22.02.25 24.04.01 更新

<卒業生インタビュー>TERRA COFFEE ROASTERS オーナーバリスタ 西村紀彦さん

学生インタビュー
卒業生
東京校

 

「ウィズコロナ」の時代。

外食産業を担う卒業生たちは、今どのような心持ちでビジネスをしているのでしょうか? 最前線で活躍されている卒業生にヒントをもらうべく、「TERRA COFFEE ROASTERS」オーナーバリスタ西村 紀彦さんにインタビューを行いました。

 

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<在校中について>

 

―――― レコールバンタンキャリアカレッジでのコース名、卒業年次を教えてください。

2021年3月です。3カ月間、バリスタ、コーヒーロースターコース(※現在は6ヶ月からのご案内です)を同時に受けました。

 

 

―――― 入学時はおいくつでしたか?

42歳です。

 

 

―――― それまではどのようなお仕事を?

以前は、家具、文房具のメーカーに勤めていました。

 

 

―――― 入学した経緯は?

自分でやるしかないと思ったからです。

もう20年ほど、ずっとコーヒーが好きです。30歳くらいから特に好きになって、ありとあらゆるコーヒーを飲み倒しました。自分で豆を焙煎して、YouTubeもSNSも徹底的に見て、日本中のコーヒーを飲みました。それでも飽き足らず、海外からコーヒー豆を取り寄せて飲んでいました。オーストラリア、スイス、デンマーク、ノルウェー、ニューヨーク、ハワイ、あげたらキリがないくらい。また、世界チャンピオンといわれるよう人からもコーヒーを買って飲んでいました。そこで、世界の豆と比べたときに、日本のコーヒー文化のレベルが低いということを感じました。例えば、お店で質問しても、僕の聞いたことに答えてくれないことも多く、「スペシャリティコーヒーショップ」と謳っているお店でも、実は適当にやっているお店が多いと感じていました。

「TERRA COFFEE ROASTERS」では、スペシャリティコーヒーを扱っています。全体の10%しか収穫できない貴重な豆で、特別な味わい、アロマ、風味があってユニークなコーヒーです。一般的に、スペシャリティコーヒーはワインの10倍くらいのアロマがあると言われています。それは、突き詰めると生豆の選定と焙煎力です。そういうコーヒーを提供できているお店は、日本では本当に少ないです。こういう味わいを飲んだことのある日本人って、僕の経験上、100人いたら5人くらい。つまり、95人分の伸びしろがあると感じていました。スペシャリティコーヒーを広げていかなくてはならない、世の中に、コーヒーの本当の味わい、風味を発信していくことが使命かもしれないと思いました。

 

 

―――― なるほど。レコールバンタンキャリアカレッジを選ばれた理由を教えてください。

原理原則は我流なので、習っておきたかったから。他の方が、どんな勉強をしているのか知りたかったんです。レコールバンタンキャリアカレッジで、業界の人と触れ合えたことは大きいです。実際にクラスメイトでも、1店舗目のオープンにも、2店舗目にも足を運んでくれる人もいます。講師の方も来てくれますし、僕のやりたいことに対して応援してくれる業界関係者も多いです。これは、本当に良かったと思います。お金を出す以上の価値が得られたと思います。

 

 

―――― 他に候補だったスクールはありますか?

ありません。内容的にも良さそうだったので他のスクールは見ていません。

 

 

―――― 印象的だった講師、授業はありますか

上野講師が良かったです。型破りな講師でした。焙煎理論というルールを持ちながらも、自由な発想を持っている人です。

上野講師とは、今も繋がっています。上野講師はコーヒー研究会を作っているのですが、研究会には全国的に有名なコーヒー店しか参加できません。北は北海道、南は沖縄まで、コーヒーロースターが所属しています。TERRA COFFEE ROASTERSも入りました。定期的に勉強会があって競い合うのですが、一定の評価もいただいています。当店にロースターが集まって、勉強会を開催したこともあります。

オープン2カ月では考えられないような知名度を得ていると感じます。とても注目されていますし、感謝しています。

コーヒーアドバイザーをされている鈴木講師にも、お店が成長していく姿を見届けていただいていますね。

 

 

―――― レコールバンタンキャリアカレッジでの学びが「実践的だった」「今のビジネス」に活かされていると感じることは?

いちばんは、人だと思います。コーヒーの技術は、変わっていくものです。日進月歩、変化しています。求められるものもそうですし、自分がどういうスタイルの味を出したいかによっても変わってきます。答えは一つではありません。

レコールバンタンキャリアカレッジでは、答えのひとつを学んだという感じです。なので、人との出会いがいちばん大きい。僕ほど、レコールバンタンキャリアカレッジに通って良かったと思っている人はいないと思います。

 

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<卒業後について>

 

―――― 開業された経緯をお教えください。

「世界を代表するコーヒーロースターになる」。スペシャリティコーヒー人口の底上げに貢献する、農園コーヒー農家の方にお金を還元する、僕たちの考える理想のコーヒーを農家と共に育てる。僕の場合は夢が壮大だから、一人でやることは難しいです。世界で戦えるコーヒー屋さんになるという壮大な夢を持っている以上、3カ月学んだからといって一人で実現できるわけではないんです。そこで、右腕を見つけなくてはならないと思いました。

2008年、2009年の「ジャパンバリスタチャンピオンシップ」で優勝したバリスタのコーヒー豆をローストしていたのが、相方の山本順平です。彼と、京都「Okaffe kyoto 嵐山」で出会ったときは衝撃を受けました。その日に、ホットコーヒー2種類と、コーヒートニック、ラテを飲みましたが、全部美味しかった。当時、僕は個人でエスプレッソマシーンを買おうと思っていました。あとは、家用にイギリスの『IKAWA(イカワ)』というプロしか持っていない焙煎機を使っていると話をするとすごく驚いて。お互い、とてもビックリして、お店に通うことになりました。1週間中に、何回も通ったんです。それで、僕の夢を話すと、驚くことに、彼も同じことを考えていました。「自分の想いが詰まった環境で、いちばんと思うコーヒーを理想の農園から生豆を仕入れて、自分の焙煎力で一流のコーヒー豆を焼いて世界に発信していきたい」と。それ、可能やからすぐやろうと誘い、一緒に理想の店を作っていくことになりました。

 

 

―――― 開業された時期、場所、店名、コンセプトなど、こだわりをお教えください。

 

<店名>

ワインの世界には、テロワールという、土壌や土を意味する言葉があります。テロワールの持つフレイバーを最大限引き出し、味わいのバランスが取れた浅煎りの焙煎こそ、私たちの目指す焙煎です。

テロワールを、ラテン語でいうとテラになります。意味としては、土、土壌、環境、気候、さらに大きく見ると地球という意味合いを持ちます。素材の周りにある環境を大切にしたいという想いを込めています。

 

<コンセプト>

世界を代表するコーヒーロースターになる。スペシャリティコーヒー人口の底上げに貢献し、農園コーヒー農家の方にお金を還元する。僕たちの考える理想のコーヒーをコーヒー農家と共に育てることをビジョンとしています。

 

<場所>

2021年10月に新千里東店、12月に江坂公園店をオープンしました。大阪では、南と北にコーヒー店が集中しています。それ以外の地域に浅炒りのコーヒー屋さんは少なかったです。僕らはどこにいっても勝負できる、スペシャリティコーヒービーンズショップです。一人でも多くの人にスペシャリティコーヒーを伝えていくという大きな目標があります。また、本店は緑のある場所に構えたかったんです。ショールーム的な意味合いもありますし、お客さんには焼き立てのコーヒーを、焙煎の香りを嗅ぎながら落ち着いて楽しんでもらいたい。江坂公園店はいちから建物を建てて、僕たちの理想の焙煎スペースを作りました。

 

<空間デザイン>

新千里店は、ホテルをデザインしている事務所に依頼し、江坂公園店は僕たちで建物を設計しました。

美味しいコーヒーを飲むのには、文化が大切です。会話を弾ませるツールとして、コーヒーは活かされないといけないと思います。空間、器、液体を彩る器にもこだわり、「また来たい」と思ってもらえるという店づくりをしないといけません。来ていただいたすべての方の、五感が震えるような空間を提供したいと考えています。本物のコーヒー、渾身の一杯を提供するということに妥協は一切しません。

 

<客単価について>

客単価は1000円~1300円になります。ランチよりも高い値段になりますが、来てくださった人たちを満足させられる、本物のコーヒーを提供しています。

 

<生豆の仕入れについて>

グリーンビーンズについては、値切りません。日本の商社も、尖がっているところが多いかもしれません。エルサルバドル専門店、グアテマラ専門、コロンビア専門などと付き合っています。フランスのグリーンビーンズの商社から、ダイレクトに輸入することもあります。

例えば、現地のエクスポーターを使って仕入れているホンジュラスの豆は、日本で提供しているロースターはほとんどありません。ドイツのベルリンのロースターに紹介してもらって、知ることができました。3月にはデンマークのチャンピオンに来てもらい、「世界に発信するロースター」を体現します。ベトナムにあるカジノのホテルとも話が進んでいます。香港、シンガポールにも出店したいと思っていますし、東京・吉祥寺にも店舗を構える予定です。

 

 

―――― 焙煎には、システムを導入されていますね。

焙煎記録を管理するソフトウェア「クロップスター」を導入しています。感覚ではなく、理論的に焙煎できている人は何人いるのか。

コーヒーって「定義」があってないんです。何をもって美味しいのか、何をもって美味しくないのか?定義が100個あるうち、自分なりの定義を確立させないといけません。焙煎の技術を自分自身が「アップデート」していけるか、日々得られているのか。僕らの焙煎理論は世界のスタンダードです。山本は、ブラジルのチャンピオンが主催するオンラインセミナーに参加したり、常にアンテナをはっています。

 

 

 

―――― 特にオススメのメニューについてお教えください。

この豆が売れているというのは特になくて、全般が売れています。ラテ(600円)も美味しいですよ。クリーミーでさらっとしていて、もちっとしていて喉ざわりがいい。ホットチョコレート(700円)も、味わいが深く人気です。

お菓子も手作りです。コーヒーと合うように、甘さを控えめにしています。シンプルなフィナンシェや、マロングラッセを練りこんだフィナンシェ、カカオをチョコレートにしたショコラフィナンシェ、レーズンフィナンシェなどを揃えています。(各250円)スイーツは、僕が開発し、社外のパティシエにお願いしています。

 

―――― スタッフ数は?また、採用するときに重視することは。

2022年1月現在で、7人います。コーヒーに対する情熱を見ています。口と手と、両方動かせる人間がいい。まずは手、つまり技術です。次に味覚と、コミュニケーション。その両方がないと、TERRA COFFEE ROASTERSの店舗には立てないと思います。

 

<デザイナー>

メインのロゴクリエイターがいて、デザイナーも数人います。メインのロゴクリエイターはセンスがよくて、僕たちの想いを汲み取ってくれます。うちでは、ロゴも横文字で堅いものと、アパレルなどに使うロゴの2種類があります。PRコーディネーターにも入ってもらっていて、イベントを仕掛けたり、ブランド全体のイメージを保ってくれています。

 

―――― PRコーディネーターを入れる理由とは?これまでに行ってきた、卒業生インタビューでも初めてのケースだと思います。

どれだけ味が良くても、ファンがつかなければ意味がありません。

お客さんは格好いいところ、可愛いところに行きたいと思っています。うちのInstagramは現在、2400人のフォロワーがいます。どのタイミングで何を発信するのか、秩序を持たないと、フォロワー数は増えませんし、お客さまを驚かせることはできません。

反響として、市内から、焼肉店や中華料理店など名だたる飲食店オーナーさんなどが飲みに来てくれたり、「知人が大阪でいちばん美味しいと言っていたから」と口コミで来てくれる方も多いです。今、10投稿しかしていませんが、これだけの効果が出ているのは、見せ方や発信の秩序を保っているからだと思います。

今年は色んなことにチャレンジしていきたいし、チャレンジしないといけないと思っています。コーヒーを宣伝するのではなく、体験を売ることにフォーカスします。体験の中にコーヒーがある。そういう風に変えていかないといけない。よそのコーヒー屋さんは、既にスペシャリティコーヒーを知っている人に向けて宣伝する人も多いです。スペシャリティコーヒーを知らない人に美味しいコーヒーを伝えていかないと新規開拓はできません。なので「体験」を売っていく。未だスペシャリティコーヒーを知らない人に飲んでもらって、ファンになってもらう、その潜在ニーズを掘り起こしていかないといけません。

 

 

―――― 開業されて経験されたご苦労についてお聞かせください。

持続的に効果を発揮すること。持続的発展をどれだけ打ち出せるか、いかにして作っていくか。

もうひとつは、組織化です。いかにネガティブなエゴを捨てて、客観的に自分たちを見られるか。エゴにも、ポジティブなエゴとネガティブなエゴがあると思います。できない理由を考えるのはネガティブなエゴで、できる理由を考えるのがポジティブなエゴ。組織なので、自分ひとりですべてを考えるのではなく、各ポジションの人たちが生産性のあることを考えられるかどうかだと思います。組織としていちばんいいパフォーマンスができるように、各々がネガティブなエゴを解除しないといけないですね。そうすれば、自分たちの求めている姿を目指していくことができます。

 

 

―――― 新型コロナウィルス流行の影響はありますか?

コロナだから、お客さんが来ないとかではなく、新型コロナウィルスを発想の転換として捉えたほうがいいと考えています。ポジティブに何ができるかにフォーカスするべきではないでしょうか。

例えば、コーヒー豆のサブスクリプションや、体験を売ることが重要だと思っています。

今、オープン2カ月でサブスクリプションは約50件のオーダーをいただいています。これが100件、200件になれば、落ち着いた施策を打っていきます。本来したくないことを考えるのは、ネガティブなエゴです。本当の意味での解決にはなりません。

 

 

―――― ビジネスの面白さ、喜びについて教えてください。

心から「美味しい」といってくれる時ですね。いちばんだと思っていますから。結果を求めるのはビジネスだから、そこは求めないといけません。一人でも多くの笑顔を作ることができれば、自ずと結果は見えてくると思っています。

 

 

―――― コーヒー業界で活躍するうえで必要なことは?

自分はどうしたいのか、を明確に考えること。「コーヒー業界市場で何をなしえたいのか」、しっかりと答えを持ってから始めてください。どういう存在になりたいのか。例えば、ラテアートでチャンピオンになりたい、では自分の他のスタッフは育ちません。なので、視野を広く持ち「コーヒー市場」という規模で考えたほうがいい。今、働いている環境から逃げたくて、コーヒー屋さんを開業したいという理由なら辞めた方がいい、とアドバイスします。「コーヒー市場で」、何を成し遂げたいか?よく考えたほうがいいと思います。

 

 

―――― レコールバンタンキャリアカレッジへの入学を検討されている方にぜひ前向きなメッセージをお願いします!

迷うなら、入学しないほうがいいかもしれません。ひとまず小さくてもいいので、自分がこうなりたいというビジョンを持ってください。何でもいいと思います。自分はコーヒーが好きだからコーヒー店に勤めたい、人よりリードして勉強したいというビジョンがあるのなら、入るべき。やりたいこともないのに、「とりあえず勉強しようかな」は辞めたほうがいい。小さな夢を持っているのであれば迷わず、この世界に飛び込むべきだと思います。先ほども言いましたが、できるかぎり夢は大きく持ったほうがいい。夢を大きくもって、レコールバンタンという土に根を張ってみる。根が深く張ったときに、植えた苗は大きく育つと思います。夢をでかく持って、入学してください。

 

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<SHOP INFO>

TERRA COFFEE ROASTERS

https://terracoffeeroasters.earth

@terracoffeeroasters

新千里東店(大阪・千里中央) 10:00-18:00 ( LO.17:30 ) 毎週火曜定休日

江坂公園ROASTERY(大阪・江坂) 毎週月曜定休日

 

 

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