<卒業生インタビュー>HanaCAFE nappa69オーナー 佐藤菜穂美さん
「ウィズコロナ」の時代。
外食産業を担う卒業生たちは、今どのような心持ちでビジネスをしているのでしょうか?
最前線で活躍されている卒業生にヒントをもらうべく、「HanaCAFE nappa69」「KOSUGI CAFE nappa69」オーナー佐藤 菜穂美さんにインタビューを行いました。
<在校中について>
―――― レコールバンタンキャリアカレッジでのコース名、卒業年次を教えてください。
す。
2009年、10月カフェオーナーコース(現:飲食店開業コース)に入学しました。半年間のコースで、3月に卒業しました。入学したときは44歳でした。
―――― クラスは何名でしたか。スケジュールも教えてください
20名くらいでしょうか。システムエンジニアなど、お仕事をされている方が多かったですね。
―――― 入学のキッカケは?
36歳まで専業主婦だったのですが、そのままで終わりたくなくて。生け花を習い、37歳のとき生花店で働き始めたました。花屋さんで働いていたときに、花束を作っている時間はお客さまを待たせてしまうので、コーヒーを片手にゆったりした気持ちで待っていっていただける場所を作りたいなと思ったのがキッカケです。
お店を開くと決めてからは、鎌倉など色々なカフェを巡り、花屋さんが併設されているカフェを周りました。いざ「やろう」と思ったときに、カフェのことを何も分からないのにこのまま始めていいんだろうか?と思い、開業に特化した専門校を検索しました。
―――― レコールバンタンキャリアカレッジ校を選ばれた理由を教えてください
決め手になったのは、学びたいことがギュッと詰まっているカリキュラムですね。分かりやすい内容にまとまっていると感じました。
―――― 印象的だった講師、授業は?
特に印象的だった授業は、実際に講師が開業している店舗へ行き、厨房の中を見せてくれたりしましたね。
私たち在校生が、カフェに対して夢見がちな視点を持っていたのに対して、野菜をどこで買うかなど現実的な話をしてくれました。
紅茶は、「ドリンクの魔術師」と呼ばれる江沢講師でした。シェイカーの振り方がとっても格好よくて、ティーカクテルの作り方など、ドリンク全般を教えていただきました。
調理の手塚講師にも大変お世話になりました。とても優しく、基礎から教えてくださったので有難かったです。手塚講師に教えていただいたハンバーグは、HanaCAFE nappa69の定番メニューです。専業主婦だったので、普通の焼き方は知っていましたが、油でコーティングしてオーブンで焼くとふんわりジューシーに仕上がるなどプロの技術を知りました。ベシャメルソースも手間を惜しまず作る方法を教えていただき、こうして長く続けさせていただいていると思います。手塚講師にもお礼を伝えたいですね。
―――― レコールバンタンキャリアカレッジでの学びが「実践的だった」「今のビジネス」に繋がっていると感じることは?
エスプレッソ、ラテ、ラテアートなど何度も何度も練習したので、技術が身に着きました。正直、当時はコーヒーを飲むのもイヤなくらい練習しました(笑)HanaCAFE nappa69でもエスプレッソマシーンは毎日使っていますので、学んでおいてよかったなと思います。
―――― 印象的だったイベント、販売実習などはありますか。
半年コースは、なかったんです。最後に、各自が開業するカフェのイメージを発表する授業は印象に残っています。私は、カフェに水槽を置いて、泳ぐたこくらげを見ながら食事ができる「くらげカフェ」を提案したのですが、評価がとても低かったのを覚えています(笑)
―――― 在学中、アルバイトなどで飲食業界の経験をされていましたか?
花の仕事をしていましたが、お店を始めると決めてから、オフィスビルのカフェでアルバイトしました。モーニングとランチタイムに入りましたが、そのおかげで「ビジネスマンのお客さまがどういうシーンで認めてくれるか」が分かったと思います。
同じお客さまがいらっしゃるお店だったので、新人の私が入ることで、お店の動線が崩れてしまうこともありましたが、どんなコーヒーを飲まれるのかを覚えるようにしました。お砂糖を出すのか、出さないのか、ミルクを出すのか、出さないのか、小さなことを積み重ねていくと変化が起き、お客さまとコミュニケーションを取ることで認めてもらえるようになりました。それはすごく喜びでしたね。
<卒業後について>
―――― 開業された経緯をお教えください。
2010年3月に卒業して、プレオープンは8月7日、1週間後の8月14日にオープンしました。
―――― 開業された時期、場所、店名、コンセプトなど、こだわりをお教えください。
<店名・コンセプト>
「頑張っている人を応援したい」という気持ちがあります。なので、不足しがちなお野菜も豊富に使っています。
名前は「Hana cafe」ではシンプルでつまらないと言われたので、インパクトのある名前にすべくサブタイトルを付けました。nappaはなおみなのあだ名でメールアドレスにnappa69が入っていたのを見た主人が「つけたらいいじゃない?」と言われて。69は6月9日生まれのことだったのですが、無休という意味もあります(笑)。
<デザイン>
最初の花のロゴは、自分で決めました。KOSUGI CAFE nappa69のイラストは、地元のイラストレーター・福田希美さんにデザインしていただいた案から選びました。
<場所>
川崎や武蔵小杉なら知人も多く、みんなが集まりやすいと思いました。物件を探すなかで、東横線沿いもいいなと思いました。武蔵小杉は、南武線も走っていますしね。ただし、当時は武蔵小杉の都市開発が進んでいたこともあり、いい物件がありませんでした。白楽にも候補の物件があり、リノベーションしようか悩みましたが、学生街なのでランチの価格が500円と安くて断念。
隣町の新丸子に足をのばしたところ、個人経営のお店が多く、味わいのある街でした。小さな路地を入っていったところに、古民家付きの土地が売りに出ていたんです。とたん屋根の、なんとも地味な建物でしたが味わい深く、主人と一目惚れして決めました。
―――― KOSUGI CAFE nappa69を開店された経緯は?
ウチの常連様に、サードアベニューの理事長をされている方がいらっしゃるんです。開発組合さんが、サードアベニューを建設する際、HanaCAFE nappa69で立食パーティをしてくださり、そのご縁で声を掛けていただきました。
大きな施設ですが、チェーン店だけではなく地元のお店も入れたいと。「小杉の街を元気にしたいと思っていて、もしよければ入ってみませんか」とおっしゃっていただいたんです。丁度、2店舗を開けたいと思っており、とんとん拍子で進んでいき、2020年11月にオープンしました。大きなチェーン店は断念したりしていましたが、私たちは怖いものがないので不安はありませんでした。また、店舗オーナーさんがうちの常連さんというこもあり、見守られている感じ、バックアップされている感じがあり心強かったです。
武蔵小杉店の店舗デザインは、元スタッフの女性の旦那様にお願いしたり、古民家で個展を開いてくださったイラストレーター福田希美さんにカフェの壁画をお願いしたりしました。新丸子は古民家カフェ、武蔵小杉はスタイリッシュな感じで、その街その街に合う店舗にしています。
<客層>
20代~60代の女性が多いですね。KOSUGI CAFE nappa69は、高層マンションも多いのでファミリーの方もいますし、ジム帰りに寄ってくださる方も。武蔵小杉と新丸子、両方に来てくださる方もいらっしゃいます。
新丸子は、コンセントのある電源席もあり、お仕事をされるに来る方もいますよ。急かすこともないので、自分のペースでお仕事をしていたいだてウェルカムです。
―――― 特にオススメのメニューについてお教えください。
<KOSUGI CAFE nappa69>
「なっぱご飯プレート」は、皆さま大好きで、人気が高いです。三種のお惣菜がついていて、お野菜たっぷり。サラダには自家製ドレッシングを使っています。
武蔵小杉は月2回ほど内容を変えています。武蔵小杉カには同じフロアにスポーツクラブがあるので、炭水化物を極力なくした「ワークアウトプレート」をお出ししています。ビーツのベーグル、低温で火を通した鶏もものソテーなどヘルシーで、女性からも人気が高いです。
<HanaCAFE nappa69>
こちらも人気があるのは「なっぱご飯プレート」ですね。1週間ごとにメニューを変えています。季節ごとのスイーツも支持されています。季節によってコーヒーを変えています。今なら、なめらかな味わいの「あじさいブレンド」をお出しています。オーガニックブルーべリーを使ったレアチーズケーキとのマリアージュを楽しんでほしいですね。
主人がコーヒー大好きなので、今は「ロースタリ―」をやろうと思い、店舗を探しているところなんですよ。コーヒーも好きですし、ワインも好きなので、人生が楽しいです。また、美味しいものが好きな人間が繋がっていくのも面白いです。
―――― 開業されて経験されたご苦労についてお聞かせください。
全部手作りなので、エネルギーは必要です。週1日、お休みをもらっていますが、お店は無休で営業していますしね。上の人間が頑張っていないと誰もついてこないと思っています。
開業するときに「泣き言は言わない」と、主人と心に決めましたが……。
空間を楽しみにきてくださっている方が多いけれど、それを台無しにしてしまうような人を入店させてしまったときは悲しいですよね。怒鳴る人とか、激しく文句を言う人とか……「このお客さまを入れちゃいけない」と見極める力、選別する力は必要です。
もうひとつ、開業当初は食べログの評価は付いてまわっていました。SNSで良い反響もあれば、苦情のメールやコメントもあります。きたクレームに対してスルーするとそこに誤解が生まれてしまうことも。なので、正々堂々と対峙するようにしています。
オープン当時、書かれたことに傷つきながらも、真摯に受け止めて改良してきました。例えば「サラダボウルの器が小さい」というコメントから器を変えたこともあります。心無い言葉は傷つきますが、10年も経つとありがたいことの方が多いですよ。
―――― 新型コロナウィルスの流行で、工夫された点、心がけていらっしゃることについてお教えください。
2020年に新型コロナウィルスが流行して、すぐにテイクアウトを始めました。営業時間短縮になり、大変でしたが同時に「どうすればいいだろう?」と考えました。容器を考えて、テイクアウトできるメニューを出そう!と動き、SNSにアップするようになりました。検温も徹底し、手洗いうがいもし、席数も減らして、安全・安心な環境を整えています。「ここまで徹底しているから、来店する」というお客さまも多いですね。
お店では1320円でお出ししているお弁当を、まったく同じ内容で1000円+消費税で出しています。武蔵小杉の店舗では高く設定できたのですが、新丸子は値段を上げていていいタイミングを失ってしまっていました。1年近く続けてきましたが、最近1200円に価格変更させていただきました。それでも、文句を言われたことはありません。なんでも素直に言ってみるものですね。
―――― 宅配プラットフォームが数多くある中で、どのような基準で選ばれましたか?
話をして、いいなと思ったところです。店は、流行していたUber Eats、水色が可愛いのとフィンランドが好きなので、Woltを選びました。
HanaCAFE nappa69では、フードネコを始めたつもりでした。近所に、猫ちゃんがうろうろしているので、イメージもピッタリだと思っていたのですが、foodpandaが広まってきて……フードネコはサービスを終了してしまったそうなんです。なので、最近はfoodpandaになりました。
どのプラットフォームの配達員さんが来ても、ちゃんと届けてほしいので、店先まで出て「どうぞよろしくお願いします」「しっかり届けてください」とお伝えしています。
―――― 飲食業の面白さ、喜びについて教えてください。
自分たちが成長していくことによって、夢が広がっていきます。コンセプトを変えず、土台を変えずに、それをもとにどんどん成長していけるところが喜びです。メニュー構成にしてもそうですし、2店舗目をオープンできたこともそうですね。
もうひとつは、繋がりによって世界が広がるところ。本当に、人が大切です。いいスタッフを入れるかによって世界が変わります。飲食経験が豊富な方なら、その方の知識や経験がお店に活かされていきます。なので、頑なに自分の意見を通すのではなく、柔軟な姿勢を持ち、意見に耳を傾けることも大事。スタッフの才能や人柄を十分に活かせる経営ができると、喜びを感じます。
―――― 飲食業界で活躍するうえで必要なスキルは?
HanaCAFE nappa69でいえば、コミュニケーション力が重視されていると思います。新丸子にはレコールバンタン高等部生のまゆさんが、KOSUGI CAFE nappa69店長は、レコールバンタン卒業生の小川まみさんが務めています。カフェへの興味、意欲がある方たちで、お店でも活躍してくれています。
―――― レコールバンタンキャリアカレッジへの入学を検討されている方にぜひ前向きなメッセージをお願いします!
私は本当に入って良かったなと思います。学費はかさむかもしれませんが、その分努力をして学びを吸収すれば次のステップに必ず繋がると思います。
学校も、卒業後は手放しで送り出すのではなく、パンフレットにも掲載していただいていたり、サポートしてくださっています。卒業後も、相談すれば温かく協力してくださいます。一歩踏み出してみましょう!
<HanaCAFE nappa69>
http://www.nappa69.com/index.html
神奈川県川崎市中原区新丸子東1丁目983-1
<KOSUGI CAFE nappa69>
神奈川県川崎市中原区小杉町3-600 Kosugi 3rd Avenue 2F