23.01.21 24.04.01 更新

<卒業生座談会> 林檎と紅茶と オーナーパティシエ居石和恵さん&カフェ専門家・中島講師が明かす、「繁盛する飲食店」のつくり方とは?

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レコールバンタンキャリアカレッジでは、開業に必要とされる実践的授業を行っています。

今回は、年始に行われた入学前授業をレポート。スピーカーは、レコールバンタンキャリアカレッジOBで2022年7月に、東京・椎名町に「林檎と紅茶と」(@ringo.to_koucha.to)をオープンされた居石(すえいし)和恵さん。そして、カフェ専門家としてご活躍され、主に開業コースを教える中島誠講師です。

 

 

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  1. 居石和恵さんプロフィール>

カフェや、紅茶とタルト専門店にて、製菓を担当。その後、結婚・出産、販売職などを経て44歳でレコールバンタンキャリアカレッジに入学。

開業副業プランニングの3カ月コース(現:開業プランニングコース6ヶ月)を受講。

卒業後に、カフェ専門家・中島講師をコンサルタントに迎え、2021年に、西池袋ニシイケバレイのシェアキッチン「attic」にて、「林檎と紅茶と」をスタート。

2022年7月には、念願の実店舗を椎名町にオープンさせました。

 

居石さんは、「もともと自分のお店をやりたいという想いがありました。でも、入学した当初は『絶対やるぞ!』ではなく、『本当にやれるのかな?』と不安でした。自分の気持ちを確かめるために、入学を決めました」と、振り返ります。

 

 

  1. お店をどのようにブランディングするか?>

居石さん「父の実家がリンゴ農家です。また、お菓子屋さんや、タルトと紅茶のお店で働いていた経験もあり、お菓子と紅茶には詳しいです。

卒業後に、中島講師に相談すると『お店では、訳アリリンゴを使うのはどう?』と、ご提案いただきました。

訳ありリンゴは、市場に出回らない規格外のリンゴのことで、味についてはまったく問題ありません。

どの農家さんからも一定量出てしまうものなので、訳ありリンゴをつかえたらサステナブルだなと考えました」

 

中島講師「カフェ専門家の中島です。授業では、『ストーリーブランディング』といって、ストーリー性を持ってブランドをつくることが重要だよ、と伝えています。

僕が、飲食店をプロデュースするときは、最初にクライアントのリソースをヒアリングします。居石さんの場合は、リンゴ農家、紅茶に詳しい、といったキーワードが浮かび上がりました。そして、それらを丁寧に紡ぎ合わせ、オリジナルのストーリーに昇華させます。焼菓子は、開業希望者が最も多いジャンルです。だからこそ、オリジナリティが必要ですし、分かりやすい店名が欠かせません」と強調します。

 

居石さん「本当にその通りです。開業前は、シェアキッチンで営業していましたが、

<参考記事:https://www.lecocare.jp/information/detail/1459.php>看板だけを見て、入ってこられるお客さまも多かったです」

 

中島講師「フランス語の『パティスリーなんとか』だと、一般の我々からすると読めなかったりします。体感的に、お客さまに『何屋さんか』が分かるといいです。

訳ありリンゴは、1玉250g以下の市場に出回らない小ぶりのリンゴで、ジャムやジュースに加工するのですが、安く買い叩かれることが多いです。

社会的に良い取り組み『ソーシャルグッド』であることは、常に意識しています。今は、地球にやさしくないといけない時代です」

また、居石さん自らSNSで連絡を取り、各地の農家さんから訳アリリンゴを仕入れているそう。

 

中島講師「農家さんにとっても、『林檎と紅茶と』のSNSで紹介してもらえると宣伝になりますよね。それから、もうひとつの売りである『和紅茶』にもこだわっていますよね」

居石さん「そうなんです。狭山茶の農家さんで、和紅茶を作っている方がいらっしゃいます。オリジナルのブレンドをつくっていただき、和紅茶、オーガニック和紅茶、リンゴの紅茶を販売しています」

 

中島講師「和紅茶の特徴としては、砂糖を入れなくてもやさしい甘みがあります」

 

 

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  1. 立地、客層、ターゲットは?>

居石さん「椎名町は、ファミリー層が多く住んでいますが、カフェは、チェーン店も含めてほとんどありません。池袋に住んでいたので、地元で開業するのがいいと思いました。お客さまは、妊婦さん、ママ、赤ちゃん連れまで幅広いです。平日は、地元の人が多く、土日はSNSを見て来店してくださる人が多い印象です」

 

中島講師「1日に、約2万人乗降されている駅です。ちなみに、新宿駅ですと約140万人。チェーン店が無いということは、つまり彼らが基準とする売り上げに満たないということです。でも、大手が出店していない分、ニーズは浮いていると判断します。地元のニーズにコミットできれば、オンリーワンになり得ます。オーナーが、どこの街で人生を捧げられるかが、ポイントだと思います。ちなみにですが、家賃は嘘をつきません。家賃が低いところは人が来ない可能性が高いです。池袋駅付近の家賃は、ま~高かったですね。でも、個人的には家賃が安いところほど大好物です!」

 

 

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  1. SNSは開業前から準備しよう= PRに必須!>

中島講師「講義では、開業前からSNSを使い倒してくださいと伝えています。オープン前からブランディングを始めましょう。フォロワーの増やし方は、授業で詳しく教えます。特に20~30代は、写真を撮影し共有することに価値を感じる世代です。平日は、オフラインで地元のニーズを取り込み、土日に来客が見込める20代・30代はSNSで集客しましょう」

 

 

 

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  1. 経営では、「俯瞰で」見ることが大切>

居石さん「経理に関しては、まったくの素人でした。中島講師に税理士さんを紹介していただき、サポートしてもらいながら進めていきました」

 

中島講師「居石さんは、飲食業経験があるということがアドバンテージでした。ですが、現場の目線と、飲食店を経営する目線というのはまったく違うものです。なので、飲食経験がなくても、ネガティブにとらえる必要はありません」

 

居石さん「やってみないと分からないこと多いですね」

 

中島講師「そうですよね。経営者は、物事を俯瞰で見ないといけません。また、個人店ですと、ご本人の人件費を考えていない場合が多いです。でも、そこは疑ってください。オーナーがケガや病気で入れない場合、代理の人を雇って人件費を確保しないといけません。僕は、『想定でいいので、初月から自分の人件費を設定しましょう』と言っています。ポイントは2つです。まず、月報上で、人件費を確保しておくこと。次に、初期投資を回収していくこと。個人店の場合、回収期間については、正直なところご自身の匙加減次第です。ちなみに『林檎と紅茶と』は、初月で黒字化していますが、ほとんど聞いたことがありません。すごいことです。また、レコールバンタンキャリアカレッジの株が、上がっちゃいますね!(笑)」

 

居石さん「そうですね。今は、子供もいるので週1休みに落ち着きましたが、ワークライフバランスは心がけていきたいです」

 

中島さん「一般的に、開業2年目まで馬車馬のように働くという人も多いですが、ワークライフバランスを意識できるのは素晴らしいこと。イートインだけでなく、マルシェなどのイベントにも出店し、PRをしながら売り上げをつくることが大事です」

 

 

 

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  1. イートイン+物販で売り上げを立てて>

居石さん「お中元や年末は、『林檎クランベリークッキー』や『バニラクッキー』などが、よく売れます。個包装してあるので、お客さま自身で箱詰めにして購入されます」

 

中島講師「自分へのご褒美と、人へのギフトとでは、半々くらいですか?」

 

居石さん「そうですね。イートインスペースで召し上がってから、購入されるお客さんもいます」

 

中島講師「焼菓子屋さんにプラスしてカフェスペースがありますね。最初に、カフェスペースがあるほうがいいと伝えましたよね?」

 

居石さん「そうですね。一人でつくって売ることを想定していたので、ご提案をいただいたときは、正直『いやいや、無理です』と思っていました。でも講義を聞いていくうえで、カフェって必要なんだなと、考えが変わりましたね

 

中島講師「お客さまにとって、知らないお店だと、いきなり何を買おうか不安じゃないですか。イートインスペースがあると、体験できるので購入のハードルが下がります」

 

居石さん「確かに、そうですね。お茶だけ飲みに来られる常連さんも多いです。ちなみに、『アップルパイはないの?』と、よく聞かれます」

 

中島講師「これが、仕込むのが大変なんですよね……」

 

居石さん「1日、10個くらいしか作れないんですよ。カスタードクリームが入って、幅広い層に愛される味ですが……」

 

中島講師「数量が少なく買えない、幻の製品ですね」

 

居石さん「そうですね。『池袋まで出て、デパートにお土産を買いに行かなくていい』というお声もあり、地元のニーズにマッチしていると感じます」

 

 

  1. 卒業後も、プロ講師から手厚いサポートが受けられる>

レコールバンタンキャリアカレッジでは、卒業後もプロフェッショナル講師に、無料で3回まで相談に乗ってもらえる「開業サポート」制度があります。

 

居石さん「中島講師の授業を受けたのはたった1回ですが、とても強烈でした」

 

中島講師「私の場合は、法人ですので、調理、デザインなどもフルサポートができます。業務委託料は、クライアントにご設定いただき、その分のお仕事をさせていただく仕組みです」

 

居石さん「店名やコンセプトだけでなく、ショップカードのデザインもアドバイスをいただき有難かったです。卒業から1ヵ月後の7月の終わりには、西池袋のシェアキッチンが決まり、ものすごいスピードで展開していきました。また、講義でSNSの発信方法を学べたことで、お客さまも増えていきました

 

中島講師「今回は、『プロセスマーケティング』と呼ばれる『未来に向かって、もがいていく居石さん』を発信することで、お客さまから『応援したい』と思ってもらえるような導線を、引きました。池袋在住の子育てを終えたお母さんが、四苦八苦しながらシェアキッチンで頑張り、その後に実店舗を構えるというハートウォーミングなストーリーです」と、明かします。他にも、融資を受ける際に必要となる「事業計画書」のサンプルも紹介しました。

 

居石さん「クラスには、年齢や背景も異なる、幅広い人がいらっしゃいます。開業という同じ目標を持つ人と出会え、一緒に学べてとても貴重な機会でした。オープンしてすぐに駆けつけてくれたのもクラスメイトですし、今でも財産です」と締めくくりました。

 

 

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<質問タイム>

 

受講生からも、熱量の高い質問が寄せられました。

 

――― 訳アリリンゴは、農園ごとに味が違うのではないでしょうか?

 

居石さん「おっしゃる通りです。産地や農家さんによっても異なるので、『その日によって、若干味が違います』と、お客さまにはお伝えしています」

 

 

――― 入学前から、お店のコンセプトは決まっていましたか。

 

居石さん「正直に言うと、コンセプトは無かったです。サンドイッチ屋さんをやろうかと思っていましたが、中島講師に相談して、決めました」

 

 

――― シェアキッチンで開業されてみて、想定と違ったことは?また、探すときの条件はありますか。

 

居石さん「大変さは、材料を置いておけないので、毎回運ぶことくらいでしょうか」

 

中島講師「住んでいる所から、いちばん近い場所で探してくださいとオーダーしました。ちなみにですが、実店舗をつくることだけがゴールではありません。コロナ禍なので、ゴースト・レストランなど、実店舗を持たない方がいいケースもあります」

 

 

――― シェアキッチンを探す上で、自宅から近いのは大切ですか。

 

中島講師「そうですね、大切です。または『この街に出店したいから、この街のシェアキッチンを借りる』であればOKです」

 

居石さん「シェアキッチンのときのお客さまを、引き継げたのも大きいです」

 

 

――― 開業を考えています。新規のブランドで、通販だけで販売するのは現実的ですか?

 

中島講師「EC開設にはさまざまなプラットフォームがありますが、一般的に新しいブランドは埋もれてしまいやすいです。PRや広告を打つ方法もありますが、初期投資で100~300万円が必要です。そのお金をつくるのであれば、キッチンカーを購入するという選択肢もあります。お客さまにとっても、初見のブランドをECで購入するのはハードルが高いです」

 

居石さん「体感的にも、リアル店舗やシェアキッチンでお客さまとお話するのが楽しいです」

 

中島講師「また、『実店舗を持つ=信用』にもなります。実店舗を構えることで、地方のお客さまにとっては、『お店が東京にある』というPRにもなり、商圏も広がります」

 

 

――― 居石さんの中で、開業に際して譲れないポイントはありましたか。

 

居石さん「中島講師にお願いをするので、絶対に失敗しないという気持ちがありました。また、かける費用も頑張ろう、家庭も崩したくないと思っていました」

 

 

――― 居石さんの1日のスケジュールを教えてください。

 

居石さん「現在は、10時から18時営業です。7時過ぎに起きて、オープンまでは、その日に提供する焼菓子を仕上げます。10時までに全部焼き終えてから、仕込みをします。主人には、接客してもらっています。イートインが忙しいときは、一人ではまわらないので、その都度手伝いにいきます。土日は、ほぼ接客で一杯いっぱいなので、平日は土日に向けて仕込むイメージです」

 

 

――― ご主人と一緒に働かれているとうかがいましたが、飲食経験は?

 

「主人も、飲食経験がありませんでした。悲観しないでいただきたいのですが、夫が勤めていた会社がコロナ禍で倒産し、『これはやるしかない』と思いました。今では、開業を決めて、本当に良かったと思います」。

 

 

最後に、受講生へのメッセージを求められ……

 

中島講師「是非、しっかりと学んでください。信条として、皆さんが卒業してから開業へのアドバイスをすることにしています。卒業されたら、是非DMで連絡してください」

 

居石さん「毎日とても大変ですが、お店を持てて充実しています。めちゃくちゃ良かったですし、楽しいです!」とエールを送りました。これから学ぼうとされている入学者さんの、背中を押すような時間となりました。

 

是非、「林檎と紅茶と」にも足を運んでみてください。

 

 

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<林檎と紅茶と>

@ringo.to_koucha.to

東京都豊島区長崎2-2-11 エスポワール 1F

080-7095-2004

10:00~18:00

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