<卒業生インタビュー>LUSH-COFFEE オーナーバリスタ 吉田光佑さん
「ウィズコロナ」の時代。
外食産業を担う卒業生たちは、今どのような心持ちでビジネスをしているのでしょうか?
最前線で活躍されている卒業生にヒントをもらうべく、東京・北千住にて 「LUSH-COFFEE」を経営するオーナーバリスタ吉田光佑さんにインタビューを行いました。
<在校中について>
―――― レコールバンタンキャリアカレッジでのコース名、卒業年次を教えてください。
2019年にコーヒーロースト&ブリューコースで学んだ後、2020年にJBAバリスタライセンスコースに入学しました。
――― ご入学時はおいくつでしたか?
大学1年生でした。19歳でしたが、当時から開業を目指していました。
―――― クラスは何名くらいでしたか。スケジュールも教えてください。
コーヒーロースト&ブリューコースは10名前後、週1回午後に授業がありました。
「PASSAGE COFFEE」佐々木講師にご指導いただきました。
JBAバリスタライセンスコースは15~6名、同じく週1回朝から授業があり、「ESPRESSO&ENOTECA BAR Primoordine」篠崎講師に教えていただきました。
知識だけでなく、抽出などの実践的な技術を習得できたと思います。
―――― レコールバンタンキャリアカレッジを選ばれた理由を教えてください
その道のプロフェッショナルから専門性のある話を聞き、技術を習得したいと思って、選ばせていただきました。
体験入学や事前の面談でも、講師の方々に親身に相談にのっていただき、人柄に惹かれました。
―――― 事前に相談に乗ってくれた講師というのは……?
篠崎講師に相談していました。入学前に、全日制(専門部)に進むのか、社会人向けのレコールバンタンキャリアカレッジに進めばいいのか、分からなかったんです。
カリキュラムの違いなどを説明してくださり、そのうえで「自分が本当にやりたいことをやるべきだよ」とおっしゃってくださいました。
―――― 吉田さんは、大学とレコールバンタンキャリアカレッジをWスクールされていたんですね。
はい。付属高校だったので、大学では国際経済学科という学科に進みました。
―――― 10代で開業を志すといのが、比較的早いスタートだな、という印象があります。開業を計画していた理由は?
父がコーヒーを飲むのが好きで、小学4年生から趣味でコーヒーを淹れていました。芳醇な香りが好きで惹かれていきました。
また、2018年、高校3年のときに、学校のプロジェクトで東ティモールに1週間ほど行く機会がありました。
東ティモールは、インドネシアによる武力支配下から独立する際に、土地や家屋が破壊されたこともあったのですが、コーヒーは特産物として唯一残っていた国です。
面積は小さな国ですが、コーヒー作りに誇りをもっていて、品質も良いことが分かりました。
その後、2019年の大学一年時にインターンで一ヶ月ほど農村部に入ってからは「東ティモールのコーヒーを伝える」ことに使命感を感じ始めました。
―――― なるほど。レコールバンタンキャリアカレッジで学びたい、身につけたい目標は何でしたか?
当初の入学目的は、技術面でした。ですが、結果的には、業界に対する考え方、視点もより高いものになったと思います。
趣味でコーヒーに触れてきたので、なんとなく知ったような気になっていましたが、今思えば成長過程でした。
篠崎講師と佐々木講師は、それぞれ違う独自の考えをお持ちでした。それぞれの異なる考えを吸収し、コーヒー業界を見つめ直すことで、主観に寄り過ぎない考えを持つことができたと感じています。
“コーヒーの道の者”として、精神的に成長できたことが非常に良かったです。
―――― 具体的にはどういった面で成長を感じますか?
前述と少し内容が重複しますが、コーヒー業界に関わるものとしての心構えを洗練することができたと感じています。
そのため、現在Qグレーダー(Licensed Q Arabica Grader)と呼ばれる、コーヒーの品質評価に携わる国際資格を取得しましたが、そこでも、正しく品評するため、できるだけ主観を排除し、プロとして、客観的な視野を持ち続けることを意識していました。
例えば、他のお店のコーヒーを飲んだ時に、自分の「コーヒー感」を押し付けるのは、そのお店の信条に対してケチをつけることになりますし、それはエゴに過ぎません。
評価するのであれば、客観的な立場から意見をすべきだなと思っています。
―――― レコールバンタンキャリアカレッジでの学びが「実践的だった」「今のビジネス」に活かされていると感じることは?
価値観、視野が広がったこと。そしてそれが、自分のお店作りやコンセプトにも活かされていると感じます。
現役のプロフェッショナルにお話をうかがったことで、業界に対しての視野が広がりました。
―――― 印象的だったイベントまたは実習はありますか。
私のコースは、販売実習はありませんでした。ですが、コーヒーロースト&ブリューコースの授業で、全員が同じ豆を使って焙煎を行い、メンバーに向けてプレゼンをする機会がありました。この実習は、各々の持つコーヒー感によって焙煎のアプローチも異なり、自分以外の人の価値観を感じられるもので、印象に残っています。
―――― 在学中、アルバイトなどで飲食業界の経験をされていましたか?
佐々木講師がキッカケで、「Paul Bassett 渋谷ヒカリエ ShinQs 東横のれん街店」で1年ほどアルバイトしました。
コーヒー業界の登竜門のようなお店で、プロの方達とともに働くことができて良かったです。
<卒業後について>
―――― 開業日を教えてください。
2021年11月6日オープンです。
―――― なぜ、東ティモール専門のコーヒーショップにされたのですか。
私が東ティモールへ渡航した際は、インターンシップでコーヒーの品質管理をしていました。
そこで、共同生産者に近い立場で働いたことで、彼らの誇りであるコーヒーを「日本に暮らす人に、東ティモールのコーヒーを伝える」ことを託され、それを使命だと感じたからです。
―――― 開業された時期、場所、店名、コンセプトなど、こだわりを教えてください。
<店名>
ラッシュは、rushやrashなど様々なスペルがありますが、LUSHには、豊かな、芳醇なという意味があります。
そして、LUSHとCOFFEEがハイフンで繋がっていることで、「コーヒーが生産者と消費者を繋ぎ、両者の日々の生活を豊かにできる可能性を秘めている」、という意味合いを表現しているんです。
また、全ての豆を東ティモール産にすることで、東ティモールの生産者にサステナブルな形で利益を還元することを理念としています。
<デザイン>
左側の手が生産者、右側のコーヒーカップは消費者を表しています。この2点をコーヒーの実がアーチ状に繋いでおり、「生産者と消費者が繋がっている。」というイメージとなっています。中央の犬は、私の昔の飼い犬で、私たちスタッフの象徴といいますか、生産者と消費者の間に立ち、彼らを繋ぐ、架け橋のような存在であることを表しています。
犬が、生産者側の方を向いているのにも理由があって、僕がどちらかというと、生産者寄りの意思を持っているよという価値感を表現しています。
クラウドソーシング仕事依頼サイトでデザイナーさんを探し、草案を渡してブラッシュアップしていただきました。
<外観>
内装、外装はDIYが多いです。壁やテーブルは手作りです。素人でできない部分は、内装屋さんの知り合いにご協力いただきました。
<場所>
実家のテナントに入っています。なので、一般的な開業に比べると物件探しや、開業資金のハードルは低かったと思います。
<客層>
ご高齢のお客さまが多い印象ですが、最近は高層マンションやおしゃれなお店も増え20代、30代の人も増えてきています。
北千住は元々、純喫茶文化が根付いていて、ブルーマウンテンやキリマンジャロなど、昔から有名なブランドのコーヒーを好まれる方が多い印象です。
自分で事業計画書を作っていたので、ある程度の顧客層は把握していました。
―――― 特にオススメのメニューについて教えてください。
ハンドドリップで淹れる、シングルオリジンコーヒー(ホット/アイス)(500円~/税込)です。
他では見ることの少ないティモールの「集落」ごとに括っていて、東ティモールのコーヒーのバラエティーの豊かさや品質の良さを楽しんでいただくことができます。
―――― 「値付け」はどのように行われていますか。販売価格の付け方など、コツがありましたら教えてください。
私は、品質をベースに値段をつけています。というのも、LUSH-COFFEEのコンセプトに、東ティモールコーヒーの品質の良さを伝えるということがあるからです。
価格付けには、様々な判断軸があると思いますが、基準が決まれば難しいことではありません。
例えば、競合と比較する方法、地域の相場やコストを重視するアプローチもあります。自店のコンセプトや軸さえ決まっていれば、スムーズですね。
―――― 開業され、経験されたご苦労についてお聞かせください。
開業当初は、私自身が良いと思っているコーヒーと、お客さまが美味しいと感じるコーヒーに相違があり、このギャップが障壁と感じました。
純喫茶文化が根付いているエリアなので、「苦さがある」「酸味が少ない」コーヒーが人気だったんです。私が、スペシャリティコーヒーの品質の良さを活かし、個性を伝えるための焙煎度で出したでも、味として受け入れられないとなると、「生産者の背景を伝え、彼らの所得への還元を永続的に続ける」コンセプトは元も子もなくなってしまいます。
そこで、改めて客観的になり、お客さまの嗜好と私のコーヒー観をすり合わせていきました。
今も、そういった嗜好のギャップはゼロになった訳ではありませんが、お客さまも段々と受け入れてくださり、私たちのコンセプトとも馴染んできているなと感じます。
今まで深煎りのコーヒーだけを飲まれていた常連さんが、浅煎りを頼んでくださり、東ティモールコーヒーのシトラス感のある酸味を楽しんでくださるところを見て、嬉しくなりました。
―――― 新型コロナウィルスの流行について、ご自身のビジネスへの影響は感じられますか?
お店の背景や、東ティモールのことを伝えるため、お客さまと積極的にコミュニケーションを取ることを大事にしていたのですが、感染症予防の観点からそれが思うようにできないことがありました。
―――― 飲食ビジネスの面白さ、喜びについて教えてください。
消費者の人々に、情報を直接提供できて、感想までうかがえる体験は非常に面白いです。
東ティモールの生産者さんたちは「自分たちのコーヒーが好まれているのか」を気になっている人が非常に多いので、彼らにそれを直接フィードバックできる点も良いですね。
また、コンセプト上、生産者に利益を還元できるのでやり甲斐があります。
―――― 大変さは、どのようなところでしょうか。
売上げを上げるのはやはり難しいです(笑)。余剰のマージンは、生産者さんに回したいので、そこにランニングコスト等を考慮するとまだまだ大変ですね。
もう一点は、お客様の嗜好は多種多様であり、独自性が強い点です。
コーヒーは嗜好品なので、主観的な意見が入ることはもちろんなのですが、「私どもはこういった想いでコーヒーを淹れているんですよ」と説明しても、納得されず、時には否定されてしまうこともあって……。
―――― 飲食業界で活躍するうえで必要なスキルは?
自分のお店で扱うコーヒーの良し悪しを客観的に判断するスキルが必要だと感じています。
経営視点でいうと、コミュニケーションスキルとビジネス的センスも必要です。
レコールバンタンキャリアカレッジで学び、Qグレーダーの資格を持っていることなどは、お客さまに対しての説得力や高品質表示の一つになっていると感じます。
――― 今後の目標はありますか?
「東ティモール=LUSH-COFFEE」になることです。まずは、自分がずっとお店を続けて、生産者さんに利益を還元し続けたいですね。
また、ゆくゆくは2店舗目、3店舗目の出店も目標です。というのも、同じ志を持つ仲間と、コーヒーを研究するラボのようなお店を展開して、今後のコーヒー業界を盛り上げていく人たちに教える側にまわっていきたいと考えています。
―――― レコールバンタンキャリアカレッジへの入学を検討されている方に、レコールバンタンキャリアカレッジはオススメしていただけますか。はいの場合、理由を教えてください。
はい。オススメの理由は、設備が良いのはもちろん、現役のプロフェッショナル講師に学べるので、自分の技術は確実に上がるからです。
―――― レコールバンタンキャリアカレッジへの入学を検討されている方に、ぜひ前向きなメッセージをお願いします!
私自身も迷っていましたが、入って後悔したことはありません。むしろ、前進した部分しかありませんでした。
コーヒー、ないしは将来の目標のための手段として知識を身に付けられますし、道標ができますので、目標を達成し、夢を追いかけたい人にはピッタリだと思います!
レコールバンタンキャリアカレッジに興味があり、悩んでいる場合は「LUSH-COFFEE」に、話を聞きに来ていただいても大丈夫です(笑)
<PROFILE>
LUSH-COFFEE Roaster and Laboratory
@lushkafe.asu
https://lush-coffee.stores.jp
住所:東京都足立区千住3-33 園生ビル1F
TEL: 03-3881-3558
「そのうです」と応答いたしますが、LUSH-COFFEEでお間違いありません
営業時間: 平日11:00~20:00、土・日・祝10:00~20:00