21.03.12 24.04.01 更新

<卒業生インタビュー>「TARO’S COFFEE ROASTERY」 オーナー 松村吉太郎さん

学生インタビュー
卒業生
東京校

「ウィズコロナ」の時代。

外食産業を担う卒業生たちは、今どのような心持ちでビジネスをしているのでしょうか?最前線で活躍されている卒業生にヒントをもらうべく、TARO’S COFFEE ROASTERY オーナー 松村吉太郎さんにインタビューを行いました。

 

松村様プロフィール.jpeg

 

<在校中について>

―――― レコールバンタンキャリアカレッジでのコース名、卒業年次を教えてください。

2014年10月にカフェオーナーコースに入学し、2015年3月に卒業しました。1963年生まれなので、51歳のときです。

 

―――― レコールバンタンキャリアカレッジを選ばれた理由を教えてください。

飲食に関わる仕事を、漠然とやりたいと思っていました。30代のときから、趣味として焙煎を始めていました。でもアルバイト以外では関わってきていませんでしたし、それまで働いていたのも飲食とは関係がない業界でしたので、「どうしよう」と迷っていたんです。「50歳すぎてコーヒー屋さんでアルバイトから修行するのは、難しいのでは?」と思っていました。そこで、プロの方のお話を聞けて「経験を買う」という認識で、学べる場所を探していました。インターネットでレコールバンタンキャリアカレッジのことを知り、日曜日だけで学べるなら、と決めました。

 

―――― 学びたい、身につけたい目標は何でしたでしょうか

開業できるような知識と技術です。

 

―――― 印象的だった講師、授業はありますでしょうか

エスプレッソは篠崎講師、調理は船木講師、経営は宮崎講師とAKIRA講師。授業が分かりやすかったです。

特に、ドリンクの江沢講師は、スピーディで格好よく、立ち居振る舞いも計算し尽くされていました。説明もよどみなく、話の内容も濃くてとても印象に残っていますね。

宮崎先生は、「カフェの6次産業化」について説かれていました。コーヒー豆の生産から、末端であるカフェユーザーにサービスを提供し価値を高めていく、という考えを学び、意識が変わるキッカケになりました。コーヒーの豆からカップまで、すべての段階を理解することで、コーヒーの生産過程への興味も高まったと思います。

 

―――― レコールバンタンキャリアカレッジでの学びが「実践的だった」「今のビジネス」に活かされているなと思うことはありますか?

仲間の影響は大きいです。

学生の中でも、開業へのモチベーションの高さや、スクールとの関わり方は人それぞれでした。具体的にお店も持ちたい人も、とりあえず勉強したい、という人もいました。

在学中から店舗を取得している人もいて、そういう方たちと接したことで「私自身が、考えながら授業に関わっていかなければ無駄になる」と感じました。

例えば、立川のAdam's Awesome Pieオーナー根津さんは、在学中から動かれていて、事業規模やスケールも桁違いに大きく驚きました。

カフェオーナーの趣旨にそった形で成功された方もいらっしゃいます。名古屋で歌謡曲バーを開業された伊藤さん、谷中にマフィンやお菓子のカフェをオープンした佐藤さんなど、仲間の繋がりは今でもいい刺激になります。

特に根津さんは、コロナ禍で大変な時も、顔見知りのお店を訪ねてコミュニケ―ションを取り、周りを気遣っていて感心しています。そんな姿を見て「自分も頑張らなきゃ」と思いますね。

 

―――― 在学中、アルバイトなどで飲食業界の経験をされていましたか?

レコールバンタン在学中は、民間の臨床検査の会社に勤務しながら日曜日の午前午後の授業を受けていました。

大学生時代は「甘栗太郎」で、焙煎した栗を販売していました。面白い会社で、甘栗を選別し、機械に入れて焙煎し、販売します。最後に、日報を書くことまでをトータルで任せてもらいました。極小店舗をワンオペで回した体験というのは、商売の原体験であるような気がします。

 

<卒業後について>

―――― 開業された経緯をお教えください。

焙煎したコーヒーを、家族や友人に飲んでもらい、みんなから「美味しい」と言ってもらえるのが嬉しかったです。コーヒーを通して、人との関わり合いを仕事にしていけたら素敵だなという想いが募っていきました。

開業のキッカケは、半年間レコールバンタンキャリアカレッジで学んだことが大きかったように思います。

 

―――― 開業された時期、場所、店名、コンセプトなど、こだわりをお教えください。

オープンは、2018年6月です。在校中の2014年に、今も店舗で使っている焙煎機を思い切って購入しました。しかし、どんな営業形態にするかは迷い続けていました。自家焙煎カフェも想定していたものの、なかなか踏ん切りがつかず卒業後2~3年を過ごしました。「今の仕事を辞めて、収入が途絶えたらどうしよう」という気持ちや、妻の声もあり、グズグズしていました。しかし、焙煎の練習は続けていました。開業のキッカケは、前の仕事が上手くいかなくなり、焙煎機も買っていたのでいよいよ営業せざるをえない状況になったこと。焙煎機は置いておくだけでも費用がかかりますから、環境に尻を叩かれた感じです。以前、焙煎機を置いていた場所から移転し、ロースタリ―&コーヒースタンドを開くことにしました。

<場所>

立川を選んだ理由は、住んでいたこともあって土地勘があること、自家焙煎する店が少なかったから。交通の要所で、昼間はとても人口が多い街です。自宅は八王子なので職場へのアクセスもいいです。

物件は、立川から徒歩7分で、住宅地と商店街の間のような場所にあります。商店街からは少し外れても、お客さんは色々な手段で呼ぶことができます。時間がない状況でしたが、必死で探し、なんとか見つけました。物件選びのセオリーに照らすと、あまり適していない場所なのかもしれませんが、インスタグラムで「立川 コーヒー」で検索すると、すぐにヒットしますよ。

 

内観.jpg

 

<店名・コンセプト>

名前が吉太郎ということと、秘密基地のような場所にしたかったので「コーヒー基地」という名前も考えていました。しかし、似たような名前が近隣の地域にあったので、シンプルにタローズコーヒーとしました。キチタロウだと長いので、「タローズ」で呼びやすくしています。

<デザイン>

ロゴのデザインは、自分で作っています。ペイントツールで、ワインレッドの焙煎機を象ったものを作りました。インスタグラムに上がっているものは、日曜日だけアルバイトに来てくれている美大生のバリスタ・手塚くんが作ってくれました。

<手塚くんのこと>

高校生のときから、イベントでお店を出してコーヒーを淹れているような人で、コーヒースタンドやコーヒーショップ巡りも熱心にしています。高校生のときからコーヒーを研究していて、私が何も教えなくとても立派に淹れてくれます。出会ったときは衝撃でしたね。一緒に仕事をしたいと思い、日曜日限定で店頭に立ってもらっています。メニューは、ドリップコーヒー(380円)とカフェオレ(アイス・ホット)(420円)です。

<生豆>

生豆は、複数の専門商社さんから取っています。ワタルコーヒーさん、ユーエスフーズさん、海ノ向こうコーヒーさんなどです。常にアンテナを張って、サンプルを取り寄せ、カッピングをしてから決めています。

<焙煎機>

使い込まないと、良さも悪さも分かりません。機能は、どれも一長一短です。メンテナンスに困らないことを重視し、アメリカのディードリッヒ社の焙煎機を選びました。

焙煎機は車と似ていて、機能性だけでなく雰囲気も大事。自分が使うなら、これしかないと思いました。いちばん長く使えるのが良く、焙煎機が醸している雰囲気にものまれてしまいました。

焙煎は講師の方がディスカバリー焙煎機で研究しているのを在学中見させて頂いたことがあります。

それ以外は、独学です。焙煎機を決める過程で、株式会社富士珈機さんが月イチでセミナーを開いていたので2~3回参加しました。

<客層>

高校生から、20代、上は60代、70代の方もいます。地元の方だけでなく、SNSで見つけて来てくださる方も多いです。

 

―――― 特にオススメのメニューについてお教えください。

いちばん人気は「グアテマラ エスペランサ農園 パカマラ種(大粒)」。お客さんのほうから品種を指定されるというよりも、自分の中のイチ押しです。豆の品質も良く、焙煎も美味しくできたものをオススメするようにしています。豆を焙煎したら、SNSのストーリーでお知らせしています。オススメのコーヒーとして売ると、気に入っていただけて、また人気が出ます。自信をもってオススメすると、相手にも伝わるんですよね。

もちろん、すべてがお客さんの好みに合うわけではありませんが、最大公約数的なものはあります。美味しい豆を選んで、焙煎も美味しくできて、太鼓判を押すと、お客さんの反応も相まってどんどん人気になっていきます。

 

―――― 開業されて経験されたご苦労についてお聞かせください。

物件選びから、お店を作って開業するまでは順調に進みました。ただ、いざお店を開いたときに、広報とか宣伝とかいった面が弱かったと思います。反省点に近いですね。

普通であれば、ネットで発信する、広告を打つなど宣伝に力を入れるものですが、そこに注力せず最初はお客さまが集まりませんでした。お客さんが一日1人という時期もあり、開店直後は寂しい日々を過ごしました。焙煎の腕もテクニック的にも十分でないのに、お客さんが殺到して、不十分な品質の豆を出してしまったら……という消極的な想いもありました。あまりにもゆっくりと始めたものですから、集客ができず苦労しましたが、インスタグラムに力を入れると、徐々に効果を感じるようになりました。

 

―――― 新型コロナウィルスの流行で変化はありましたか?

2020年の緊急事態宣言中、カフェは営業していないところが多かったです。コーヒーが飲めるお店が少なく、“コーヒー難民”になってしまった方が、「どうしても飲みたい」と、ウチを探し出し訪ねてくれるようになりました。コーヒースタンドは狙った訳ではなく、たまたまでしたが、世の中の傾向がウチに合ってきたという実感はありました。飲食は店内のみだったお店が、最近ではスタンド業態に変えたりもしています。世の中の流れに合致すると、売り上げにも反映されます。今後は、オンラインにも力を入れていきたいです。

 

―――― 飲食ビジネスの面白さ、喜びについて教えてください。

人と人とが交差するところで、出会いが生まれる。小さな感動が数多く、自分の目の前で展開されることです。飲食店は、人と人が出会い、交差する場所なのではないか思います。交差することで、何かが生まれるという面白さがあります。

ウチの場合、お客さんとお客さんが繋がるという偶然がけっこうありますね。遠くから来た人が写真を撮ったりして「どちらからいらっしゃいました?」と話をしながら、触れ合う現象です。そこにSNSが絡んで、人と人、情報と情報が絡んでいき、さらに情報が現実にも絡んでいく……という交差が面白い。それが許される社会状況ですし、開放的な現象だと思います。写真を撮影して発信してくださる方には、こちらも後ろ姿を撮影させてもらって、タグ付けしたりもしています。

 

―――― 「シェアロースター」をされているとうかがいました。どのような取り組みなのでしょうか?

ディ―ドリヒの業務用焙煎機を、店舗や焙煎機を持たない方に貸し出しています。焙煎機は手に入れるために相当な費用が必要です。まったく使わない日があるので、焙煎したい意欲の高い方に貸し出すことにしました。借り手には、簡単なレシピを提出してもらい、私もマシーンの使い方を教えるので、お互いにWIN-WINです。

 

―――― 大変さはどのようなところでしょうか。

大変さはあまり感じません。強いていえば、美味しいか美味しくないかを見極めるために自分の舌を鋭くしていないといけない。些細な味の変化は、味覚を集中しないと見分けられないので、常に味覚のセンサーを磨いていないといけません。日々、自分が焙煎したコーヒーをカッピングしています。毎日、毎日、口にして微妙な変化がないか?鮮度は落ちていないか?をチェックすることを怠りません。当たり前ですが、コーヒーのことを四六時中考えています。でも、自分の店なので大変だとは思いません。

 

―――― 飲食業界で活躍するうえで必要なスキルは?

商品自体が美味しくて、一定レベルに達していることは当たり前。あとは、情報発信する力、人と人のコミュニケーションを取る能力。大切なのは、怠らず情報発信を続けること。

お客さまは、正直だけれど、時に正直でないところもあります。美味しくないとか好みではない、とハッキリ言っていただけないことも多い。友人、知人が肯定的に受け止めてくれても、裸の王様になりがちです。だからこそ、自分の中の美味しい、美味しくない、の基準を持っておかないとなりません。

 

―――― レコールバンタンキャリアカレッジへの入学を検討されている方にぜひ前向きなメッセージをお願いします!

入学するときに、具体的に「開業する」「飲食業界に飛び込む」という気持ちで入るといいと思います。意識を持っていると、その分、学びが深く刻まれます。私自身、もう少し問題意識を持っていれば、料理にも取り組めたかなと思います。実際にお店を始めて、毎日の営業が力になっていることを考えると、日々の実習もそうで、ただ講義を受けるのではなく、「自分のお店だったらどうするか」という意識を持つことが大切だと思います。自分の姿に置きかえて学ぶと、知識や経験となって残ると思います。

 

 

松村さん、ありがとうございました!

 

外観.jpg

 

TARO’S COFFEE ROASTERY

立川市曙町2-25-2

090-5206-6911

11:00~17:00

月曜定休

@taroscoffeeroastery

シェアする