<卒業生インタビュー>Garlicplus オーナーシェフ 小林武史さん
「ウィズコロナ」の時代。
外食産業を担う卒業生たちは、今どのような心持ちでビジネスをしているのでしょうか?最前線で活躍されている卒業生にヒントをもらうべく、Garlicplusオーナーシェフ 小林武史さんにインタビューを行いました。
<在校中について>
――――― レコールバンタンキャリアカレッジでのコース名、卒業年次を教えてください。
飲食店開業コースで1年間学びました。2016年9月卒業です。
――――― クラスは何名くらいでしたか。またスケジュールも教えてください。
週に1回日曜のクラスで10名くらい。授業は朝9時~夜18時頃まででした。入学したのは45歳のときです。
――――― レコールバンタンキャリアカレッジ東京校を選ばれた理由を教えてください
開業を目指していて、調理学校やセミナーを調べていました。開業までのサポート、調理、プランニング、プロモーションまで各分野のプロフェッショナル講師の手ほどきを受けられるのが良かったです。
――――― 学びたい、身につけたい目標は何でしたか。
ペペロンチーノで勝負していくことは、入学前から考えていました。ただ、飲食経験もないので、ベースの知識を身に着けておきたかったんです。飲食店での修行も考えましたが、仕事は辞められないと思い、スクールで学ぶことにしました。
――――― 印象的だった講師、授業は。
調理・船木講師、ドリンクは江沢講師や佐藤宇宙講師が印象に残っています。江沢講師にはアルコールからコーヒーまでいろいろと勉強させてもらいました。
また、宮崎講師には、漠然とした「お店を開きたい」イメージではダメで、どういうお店なのか、コンセプトを明確に出さないといけないと教わりました。その教えに共感し、信頼できたので、卒業後はコンサルティングを依頼しました。
まずは、味の部分。自分で作るペペロンチーノは美味いと思っていましたし、家族と知人は「美味しい」と言ってくれました。ただ、お客さんに受け入れられるかは不安でした。宮崎講師に実際に食べてもらい「都内でもやっていける」とお墨付きをもらったことも自信になりましたね。宮崎講師には、店舗設計、厨房機器の選定、スタッフのオペレーションに至るまでアドバイスをいただきました。また、宮崎講師の繋がりで色々な仲間と出会えたのも良かったです。開業時期も近く、地元の仲間でもある「PORK KITCHEN UMBICO GRILL」オーナー石毛さんや、「山ごはんカフェ ヒノハラテラス」オーナー嶋崎さんとも知り合うことができました。目標を持って頑張っている仲間がいることは心強いです。
――――― レコールバンタンキャリアカレッジでの学びが「実践的だった」「今のビジネスに活かされている」と感じることはありますか。
カリキュラムが、「ただ美味しいものを作る」だけではなく、飲食店で提供すること想定としたカリキュラムが良かったです。開業までのベースを学べたので、すごく勉強になりました。
他の調理学校は、グループで手分けしてひとつの料理を作るところも多いですが、自分ひとりで仕込みから盛り付けまでを一貫してできるも魅力だと思います。
――――― 印象的だったイベント、販売実習などはありますか。
卒業実習では、クラスメイト8名でコース料理を提供しました。前菜、メイン、デザート、ドリンクを提供しました。8人の卒業生でコンセプトから考え、調理はもちろん、当日は厨房、接客に分かれて営業しました。自分はメインのミートボールを調理しました。一定時間内に、複数のお客さまに同じクオリティのものを出すのは初めてだったので、経験しておいて良かったです。
――――― 在学中、アルバイトなどで飲食業界の経験をされていましたか?
高校時代にフレンチレストランでアルバイトしていました。「格好いい仕事だな」という印象はずっと抱いていましたね。
<卒業後について>
――――― 開業された経緯を教えてください。
開業以前は、放射線技師をしていました。レントゲンを取る仕事です。経済的に安定はしてはいたけれど、自分で何かを作り上げたいという気持ちがありました。
お店の看板である「ペペロンチーノ」は、10年ほど前から大好きだったんです。トマト系、クリーム系は美味しいお店が多いけれど、「ペペロンチーノだけは、本当にうまい店が少ない」と感じていて、なかなか理想の味に出会えなかったんです。それなら、自分で作ればいいんじゃないか?と思い、ニンニクや麺にこだわって趣味で作っていました。試行錯誤していたら徐々に美味しいものができるようになったんです。
ある程度、年齢を重ねていって「これからも、この職業を続けていくのか?自分のお店を持つのか」と自問したときに、独立したい想いが強くなり、ペペロンチーノ専門店を開こうと決めました。
――――― 場所、店名、コンセプトについてのこだわりを教えてください。
<場所>
父が整備工場をやっていて、その敷地です。父もスタッフも高齢になり工場を閉じたので、立地については決まっていました。
<店名>
食材にアクセントとしてガーリックを足すのではなく、ニンニクがメインです。なので、ガーリックが主体という意味で、「ガーリックプラス」にしました。「ガーリック、ガーリック」も候補でしたが、既に同じ名前の店があったので候補から外しました。
――――― ペペロンチーノのこだわりについて教えてください。
ウチのペペロンチーノは、ニンニク、麺、塩、パスタの茹で汁、唐辛子のみで作っていて、ダイレクトにニンニクの美味しさを味わうことができます。長い試作の過程では、コンソメや調味料を入れたりしていましたが、最終的にはどんどんシンプルになっていきました。
<ニンニク>
ペペロンチーノを作るにあたり、ありとあらゆるニンニクを試しました。スペイン産、アメリカ産、韓国産……。国産も、宮城産、香川産、などいろいろ使いましたが、青森産を取り寄せてみたところ、いちばん甘みとうまみが強かったんです。そこで青森に行って、農家さんに会いに行きました。「にんにく収穫祭」というイベントに行ったんですが、会場から少し外れた場所で、スキンヘッドの農家さんに会ったんです。宮村さんという方で、ふとレコールバンタンキャリアカレッジの同級生で野菜の仕入れをしている高橋さんが、「宮村さんのニンニクを扱っている」ことを思い出しました。思い切って話しかけてみると、有機肥料、無農薬でニンニクを栽培している方でした。実際に宮村さんのニンニクでペペロンチーノを作ったところ、他の青森県産ニンニクに比べても味が格別に良かったんです。すぐ、宮村さんに連絡して、「専売で卸してもらえないか」と交渉しました。他のニンニクとは一線を画します。
<パスタ>
開店前は、乾麺と生パスタ、どちらを使うか悩んでいました。ペペロンチーノは麺とオイルの絡みがあるので、個人的には乾麺のほうが勝っていると思いました。
あるとき、フードショーで「淡路麺業」の麺を試食したところ、乾麺に非常に近い味わいの生パスタに出会ったんです。生パスタですが「これならいけるかも」と思いました。讃岐うどんのようなツルツルののど越しをパスタで再現しようと開発されていて、歯応えとモチモチ感が格別でした。
女性スタッフを集めて、乾麺と生パスタを試食してもらったのですが、満場一致で生パスタが支持されました。ランチをメインにやるお店としては、女性の意見は絶対です。乾麺と生パスタ2本立てにして、お客さんに選んでもらうスタイルも考えましたが、オペレーションが複雑になるので、生パスタ1本で勝負することにしました。
<スイーツ>
ウチは、生パスタとカフェがコンセプト。ペペロンチーノを食べた後は、甘いものを食べたくなる方が多い。なので、ガトーショコラとバスクチーズケーキを2枚看板で出しています。スイーツは船木講師からいただいたレシピで作っていますが、どんどんブラッシュアップし、砂糖は当初の3分の1くらいに抑えています。甘すぎず、コクがある味わいで「パティシエが作るケーキより美味しい」というお褒めの言葉をいただくことも。近隣のジェラート屋さんからジェラートも卸してもらっています。
――――― 特にオススメのメニューについて教えてください。
夜のメニューでは、アヒージョや、ケイジャンスパイスを使った「ガーリックシュリンプ」丼、牛肉をニンニクコンフィに漬けたローストビーフが人気です。
料理のベースになるのは、ニンニクをみじん切りにして、オイルで1時間ほど煮る「ニンニクのコンフィ」。えぐみが飛んで、ニンニク臭さも軽減されています。ウチの料理はニンニクを使っていますが、お客さんからも「臭さがない」「胸やけしない」と評判がいいです。
――――― 開業されて経験されたご苦労について教えてください。
悪いクチコミを見つけると凹みますね。あとは、サラリーマン時代と比べると拘束時間は長い。雑務が多いので朝早くから夜遅くまで働く日もあり、体力的にはキツいときがあります。もうひとつは、客足が読めないこと。30人来る日もあれば、5人しか来ない日もあります。お客さんが一桁だと、「明日もこれだとどうしよう」と不安になります。3年目になりますが、客数が読み切れないところは大変です。
――――― コロナウィルスの流行で、工夫された点、心がけていらっしゃることについて教えてください。
緊急事態宣言発令時は、テイクアウトのみの営業でした。想定外のことで、準備も何もしていなかったので……。ウチで、テイクアウトできるものは何だろうか?と考えました。2020年の緊急事態宣言発令時は、ペペロンチーノ、ナポリタンを、伸びにくい方法で調理し、提供していましたね。ローストビーフ丼とガーリックシュリンプ丼など、少しずつレパートリーを増やしていきました。
換気、消毒を徹底して通常営業に戻りましたが、二度目の緊急事態宣言が発令されたとき、パスタのテイクアウトメニューを行うことには抵抗がありました。調理法を工夫しても、伸びやすいので……。そこで代わりになるものを考え、ニンニクをしっかり使った「ガリプラサンド」を始めることにしました。ローストビーフサンド(700円)、生ハムサンド(650円)、スモークサーモンサンド(650円)、ポテトサラダサンド(540円)など常時4種類ほど揃えています。インスタメインで宣伝していますが、お客さんの反応も上々です。
――――― 飲食ビジネスの面白さ、喜びについて教えてください。
ダイレクトにお客さんの反応が見られることは、原動力だと思います。SNS時代なので、クチコミでいいことを書いてもらえると嬉しいです。他では味わえない喜びだと思います。
――――― 飲食業界で活躍するうえで必要なことはどのようなスキルでしょうか?
自分のお店を経営されるなら、ブランディング、コンセプトはすごく大切です。ルイ・ヴィトンやロレックスは唯一無二ですよね。飲食店においても、この店だから行きたいというお店にしないといけません。どこにでもあるカフェや飲食店は生き残っていけません。「ペペロンチーノが食べたいから」、「スタッフさんやオーナーさんの人柄がいいから」など、行きたいと思われる魅力を作れるといい。武器は多ければ多いほどいいと思います。
――――― スタッフさんは何名ですか。採用基準は。
スタッフは10名ほどで、店は常時2~3名ほどで営業しています。面接で見るのは、作り笑いでなく、綺麗な笑顔の人。うちのコンセプトが「元気になるお店」なので、明るさと笑顔は大切です。
――――― レコールバンタンキャリアカレッジへの入学を検討されている方に、ぜひ前向きなメッセージをお願い致します!
経験がなく、これから開業したい方にとって、今の仕事を続けながら学べるのは、時間的にもスキル的にもいちばんの近道だと思います。
僕自身も、入学前は開業する意思はあるものの思っているだけで、なんの行動も起こしていませんでした。入学したことが飲食業界への一歩になったと思いますし、イメージがより具体的になっていきました。講師の方々も、お店を持っていたり、現役のコンサルタントをしている方ばかりなので、現実に即したお話が聞けるのが良かったです。
迷っているなら「やってしまおう」!
小林さん、ありがとうございました!
Garlic plus
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