<卒業生インタビュー> 林檎と紅茶と オーナーパティシエ 居石和恵さん
「ウィズコロナ」の時代。外食産業を担う卒業生たちは、どのような心持ちでビジネスをしているのでしょうか?
最前線で活躍されている卒業生にヒントをもらうべく、インタビューを行います。今回は、西池袋のニシイケバレイのシェアキッチン「attic」にて、毎週火曜日に「林檎と紅茶と」(@ringo.to_koucha.to)を展開する、オーナーパティシエ居石(すえいし)和恵さんです。
<在校中について>
―――― レコールバンタンキャリアカレッジでのコース名、卒業年次を教えてください。
開業副業プランニングの3カ月コース(現:開業プランニングコース6ヶ月)を受講しました。2021年4月から6月まで学び、卒業後すぐに開業しました。
―――― クラスは何名くらいでしたか。スケジュールも教えてください。
35人ほどだったと思います。土曜日、日曜日それぞれにクラスがありましたが、私は日曜クラスに在籍していました。
―――― 入学時の年齢は?
44歳です。
―――― レコールバンタンキャリアカレッジを選ばれた理由を教えてください。
20歳のときから、カフェで働いていてお菓子を作っていましたが、結婚を機に辞めてしまったんです。10数年のブランクを経て、アウトドアメーカーで4年ほど販売職をしていました。山が好きなので、販売職も楽しかったのですが、もともと持っていた独立開業の夢を叶えたいと思うようになりました。
「本当にやれるのかな?」という気持ちもあったので、自分自身の覚悟を見極めるためにレコールバンタンキャリアカレッジに入りました。技術を教えてもらう、というよりも自分の気持ちを確かめたいという理由が大きいです。
―――― なるほど。キャリアについて詳しくうかがえますか?
最初に入社したのは、タルトと紅茶のお店です。当時は、未だ体育会系な雰囲気も残っていて、パティシエの方にゼロから厳しく教えていただきました。その後も、街の洋菓子店など3店舗ほどで働きました。さまざまなお店で、新しい技術を身に付けたかったんです。
そして、24歳で結婚しました。結婚して出産した後も、アルバイトは続けていましたが、そもそも時間が限られてしまうので、全力を出しきれないという気持ちもありましたね。子どもたちがだいぶ手を離れた40歳で、アウトドアメーカーに再就職し4年ほど勤めました。
レコールバンタンキャリアカレッジに入学したのは44歳のときで、卒業後の7月に、シェアキッチンを見つけて入居し、「林檎と紅茶と」をスタートしました。
―――― 学びたい、身につけたい目標は何でしたか?
飲食のプロフェッショナルの講義を受けて、クラスメイトの人と意見を交換したかったんです。一人で考えることに行き詰りを感じていたので、広い視野で独立開業をとらえてみたかったです。
入学前は、「そもそも、開業をしない」という選択肢もあり得るだろうと思っていました。具体的に技術を身に付けたいというよりも自分自身の覚悟を見定めたい気持ちでした。
―――― レコールバンタンキャリアカレッジを選ばれた理由は?
何校か、パンフレットは取り寄せました。卒業生の活躍ぶりや、こうしたインタビュー記事を参考にして、最も魅力を感じたからです。あとは、産学協同プログラムなど、企業との連携が多いのもいいと思いました。
―――― 印象的だった講師、授業はありますか。
中島講師の授業です。一回しかありませんでしたが、抜群にインパクトが強かったです。他の講師は、金銭面、建築面など割と現実的なお話をされるんですが、中島講師の授業では、「自分でもできるかもしれない」と思えたんです。
もちろん、ふわふわと夢を見るわけではありませんが、「こうすれば自分でもできるかもしれない」という希望が見えました。自信を持たせてくれたのが、とても良かったです。
―――― どのような内容でしたか?
SNSの使い方とか、自己PRがメインです。「ブランドを作る」といっても、飲食店は継続していく中でどうしてもブランドのコンセプトがズレてしまう(風化する)ことがある、というお話でした。例えば、ブランドの世界観を考えていたはずなのに、常連さんがカレーを食べたいからと言って「カレーをやってよ」と言われたので自身の店舗で提供したりしてしまうと、想定していた店舗ブランディングからどんどんズレていってしまうという事例を教えてもらいました。自分の考えたブランディングを守りながらお店を作ることの大切さを学びましたね。
中島講師は、「お店のブランディングをしっかり保つ」ことを強調されていました。漠然とお店を持ちたいと思っていたけれどそんなことは考えていなかったので、開業前にいちばん大切なことを学べて良かったです。
―――― レコールバンタンキャリアカレッジでの学びが「実践的だった」「今のビジネスに活かされている」と感じることは?
やりたいことは、在学中は決まっていなかったんです。
卒業してから、中島講師に色々な開業の仕方の候補を相談しました、自分のできることや、父の実家がリンゴ農家であることなどを伝えました。数回話すうちに、「これならイケる」と思いました。最初の相談を経て、中島講師に特別にコンサルタントとしてジョインしていただくことになりました。
行動するときに一人だと悩みますが、逐一確認できるのはありがたいです。中島講師が得意なテリトリーでなければ「この人を紹介するよ」と、チーム内にいる専門家に繋げていただけるのも助かっています。
―――― 印象的だったイベントや販売実習などはありますか。
3カ月のみなので、イベントはなかったです。6カ月コース、1年コースの人は当時あったみたいですね。
Photo by Shinkenchiku-sha
<卒業後について>
―――― 開業された経緯について教えてください。
7月です。シェアキッチンは、自分で探しました。中島講師には「こんなところだけれど、どうですか?」と相談すると太鼓判を押されました。atticを見る前に、椎名町のシェアキッチンも見学しましたが、西池袋の方が、設備や雰囲気も良かったのでこちらを選びました。
―――― 差し支えなければ、家賃をうかがえますか?
週1回、月4回の利用で、44,000円です。リーズナブルだと思います。こちらは厨房も広くて、雰囲気もいいので。また、ニシイケバレイのメンバーとして街を盛り上げていきたいなと思いました。色んなことができそうだなと思います。
―――― 開業された時期、場所、店名、コンセプトなど、こだわりを教えてください。
<オープン日>
2021年7月27日です。
<店名>
「林檎と紅茶と」は、焼き菓子と紅茶のお店です。
最初は、自分で焼いたパンを使ってサンドイッチ屋さんをするのもいいなと思っていました。他に、キッチンカーも候補でした。自分のスキル、リスクを総合的に考えて現在のシェアキッチンでの業態に決めました。
<コンセプト>
林檎と紅茶に特化した製品というのは、ズラしちゃいけないと思っています。
私の父の実家が、リンゴ農家です。商品にされないリンゴたちや、廃棄になってしまうリンゴたちを活用しています。救出するわけではないけれどジャムにしたり、お菓子にするということは貫きたいと思っています。例えば、リンゴの皮が雨で変色してしまうとスーパーには卸せません。でも味は変わりません。そうしたリンゴを「訳ありリンゴ」として販売する活動もしています。SNSで長野のリンゴ農家さんと繋がったので、その農家さんからも「訳ありリンゴ」を売ってもらって一緒に販売することもあります。
また、私自身も紅茶好きで、リンゴとも合うので紅茶を店名に入れました。最初に働いていたお店は、100種近い紅茶がありましたし、知識もあったので強みになるなと思いました。
狭山茶の農家さんで、和紅茶を作っている方がいらっしゃいます。オリジナルブランドを作らせてもらい、和紅茶、オーガニック和紅茶、リンゴの紅茶を販売しています。
また、焼き菓子によって紅茶も使い分けています。パウンドケーキはダージリン、スコーンはアールグレイ、フィナンシェはキームンで、紅茶の芳醇な香りも楽しんでいただけたら嬉しいです。
<場所>
生まれも育ちも池袋なので、近所で探していました。
<ロゴデザイン>
中島講師のチーム内のデザイナーさんにお願いしました。たくさんのデザイン候補をあげてくれましたが、ピンときたものを選ばせてもらいました。もともと、自分が手書きで描いていたロゴにも近いデザインで「これだ!」と、すぐに決まりました。
<想定していた客層>
幅広い年代に喜ばれたいですね。近所のお子さんがお小遣いを握りしめて「これください」と来てほしいです。地元の方に愛されるお店が理想です。
―――― 特にオススメのメニューは?売れ筋はどの商品ですか。
林檎のスコーン(300円・税込)、紅茶のスコーン(300円・税込)は不同の人気です。ただ、私の中では未だ実験中です。定番も含めて半年弱やってきたのですが、個人的には一新したいと思っています。
シェアキッチンはフットワークが軽いのが魅力。いろいろ作って、反応をうかがいたいですね。お客さまとの距離も近いので、私はけっこう感想などを聞いちゃいます。
常連さんもいらっしゃるので、「すごい美味しかったよー」と言われると安心します。ただそういうお声が聞かれないメニューは削って、リニュアールしたいです。
―――― 値付けは、どのように行いましたか?
一般的には、原価3割と言われていますが、実験中というところもあり、なるべく安くご提供したいと思います。実店舗を持つと今の価格帯での提供は難しいかもしれませんが、家賃のかからない状態なら、と原価に近いギリギリのラインで設定しています。
―――― 実店舗の条件は?
いい物件があればすぐに入りたいです。15坪で、1階、西池袋エリアが希望です。
シェアキッチンは当日に材料を持ち込むので、作る量に限度があるなと感じています。20kg、25kgの材料をスーツケースで運び、9時から17時という時間の制約もあります。全部計量してから持っていくなど「タイムロス」を無くして作っていますが、ゆくゆくは生地を寝かせる商品も作りたいです。
例えば、シフォンケーキは焼き上がったら、型を外さずに数時間冷ましておきます。マドレーヌにも、一晩生地を寝かせる工程があります。そうしたメニューは作れないので、ラインナップに制約が生まれてしまいます。可能なら、時間をかけてお菓子を作りたいです。荷物についても、冷蔵庫にタッパー一個分なら置いていてもいいんですが、それ以外は持って帰らないといけません。今後、さらに多くの種類のお菓子を作っていけたらと考えています。
―――― 物件探しはどのように行っていますか?
ネットでチェックして、情報を探しています。ただ、めちゃくちゃ焦っているという訳ではなく、いい物件があればなという感じです。
―――― 開業されて経験されたご苦労についてお聞かせください。
荷物の運搬は大変です。一人で、20kgから25kgの荷物を運んでいます。シェアキッチンを借りている方は、皆さん大変なところなんじゃないかなと思います。もうひとつは、先ほどの質問とも重なってしまいますが、時間の制約があるところ、何時までに返さないといけないので、一日中慌てて仕事をしている状況です。実店舗になれば、荷物と調理時間に余裕が生まれるのではないかなと思います。
―――― 飲食ビジネスの面白さ、喜びについて教えてください。
お客さまと喋って「また来るね」、「美味しかったよ」と言っていただけること。一つひとつの言葉が嬉しいです。
特に住まれている方や、近所の会社で働かれている方が休憩中に買いに来てくれています。なかには、Instagramを見て「林檎と紅茶と」を目指して来てくれる方も多く、有難いです。20代女性も、男性もいますよ。食べる前に写真を撮ってアップしてださるのも、とても嬉しいです!
―――― 飲食業界で活躍するうえで必要なスキルとはどのようなものだとお考えでしょうか?
飲食の技術ももちろん必要だと思いますが、立ち上げに際しては「ポジティブな気持ち」です。ポジティブな考えの人には人も寄ってきてくれます。立ち上げのときも、運営するときもポジティブでありたいですね。例えばメニューを変えようと思っても、ネガティブなモードだと面倒に感じたり、動きが鈍くなったりすると思います。気持ちが前向きなら、「人気が出そう」、とか「美味しいだろうな」と楽しんで取り組めると思います。
―――― レコールバンタンキャリアカレッジへの入学を検討されている方にぜひ前向きなメッセージをお願いします!
レコールバンタンキャリアカレッジに入ることが大きな一歩です。レコールバンタンキャリアカレッジを卒業しても、最初の一歩がなかなか出ないよねという話をクラスメイトとも話をしています。
まずは入学することが、次の一歩に繋がっていくと思います。私も、レコールバンタンキャリアカレッジに入ったからこそ、中島講師と出会い、はじめの一歩を踏み出せました。決して安くはないのでそこは悩むと思いますが、一歩を踏み出せて良かったと思っています。
<SHOP INFO>
毎週火曜日営業
(定休日などは、公式SNSをチェックしてください)
ニシイケバレイ 豊島区西池袋5-13-18 Attic(※階段上って2階)