21.01.25 24.04.01 更新

<卒業生インタビュー>「Adam’s awesome PIE」オーナー 根津祐太郎さん

学生インタビュー
卒業生
東京校

「ウィズコロナ」の時代。

外食産業を担う卒業生たちは、今どのような心持ちでビジネスをしているのでしょうか?

最前線で活躍されている卒業生にヒントをもらうべく、「Adam's awesome PIE」オーナー根津祐太郎さんにインタビューを行いました。

 

オーナー根津様.jpg

 

―――― レコールバンタンキャリアカレッジでのコース名、卒業年次を教えてください。

2014年カフェオーナーコースに入学し、2015年に卒業しました。入学したのは28歳のときです。

 

―――― スケジュールも教えてください。

日曜日に1回だけ授業があり、朝9時から夜6時まで集中して学びました。

 

―――― レコールバンタンキャリアカレッジ東京校を選ばれた理由を教えてください。

長野県の信州リンゴを、初めて東京に卸した青果の問屋に勤めています。先代の社長は『いいものを直接お客さまに届けたい』という想いを持っていましたが、

高級店に納めても、青果をどう美味しく使ったらいいのかということがイマイチ響いていないのではないか?と感じることがありました。そこで、商品の良さを直接お客さまに届けるべく、飲食部門の構想をたちあげることになったんです。

僕自身、家庭料理は作れたものの、飲食業の知識は全くなかったので、青果卸をしながら、専門校で学ぶことにしました。

今でもクラスメイトとはつながっているので、レコールバンタンキャリアカレッジを選んだ自分の判断は正しかったと思います。在学中は、仲間に意見を伝えることで、自分の強みを確認でき、事業のアイデアをブラッシュアップすることもできました。地元のベーカリーオーナーがレコールバンタンキャリアカレッジのパン専攻出身だったことも選んだ理由の一つでした。地元で愛される店づくりのヒントを学べるのではないかと思いました。

 

―――― 学びたい、身につけたい目標は何でしたでしょうか?

調理、経営の基礎です。現在は、カリキュラムが異なるかもしれないですけれど、

僕が在学していたときは、実際に募集テナントを探し、企画書をまとめて、家賃計算し、売り上げをたて、店の核となる商品を作りプレゼンする、という実践的な授業がありました。この授業を受けて、飲食事業の核を「アップルパイ」にしようと決めました。

 

―――― 印象的だった講師、授業はありますか?

宮崎講師には、カキノキテラスさん、ノボルノバルさん、カフェおきもとさんなど卒業生のお店に連れていってもらい、フィールドワークをしたことが印象に残っています。調理担当の船木講師は親身に相談に乗ってくださり、卒業後もお店のコンサルテーションに入っていただきました。

バリスタの篠崎講師には、今もコーヒーマシーンの件でお世話になっています。偶然、ポスティングされたコーヒーマシーン広告を見たら、篠崎講師がモデルをされていたんですよ。ご連絡を差し上げたら「マシーンを見においで!」と、快くメーカーの展示スペースに案内してくださいました。SNSではつながっていたけれど、卒業後もお仕事でお会いできるのは嬉しいですね。

 

―――― レコールバンタンキャリアカレッジでの学びが「実践的だった」「今のビジネスに活かされている」と感じることはありますか。

 

自分自身の強みを発見させてもらったな、と感じています。宮崎講師には「強みを見つけて商品に落としこみなさい」と教わりました。入学当初、「僕に強みなんか、ないんじゃないか?」と思っていました。でも、宮崎講師とお話をさせていただくうちに、『元リンゴ問屋』というキーワードが明確になってきた。さらに、どの地域で営業したいかを突き詰めていくと、地元・立川で営業したいと分かりました。そして、経営資源は自分が属する会社そのものであると気付いたんです。僕は営業をやっていたので、話し方もマーケティングの知識も活かせます。また、地元は、周辺環境も含めて出店を判断しやすい。入学したことで、自分自身の強みや軸が分かり、ビジネスに活かせていると思います。

 

―――― 印象的だったイベント、販売実習などはありますか。

佐々木講師にオープン間近のお店に連れていっていただき、モチベーションが上がったことを覚えています。

西武線沿いにある、元クリーニング店の物件をリノベーションしたレストランでした。入学当初から開業すると決めていましたが、どこか漠然としていて、イメージを描けていなかったんです。でも、開業間近の空気感や、工事のBEFORE/AFTER写真を目の当たりにしたことで実感が湧いてきました。また、自分の強みを活かし、やりたいことを表現できるという気持ちも確信に変わりました。サラリーマン時代は、正直なところ、自己表現するのは難しいと感じていましたが、飲食店であれば自由に表現できる、そういう想いが芽生えましたね。

 

<卒業後について>

―――― 開業された経緯を教えてください。

立川は、僕が生まれ育った町です。昔の立川は個性的でした。でも、大型ショッピング施設ができ、2Fのコンコースができ、地上に降りなくても百貨店に行けるようになりました。新宿などと似たような風景になり、立川らしさを感じるお店も少なくなっていると感じます。

商店街の人たちは、コンコースから降りない人たちを冗談で『天空人(てんくうびと)』と呼んでいます。地元の人たちは、街に遊びに来てくれる人を『どうにか、地上におろしたい』と思っていたんです。

もうひとつ、立川はかつて米軍基地があった場所です。現在、店舗がある場所の住所表記も、アメリカ・カリフォルニア州でした。カリフォルニア州にはアップルパイで町おこしをしている街も多い。そこで、アメリカンハウスを借りて、お店にしたら面白いと思っていましたが、どこも貸してくれませんでした。困っていたときに、駅前に大きなビルが建ちました。立地も良く、ダメもとで先代の社長と僕とで、レコールバンタンキャリアカレッジで作った企画書を持ってオーナーにプレゼンしに行ったんです。すると「2016年にテナントが空くからやってくれ」と、即契約が決まって……。やりたいという気持ちも強く、企画もバッチリでしたが、プレッシャーはありましたね。金額が出て、工事も進んでくると、自分にできるのかな?という気持ちもありました。船木講師や、学んだ知識に、オープンした後も支えてもらいましたね。

 

―――― 場所、店名、コンセプトについてのこだわりを教えてください。

店名は、Adam's awesome PIE(アダムスオーサムパイ)です。社長の強い意向で、リンゴにまつわる「アダム」は入れることになりました。awesomeは、素晴らしい、美味しいという意味です。

コンセプトは、「老舗の青果卸が営むアップルパイ店」です。内装は地元の業者さんにお願いしています。僕は行ったことがありませんが(笑)カリフォルニアの空の青さを表現するためキッチンカウンターも天井も薄い青で統一しています。また、リンゴ問屋が母体であることを表現すべく店内の大きな柱は、リンゴの木に見立てた内装になっています。

当初、テラス席は2席しかありませんでしたが、2020年3月に、助成金を活用してハンモックやパラソルを置き、リラックスできる空間にしました。テラス席を拡充したことで、道行く人にも「ここにお店がある」ということが分かりやすくなりましたね。テラス席のおかげで、2020年7月から11月の売り上げは、コロナ禍にも関わらず前年比と同様に推移しまた。

 

―――― なるほど。現在のスタッフ数は?

スタッフは30名いて、女の子が多いです。家族構成や、その子の基本的な情報は、できるだけ知っておくようにします。せっかく働きに来てくれているのだから、お互いに楽しいほうがいい。元気がないときはスタッフへの接し方を変えて、心地いいコミュニケーションが取れるようにしています。

 

―――― 特にオススメのメニューについて教えてください。

その時期にベストな状態のリンゴを、品種ごとに味わえる「Adam's特製アップルパイ」(480円・税込)です。八百屋が作るアップルパイを作るなら、他店との違いを出したいと思いました。リンゴの味わいが感じられるように、甘いリンゴは甘く、酸味があるリンゴは酸味を活かして仕上げています。ウチに来ればリンゴ本来の味が味わえますよ。ちなみに、リンゴの品種が変わったときには、味見して同じ商品でもレシピを微妙に変えています。リンゴの品種について語ると2時間くらいかかってしまうので、今回は省略します(笑)

ハンバーガーに焼いたリンゴを加えた「Adam'sハンバーガー(100%ビーフ)」(1290円・税込)もオススメです。

 

Adam's特製アップルパイ.JPG

 

―――― 開業されて経験されたご苦労についてお聞かせください。

2016年10月6日にオープンし、初日の売り上げは17万円、2日目は3万円でした。オープンして2年ほどは、売り上げも安定せず大変でしたね。母体である卸業に、助けてもらっていました。

お金の部分もそうですが、「僕らの考えは、失敗だったんじゃないか?」という迷いや、心ないクチコミのほうが辛かったです。ですが、「伝え方の努力が足りていないんだ!」と気づき、そこで「八百屋がやっているんだよ」というメッセージを強く打ち出すようにしました。メニューなども少しずつ改善していき、少しずつ忙しくなっていきました。

ただ、お客さんが増えて忙しくなると、次は従業員のマネージメントの難しさが増していきましたね。例えばですが、誕生日プレートを提供しても「おめでとうございます」と伝えていないスタッフがいたり……。暇なときは暇の苦労が、忙しいときは忙しい時期ならではの苦労がありますね。

最終的には、お店のためになっているかどうかで判断し、Adam's Awesome Pieが発展していくことに注力するようにしています。

 

―――― コロナウィルスの流行で、工夫された点、心がけていらっしゃることについて教えてください。

テラス席を拡充し、お弁当もテイクアウトも充実させました。他には、ネットショップ(AdamsawesomePIE アダムオーサムパイ (thebase.in)を始めました。

実は、2020年9月からお店からは離れて、外部に向けてアプローチしています。僕らの理念である「素材の良さをお客様に届けたい」という部分が合えば、他のパートナーと力を合わせてもいい商品ができると考えました。

具体的には3つあります。1つめは、ジャムのメーカーさんと組み、フルーツジャムを販売する計画をクラウドファンディングで進めています。老舗八百屋がプロデュースする新商品開発に力を貸して下さい – CAMPFIRE (キャンプファイヤー) (camp-fire.jp)

2つめは、1988年創業の小金井・ビルドルセさんと開発した「黄金井パフ」。「圏央道の宝物グランプリ」で準グランプリを獲得しています。

3つめは、コンサルティングです。経営に困っている原宿の飲食店に、弊社のアップルパイを使って経営を立て直す事業を考えています。実は、他店のサポートをする「コンサルティング」というお仕事を知ったのも、宮崎講師のおかげ。

在学中から、宮崎講師に「不安なら動け」と言われてきました。なので、信用金庫さん主催のセミナーに参加したり、他社さんとコラボレーションしたり、不安を感じるときだからこそ、動くことを心がけていますね。

 

―――― 飲食ビジネスの面白さ、喜びはどのようなことですか?

いいものを直接届けられ、自己表現しやすいこと。サラリーマンは、希望の企業に就職しても、やりたいことができるまで何十年もかかる場合が多いです。対して、飲食店オーナーはすべて自分のアイデアで動くことができます。自分の想いをダイレクトに表現でき、認められれば流行していきます。そして、自分の予想を超えるような経験もできます。

僕の場合、いくつかありますが、ひとつは、ウチのお店で結婚式を挙げていただき、結婚式の司会もさせていただいたこと。『僕でいいんですか?』と聞きましたが、頼まれましたので……もはやウエディングプランナーですよね。タイムスケジュールの管理から、当日の音楽出し、お料理の提供までを綿密に打ち合わせして行いました。新郎新婦に『頼んでよかった』と喜ばれたときは、とても嬉しかったです。人生に一度きりの瞬間に立ち会えたわけですから。

あとは、映画やドラマの撮影に使っていただくこともあります。ウチで『マッドマックス』出演者インタビューを撮影していただいたこともあります。俳優さんたちも食事を楽しんでいってくれて、写真にも快く応じてくれました。

 

―――― 飲食業界で活躍するうえで必要なスキルは?

レスポンスの早さ、バランスを取る力、人、モノを俯瞰して見る力、どれも大切なスキルです。

 

―――― レコールバンタンキャリアカレッジへの入学を検討されている方にぜひ前向きなメッセージをお願い致します!

 

飲食に携わるにしろ、携わらないにしろ、自分の良さ、強みは絶対に発見できるはず。迷っているなら、入ってみたらいいんじゃないかなと思います。今は、開業するにはいいタイミングです。大手のテナントが撤退して、普通なら空かないようないい物件が、好条件で出てきます。銀行の融資もしてもらえます。

僕らみたいな既存店は大変ですけれど、飲食業を始めたいならこの機会にチャレンジしたほうがいい。

レコールバンタンキャリアカレッジは、経営や料理の勉強を通じて、自分の強みを発見できる場所だと心から思います。是非、やり切ってください。

 

入口付近.JPG

Adam's Awesome Pie

東京都立川市緑町4-5 コトブキヤビル201

@adams_awesomepie

https://lin.ee/ibMt8aO

AdamsawesomePIE アダムオーサムパイ (thebase.in)

老舗八百屋がプロデュースする新商品開発に力を貸して下さい – CAMPFIRE (キャンプファイヤー) (camp-fire.jp)

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