<大阪校・卒業生インタビュー>proper ingredients オーナーパティシエ 神頭侑子さん

レコールバンタンキャリアカレッジは、製菓・カフェ・調理と、「食」の分野に特化した人材を育成する専門校です。バンタングループの実績として、56年間で、約19万人の卒業生を輩出してきました。
最前線で活躍されている卒業生に開業のヒントをもらうべく、兵庫県・姫路市にて、「proper ingredients」を営む、オーナーパティシエ 神頭侑子さんにお話をうかがいました。
<在校中について>
―――― レコールバンタンキャリアカレッジでのコース名、卒業年次を教えてください。
15年、16年前に大阪校のカフェオーナーコース(*現在の飲食店開業コース)を卒業しました。入学したのは20歳のときです。
―――― クラスは何名くらいでしたか。スケジュールも教えてください。
前期は2~30人クラスメイトがいて、後期は6人くらいでした。週1回、日曜だけ授業がありました。1年間、働きながら学べるのが良いと思いました。
―――― レコールバンタンキャリアカレッジを選ばれた理由を教えてください。
いちばんは、働きながら受講できるスクールを探していたから。高校卒業後、製菓学校に進みたかったんですが難しく。
当時の自分は、食の中でもどのジャンルに進みたいかは決まっていなかったので、デザインやコーヒーや調理も総合的に学べる点と、現役で経営しているプロフェッショナルが講師だと知り、魅力を感じました。
兵庫県・たつの市から通っていましたが、クラスメイトの中には、新幹線で岡山県から来ている人もいました。地元のスクールも考えたのですが、製菓やコーヒー、デザインなど色々なジャンルを学べるというカリキュラムが、他にはありませんでした。
―――― 平日はどのようなお仕事をされていましたか?
お花屋さんで働いていましたが、レコールバンタンキャリアカレッジに通っている最中にパティスリー兼カフェに転職しました。最初は接客でしたが、徐々に製造も任せられ、焼菓子、スイーツ作りにも携わるようになりました。
―――― 学びたい、身につけたい目標は何でしたか?
特定の技術というよりも、さまざまなジャンルを広く浅く知りたいと思っていました。
―――― 印象的だった講師、授業はありますか?
講師のお名前は覚えていないのですが、「空間デザイン」、「インテリアデザイン」を教えていただけたのが、めちゃくちゃ面白かったです。講師のセンスが良く、食にまつわる空間をつくるのは面白いと感じました。
他にも、「Mother Moon Café」を立ち上げた講師や、フレンチ出身の講師、エスプレッソを教えてくださった石田講師など、良い講師が多かったです。
―――― レコールバンタンキャリアカレッジでの学びが「実践的だった」「今のビジネス」に活かされていると感じることは?
堀田講師は優しくて、食材を扱うのがとても丁寧でした。「愛情を込めて接するというのはこういうことなんだ」と分かりました。また、クラスメイトは今でも仲が良く、刺激し合える存在です。
―――― 販売実習などのイベントはありましたか?
ありました。自分たちでメニューを考えて、お客さんを呼べて面白かったです。今だったらもっと上手くできるのに、と思います。クラスメイトは、20代後半の人も多く、「こうやって物事を決めるんだ」と、勉強になることもありました。
年齢がバラバラというのも面白かったですし学びになりましたね。
<卒業後について>
―――― 開業までの経緯を教えてください。
姫路のカフェで15年間、働いていました。センスが良いお店で、学ぶことが多かったです。製菓だけでなく、スタッフを束ねる経験もしました。
働いていく中で、もう少し、自分のやりたい色を出したいなと思うようになりました。
そんなとき、コロナ禍となり、働いていたカフェが18時に閉まるように。そこで、「夜の時間帯を貸して欲しい」と相談しました。
―――― 夜の時間帯で「proper ingredients」をスタートさせたのでしょうか?
そうです。2020年3月から金曜と土曜に、夜のアイスクリーム屋さんを開店しました。通常営業と並行して行っていたので、忙しかったですね。まる1年ほど続けました。
―――― 賃料はどのようにしましたか?
売り上げの1割を、入れました。また夜の営業でも、通常カフェで販売している焼き菓子を販売し、その売り上げはお店に入れる形です。
―――― メニューは、どのように考えましたか。
お客さんが、ふらっと来ても食べられる手に取りやすいものと、マニアなメニューまでを揃え、満足させられるようなメニュー構成にしました。
価格帯のいちばん下は、器にアイスクリームを盛った800円、ヴァニラが1200円、パフェは2800円から3500円です。(全税込)また、お水の代わりに白湯を提供しました。
―――― 開業してみての発見はありましたか?
自分が提供したものへの、お客さまのリアクションが見られるので「なるほどなー」と思いました。また、宣伝の仕方が大事なんやな、と感じました。
それまでは、美味しいものを出していれば、勝手に口コミでお客さんは来てくれると考えていましたが、SNSできちんとした文章や写真で発信することが大事だと感じました。
この業態を続けていくことも想定していましたが、誰かに任せるのはできひんなと思いました。アイスを作っている店主が、お店に立つことが期待されているのかなと感じました。
―――― ご自身で、実店舗を構えるようになったキッカケは?
少しずつ名前が知れて、イベントに出店したり、声をかけてもらったりする機会が増えていきました。
あるとき、カフェのお菓子を卸していた雑貨店さんが、「店を畳むことになったので、この場所でアイスクリーム屋さん、やらへん?」と聞いてくださったんです。もともと、そのお店の雰囲気が好きで通っていたので、決めました。
―――― 迷いはありませんでしたか?
一瞬迷いもありましたけれど、これはGOサインだと捉えました。2021年5月頃に声をかけていただき、2022年4月にオープンしました。
―――― 開業された時期、場所、店名、コンセプトなど、こだわりを教えてください。
<お日にち>
2021年5月頃に声をかけていただき、2022年4月にオープンしました。
<コンセプト>
もともと、マクロビの食生活をしていて、精製した砂糖を避ける日常を送っていました。でも、マクロビの考えに即したスイーツは売っていなくて、あってもいいのでは?と思ったのがキッカケです。
播磨や灘は日本酒が有名ですが、甘酒も食文化に浸透していて身近な存在です。近所に老舗の甘酒屋さんがあり、もともとは自分のためにつくっていたアイスクリームです。
<店名・コンセプト>
「プロパーイングリーディエンツ」は、日本語訳すると、適切な材料という意味です。精製糖を使わず、地場の甘酒とオーガニックの材料で、アイスクリームや焼き菓子を手作りしています。
<内装>
雑貨屋さんのときの壁など、できるだけ元の状態を活かしています。白で統一された空間で内装は触らず、冷凍庫やガスを引き、給湯器を入れました。
開業資金の半分は、アイスクリームをつくる機械と什器にかけています。間借り営業をしていたときは、アイスクリーム機はプロとアマの中間くらいのグレードでしたが、ちゃんと作りたいという想いから、機械にはこだわっています。
<場所>
家からは、車で15分ほどの距離。生活圏内にあります。
<客層>
地元・姫路の人が多いです。最近では、遠方からも来てくださるようになりました。メインは女性ですが、男性もいます。年齢層は30代から60代まで。上質なものを求める人が多い印象です。
―――― 特に売れ筋のメニューについて教えてください。
時期にもよりますが、クッキーのように日持ちする焼菓子は、8種類、タルトやマフィンが3、4種類、アイスクリームは、6種類を揃えています。冬はケーキの売り上げが高いです。
アイスクリームで人気なのは、ヴァニラ、ラムレーズン、イチゴです。メニューは、毎週のように変わります。原材料に、農家さんから仕入れた旬の果物を使っています。
メニューを考えるときは、お客さんの思考やムードを反映して考えています。
―――― 開業されて経験されたご苦労についてお聞かせください。
売れ残りと、スタッフとのコミュニケーションです。お客さんがたくさん来る人もあれば、全然来ない日もあります。ただ、私としては、その日に焼いたものは、その日のうちに売り切りたいと思っています。美味しさが全然違うので。
なので、天気を見ながら、焼き足していくスタイルです。2回にも3回にも分けてつくるのは、正直なところ効率は悪いです。ただし、ロスは少なくなります。
もう一つは、スタッフとのコミュニケーション。あるスタッフに「ビジョンが見えない」と言われました。個人的には、やりながら決めるのが好きで、それを説明するんですが、「どうサポートしていいか分からない」と言われてしまい、感覚的な相違が生まれました。
もうちょっとこうして欲しいといったニュアンスの部分を伝えるのは難しいです。残念ながら、そのスタッフは辞めてしまいましたが、現在はお手伝いにきてくれる人が一名います。
―――― 「値付け」はどのように行われていますか。販売価格の付け方など、コツがありましたら教えてください。
自分が買いたい金額であること。そして、安売りはせえへんと思っています。一応、原価は計算しますけれど、「その金額やったら欲しいと思われる」金額を意識しています。
―――― 新型コロナウィルスの流行について、ご自身のビジネスへの影響は感じられますか?
あったのかもしれないけれど……現在は、特にないです。一度「暇やなー」と感じた時は、第何波がきていた、ということがありました。
―――― 飲食ビジネスの面白さ、喜びはどのような時に感じられますか。
つくっているときが、いちばん楽しいです。上手にできているときは、めちゃめちゃ「この美味しさを、お客さんに食べてもらいたい!」と思います。
―――― 日々の営業の大変さはどのようなところでしょうか。
長時間労働はまぁまぁ大変ですが、それよりも売れ残ったらどうしようという心配のほうが大きいです。特に焼菓子は、焼いた当日がいちばん美味しいですし、新鮮なうちに渡したいので残ってしまったらどうしようと考えます。アイデアに困ったことは、全くありません。
―――― SNSでは旅の様子なども発信されていらっしゃいますね。
お客さんが見たいから、環境のことや量り売りのことなど、これをアップしたら「お客さん、嬉しいかな?」という視点で考えています。個人的には、仕事は遊び、遊びが仕事という感覚です。
―――― 飲食業界で活躍するうえで、必要なスキルは?
自分がやりたいと思ったことと、「この人から買いたい」と思ってもらえることの両立。
私は青空マーケットが大好きなのですが、売っているモノではなく、まず「人」を見ます。例えば、健康食品を販売しているのに肌が不健康そうだったら繋がりませんし、説得力がありません。
本質的な部分、「生き方」が出ると思うので、販売しているものへの説得力を大事にしたほうがいいと思います。
――― 今後の目標はありますか。
もう少し品数を減らして、ちゃんと作りたいです。喜んでもらいたいから、いろんな種類をつくっていますが、仮に、メニューが1種類だとしても、「あれがめっちゃ美味しい!」って来てもらえるようにしたいです。
品数を減らして、お店が回るのが理想です。
あとは、クラスメイトの藤井さんが営む、滋賀県の「カフェTAK」さんからコーヒーを買って、コラボレーションしたアイスクリームをつくる予定です。
―――― レコールバンタンキャリアカレッジへの入学を検討されている方に、レコールバンタンキャリアカレッジはオススメしていただけますか。はいの場合、理由を教えてください。
「はい」で、理由は二つあります。
まず、現場で働いているプロフェッショナルが講師という点が大きいです。お客さんと、実際に関わっている人なので、質問のしがいがあります。ただし、受け身の人には向かないかもしれません。
そもそも質問が浮かばないだろうし、学びたいと思っているからこそ細部に対しても疑問が湧くだろうと思います。
もう一つは、立地の良さ。大阪の真ん中、「御堂筋」にあるので、色々な飲食店に行けます。
―――― レコールバンタンキャリアカレッジへの入学を検討されている方に、ぜひ前向きなメッセージをお願いします!
入学したいと思うなら、やってみたらいいです。迷う理由はいっぱいあるけれど、やってみて波に乗れば、どうにかなります。
<SHOP INFO>
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