメしていただけますか。はいの場合、理由を教えてください。
オススメできます。まずは、基礎・基本を勉強でき、授業ではあえて失敗することもできます。失敗したら、なぜ上手くいかなかったのか考えられる機会も得られます。疑問に思ったらプロ講師にいつでも質問できますし、現場のお話もうかがえます。
もうひとつは、夢を持った友人と過ごせる時間が、とてもかけがえのないものだと思います。卒業して5年目になりますが、未だに付き合っている友人も多く、総じて前向きな人が多いですね。
開業された人もいらっしゃいます。例えば、佐藤つとむさんは島根県でベーカリー「GASENDO」を開業されています。また、馬場まみこさんは、滋賀県でお菓子工房「Lapin Angelique」(ラパン アンジェリーク)を開業されています。
―――― レコールバンタンキャリアカレッジへの入学を検討されている方に、ぜひ前向きなメッセージをお願いします!
「やりたい」という強い気持ちが、何よりのエネルギーになると思います。大変なことはあっても、それ以上のやり甲斐や喜びがあります。ただし、行動しないとそれは見えません。行動あるのみだと思います。
<SHOP INFO>
パン工房 conana.
兵庫県多可郡多可町加美区寺内140ー3
水曜日、木曜日、土曜日 10:00〜18:00(売切次第終了)木曜のみ16:00まで
駐車場3台完備