<大阪校卒業生インタビュー>「タナカコーヒーロースタリー」オーナーバリスタ田中 善範さん
「ウィズコロナ」の時代。
外食産業を担う卒業生たちは、今どのような心持ちでビジネスをしているのでしょうか?
最前線で活躍されている卒業生にヒントをもらうべく、タナカコーヒーロースタリー・オーナーバリスタ田中善範さんにインタビューを行いました。
―――― レコールバンタンキャリアカレッジでのコース名、卒業年次を教えてください。
最初は、2013年10月バリスタクラスに半年間通いました。2回目は、2019年11月にロースト&ブリューコースで学びました。
―――― クラスは何名くらいでしたか。またスケジュールを教えてください。
週1回。どちらも7、8名のクラスでした。
―――― レコールバンタンキャリアカレッジ大阪校を、選ばれた理由を教えてください。
非常に実践的なプログラムだったから。エスプレッソマシーンも触らせてもらえますしね。2013年当時、心斎橋近くに住んでいたので通いやすさも決め手になりました。校舎は、自宅から近いところが良かったんです。
もともと焙煎をしたかったのですが、当時は焙煎クラスがなく、コーヒーを総合的に学べるバリスタクラスを選びました。
―――― 学びたい、身につけたい目標は何でしたか
安定して焙煎できる技術です。入学前から開業するつもりでいました。
―――― 印象的だった講師は?
上野講師。包み隠さず、焙煎のノウハウを教えていただきました。
―――― 印象的だった授業はありますか。
豆を焙煎したときに行ったプレゼンテーションです。聞く人の立場になって説明するというのがポイントでした。チームを組み、自分たちが焙煎した豆の売りを分かりやすく説明しました。学んだことは、お店での接客に活かされていますよ。お客さまにコーヒーを試飲してもらい、焙煎度や、好みの苦み、風味から豆を選んでもらっています。
―――― レコールバンタンキャリアカレッジでの学びが「実践的だった」「今のビジネスに活かされている」と感じることはありますか?
焙煎の仕方、理論をイチから教えてもらいました。失敗したらどういう味がするのか、も教えてもらいましたね。
当店がドリンクメニューをしぼって営業しているのも、レコールバンタンキャリアカレッジでの学びが大きいです。カフェラテを提供するには、それ相応の器具や設備がいると知っていたからで、バリスタコースを受けていなかったら、そういう背景まで分からなかったと思います。
―――― 在学中、アルバイトなどで飲食業界の経験をされていましたか?
いえ、一切ないです。
―――― コーヒー焙煎に興味を持たれたキッカケは?
会社員時代に、通勤途中でお気に入りのコーヒー屋さんに出合ったのがキッカケです。飲んで「美味しいな」と感じて、興味を持ちました。それから、豆の焙煎から手掛けるコーヒー店を巡り、焙煎機メーカーの講習も受けるようになりました。「自分で焙煎したら、どうなるだろう?」と思い、開業を考えるようになりましたね。
<卒業後について>
―――― 開業された経緯を教えてください。
製薬会社の営業をしていましたが、体調を崩し2017年に退職しました。現在、飲食業ではないのですが、父親の会社に入って仕事をしています。何かプラスαの収入が欲しいと思ったんです。
いくつかのバイトに申し込みましたが、採用されなかったので、それならば自分で開業しようと決意しました。ジャンルは、自分の得意とする筋トレのパーソナルトレーニングかコーヒーと決めていました。コーヒーであれば、物販もできるし、長く続けられるかもしれないなと。なので、他の方に比べると、動機が変わっているかもしれないですね。
―――― 場所、店名、コンセプトについてのこだわりを教えてください。
コロナの影響予定よりも少し遅れて、2020年6月11日にオープンしました。
<場所>
父の物件を借りています。他の物件も探したものの、「ほとんど使っていないので、この場所でやったらどうか」と提案されたから。家賃も抑えられるので決めました。
<店名>
苗字のタナカに、焙煎所という意味の「ロースタリ―」を付けました。分かりやすいほうがいいと思いました。ときどき、ロースタリ―はどういう意味かと聞かれることはありますね。
<コンセプト>
「“そこそこ、いい”コーヒー豆をお手頃に提供する」町のコーヒー屋さんです。お店で豆を焙煎して、新鮮なうちに売る。80gから販売しているので手軽に買っていただけます。焙煎度も選べますし、好みのコーヒーも見つけていただける場所です。
―――― お客さまの層は?
30歳後半から、60歳くらいまでの方が多いですね。母のお友だち、知り合いにもお越しいただいています。
―――― 焙煎機、コーヒー豆、ロゴデザインのこだわりについても、詳しくうかがえますか。
<焙煎機>
株式会社富士珈機さんの「COFFEE DISCOVERY 250g釜」を使っています。授業で使っていた機種と同じです。これより大きいのだと値段もはるし、場所も取るので、このロースターに決めました。
<コーヒー豆>
業務用卸をされているユーエスフーズさんにお願いしています。ネットで探して、登録しました。ウチの店では、グレードの高いスペシャリティコーヒーを求められている訳ではありません。なので、原価率と売価を計算して、これくらいだなという理想に合う豆を選んでいます。あとは、味わいですよね。お客さまの口に合うかどうか、というところも見極めています。
<ブランドロゴ>
大阪西区のAST DESIGNさんに頼みました。以前、江戸堀に住んでいたんですが、馴染みのある場所で営業している会社さんがいいなと思ってネットで探しました。
―――― 特にオススメのメニューについてお教えください。
ドリンクは、深煎りブラジル、中煎りグアテマラ(各400円・税込)が人気です。特にご高齢の方は、深煎りに親しんでいる方が多い印象です。
ホットは、ORIGAMIのカップに、アイスコーヒーはHARIOのグラスを使っています。
―――― 物販で人気なのは?
いちばん売れているのは、ドリップバッグです。豆を挽いてドリップバッグに入れて袋詰めしています。価格は150円で、浅煎り、中煎りが人気です。ドリップバックは、袋詰めする手間があるので、本音を言うと豆が売れたほうが有難いというのはありますね。
―――― なるほど。他に、メニュー構成で心がけていることはありますか?
お子さん連れも入りやすいように、リンゴジュース、オレンジジュースを揃えています。手軽に食べられるようなスイーツも用意しようかと思いましたが、手間と洗い物が増えるので現在はドリンクにしぼっています。近所に川があるので、アリが入ってきてしまうんですよ。ひとりでやっていますし、コーヒー豆も陳列していますので、スイーツの保管場所も無いといえば無いので。
―――― イートインとテイクアウト、売り上げに占める割合で多いのは?
テイクアウトです。イートインは、現状1割か2割くらいなので、スタンディングのみに変更してもいいかもしれません。焙煎機を大きくするとしたら、客席を少なくすることも考えています。
―――― 開業されて経験されたご苦労についてお聞かせください。
開業当日に、製氷機が止まったこと。いきなり氷がなくなって、焦りました。吸気口にホコリが目詰まりしていて冷凍できなくていたんです。
他には、開業直前に突然コーヒーの味が変になったこともありました。焙煎機は、定期的にメンテナンスをしないと味がおかしくなってしまうんですが、ちゃんと掃除をしていなかったんです。また、同じ焼き方をしているつもりでも味が安定しなかったり……同じような香りがしていても、味が異なったりするので、そこは苦労でもあり面白さでもあります。
―――― コロナウィルスの流行で、工夫された点、心がけていらっしゃることについてお教えください
オープン当初は5席でしたが、4席にして机の感覚も離しました。もともと、テイクアウトがメインなので大きな変更点はありませんでした。
―――― 飲食ビジネスの面白さ、喜びについてお教えください
お客さまが買いに来てくれて、コーヒー豆が売れていくと嬉しいです。開業当初は、「ほんまに、豆を買ってくれる人おるのかな?」なんて思っていたんですけれどね。
―――― また、大変さはどのようなところでしょうか。
洗い物。量が多くて大変です。手荒れがひどく、今は手袋を付けて洗っています。
あとは、焙煎は数を焼かないと分からない世界だなと感じています。もしも、講師に「1年焼いてから開業しろ」と言われていたら大量の豆を捨てなくてはならず、もしかすると開業を断念していたかもしれない、とさえ思います。
―――― 飲食業界で活躍するうえで必要なことはどのようなスキルだと感じますか?
自分の好きなコーヒーを見つけること。授業でも学びますが、自分の好みの味が分かると、PRする味がおのずと分かります。
お店をして分かってきたことが1つあって……それは、色んな焙煎度のコーヒーを飲む人は少ないということです。お客さまは、コーヒー豆を頻繁には変えません。大体決まっているものを飲まれる人が多い。そこを知ったうえでどうオススメするのか、ブレンドを作るにしても自分の好みがなければオリジナルを作れません。
オープン当初は、浅煎り1種、中煎り1種、深煎り1種でしたが、今は浅煎り2種、中煎り3種、深煎り4種にしました。でも、最初に出したのが、いちばん売れています(笑)たまに、違う豆を買っても、大抵のお客さまは最初に買った豆に戻っていきますね。
―――― レコールバンタンキャリアカレッジへの入学を検討されている方に、ぜひ前向きなメッセージをお願い致します!
私自身も、教えていただいたことを守りながら焙煎しています。どうしたら失敗し、失敗したらどんな味がするかまで、細かく教えてくれました。なので、大きく失敗するようなことはありません。
開業するつもりなら、レコールバンタンキャリアカレッジはとてもいい環境だと思います。焙煎の仕方を順序だてて教えてくれますし、どんな質問にも快く答えてくれます。
<SHOP INFO>
タナカコーヒーロースタリー
高槻市如是町1-8
営業日:火、水、木、金、土
営業時間:11:00~17:00