21.08.31 24.04.01 更新

<卒業生インタビュー>はなぱん オーナーブランジェ 鈴木華子さん

学生インタビュー
卒業生
東京校

 

「ウィズコロナ」の時代。

外食産業を担う卒業生たちは、今どのような心持ちでビジネスをしているのでしょうか?

最前線で活躍されている卒業生にヒントをもらうべく、はなぱんオーナーブランジェ 鈴木 華子さんにインタビューを行いました。

 

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<在校中について>

 

―――― レコールバンタンキャリアカレッジでのコース名、卒業年次を教えてください。

2005年にベーカリー専攻に入学。2006年に卒業しました。

今、46歳なのですが30歳のときに通っていました。

 

 

―――― クラスは何名くらいでしたか。スケジュールも教えてください。

当時は昼間のクラスで、週5で授業があったと記憶しています。クラスメイトの年齢も幅広く、18歳から50歳までさまざまなバックグラウンドを持つ方が通っていました。同級生は30名ほどで、授業後にご飯を食べにいったり、仲が良かったですね。今でも2、3名と連絡を取っていますよ。

 

 

―――― レコールバンタンキャリアカレッジを選ばれた理由を教えてください。

製パンを効率的に学びたかったから。パンに特化していて、実習が多いカリキュラムが魅力でした。

 

 

―――― それまでのお仕事について教えてください。

高校卒業後、劇団に入っていました。お菓子屋さんにアルバイトで勤めていたんです。時間があるときに「パンを作ってもいいよ」と声をかけてもらったんですが、思うように作れなくて。その時から、手に職をつけたいなと思っていました。

東京には6年ほどいましたが演技の道は断念し、いったん地元である沼津に帰りました。本格的にパンを学ぶと決めて、再び東京へ出てレコールバンタンキャリアカレッジに通いました。とにかく早く技術を身に着けて社会に出なきゃ、という気持ちでした。

 

 

―――― 学びたい、身につけたい目標は何でしたか?

パンの世界で通用する技術ですね。

当時のカリキュラムは週5でしたし、平日は朝から晩まで授業があったので、とても実践的でした。早朝から18時までパンを作っていたので、アルバイトをする余力もなく……貯金を崩して暮らしていましたが、その分の技術は身についたと感じます。

 

 

―――― 印象的だった講師、授業はありますか

私が学んでいた講師は、現在はいらっしゃらないかと思いますが、みんないい先生でした。

講師に言われた一言は、今でも覚えています。バターロールの整型試験のときに「パンを辞めて、実家に帰りなさい。家の仕事を手伝ったらいい」と言われたことがあったんです。

今のご時世ではそういう言い方は絶対にできないと思うんですが(笑)、当時の私はそれがものすごく悔しくて、火がついたんです。

それからというもの、バターロールの練習ばかりしました。おかげで、パン屋さんに就職して「バターロール、完璧だね!」って褒められました。

もうひとつは、講師が作るフランスパンの美しさにも憧れていました。「いつか、これくらい完成度の高いパンを作れるようになりたい」と感じるほど高いクオリティでした。

フランスパンはシンプルですが、だからこそとても難しいんです。整型、クープ(パン生地の表面に入れる切り込み)の入り方、焼き色、どれもとても綺麗でした。講師の高い技術力を間近で感じられたことは良かったと思います。

 

 

―――― レコールバンタンキャリアカレッジでの学びが「実践的だった」「今のビジネス」に活かされていると感じることは?

ありますよ。在学中のノートは今でも大切に持っています。昔のノートを見て、発酵時間を読み返したりしています。はなぱんのメニュー開発にも活かされていますね。ある講師は、プリントを配ってくれていて、それも全部取ってあります。技術だけでなく販売の方法も教えてくれました。原価計算なども学べるので、すごく勉強になると思います。

 

 

―――― 印象的だったイベント、販売実習などはありますか。

代官山校舎レ―ヴ1階で販売実習をしました。みんなでメニューから作って販売するのは楽しかったですね。秋なので、季節感のある栗アンパンを販売しました。

メニュー開発から調理、包装、販売までトータルでするので流れが分かって良かったです。

 

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<卒業後について>

 

―――― 卒業後のキャリアについてお聞かせください。

地元で人気のある個人店に就職して、30歳から32歳くらいまで働いていました。1件目は大変でしたね。自分は「できる」と思っていたけれど、現場のスピード感は予想以上に早くて。鉄板で火傷もするし、当時は「火傷は勲章」みたいな風潮もあって泣き言は言えませんでした。朝3時から夕方4時まで働いて、休みは週1ということもありました。でも、そこでめげなかったからこそ今があると思いますし、お店の社長さんとは仲良くさせていただいていて、情報交換したりしています。

次に働いたのは大手のパン屋さん。大手の仕事が、どんなものなのか見たかったんです。4年ほど働いて退職。次に働いたのは、レストラン形式のパン屋さんです。結婚したこともあり、勤務時間が短いお店が良かったんです。一口サイズのロールパンから大きなパンまで幅広く作っていて、それをレストランで出していました。3店目に在籍したのは、36歳から40歳くらいまでです。

 

―――― 開業された経緯を教えてください。

パン業界に入るとき「10年したら自分のお店を持とう」と決めていて、タイプの異なる3店舗で働きました。パン屋さんをやるなら、何も知らない土地よりも、実家の近くなら知り合いも多くていいなと思っていました。

今のお店は、かつてスーパーがあった場所で、居抜きで借りることができました。最初は小さく始めて、パンの種類もそんなにありませんでした。オープンは2013年5月です。

 

 

―――― 開業された時期、場所、店名、コンセプトなど、こだわりを教えてください。

 

<店名>

格好いい名前にしようと思っていたのですが、みんなが私のことを「はなこ」とか「はなちゃん」って呼ぶんです。

分かりやすく、忘れないような名前がいいと思い、ストレートに「はなパン」にしました。おばあちゃんやおじいちゃんも呼びやすいですしね。

 

<内装デザイン>

開業時は銀行からお金を借りていました。主にオーブンと発酵機にお金をかけていたので、当時は今の半分ほどしかスペースがありませんでした。ハード系のパンは作っておらず、売り切れごめんという感じで点数を絞って販売していましたね。今は、リノベーションして広くしています。

 

<場所>

場所は変わっていません。沼津市我入道の住宅街にあります。

 

<客層>

若い方から、30代、40代、50代の方が多いです。SNSのおかげで、遠方からも来てくれます。

 

―――― 特に人気のメニューは?

フランスパンです。土日は3種類、粉の違うものを作っています。ハード系パンの中にチーズを入れたものや、マカデミアナッツを入れたパンが人気です。地元にはハード系のパンを出すお店があまりないんですよ。

柔らかいパンは、特に家族連れの方たちに好評です。

漁師街なので、鯖のフランスパンサンドや、シラスを使ったパンとか、沼津のはなぱんにしかないオリジナル商品もオススメ。デニッシュから柔らかいパンまで含めると、常時50から60種類は揃えています。

 

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―――― 値付けはどのように行いましたか。

原価3割に抑えて、4割ほどで計算しています。

 

 

―――― 開業されて経験されたご苦労についてお聞かせください。

最初の1、2年は好調でしたが、2年目になると常連さんしか来ない状況になりました。思うように売れない時期は、とても悩みましたね。場所も、通り沿いではないので、どうやったら知ってもらえるだろう?と。

Instagramがない時代は、イベントに出たりして、とにかく「はなぱん」を知ってもらうことがいちばんの苦労でした。足を運んでもらえて、食べてもらえさえすれば「美味しい」と思ってもらえる自信がありますが、その「知ってもらう」までが大変でした。

今はInstagramやLINE公式アカウントに力を入れています。LINE公式アカウントには1500人ほど登録があり、リピーターの方にアプローチできていると感じます。15時に配信しているのですが、販売しているパンなどを伝えると「好きなパンがある」と仕事帰りに寄ってくださる方もいます。

 

 

―――― SNS発信で注力していることは?

LINE公式アカウントは、リピーターの方がメインなので「特別感」を出すようにしています。LINE公式アカウントのお客さまだけのパンを用意したり、「LINE公式アカウントお客さまだけのパンですよ」とメッセージを入れたり、予約してくれたら一個プレゼントなど工夫しています。SNS全般では、写真は綺麗に撮ることは意識しています。

あと、ウチは、Google mapを見てから来てくださる方が多いんです。なので、Googleにはできるだけ新しい商品を掲載するようにしています。Googleを見て、HPを見て、LINEアカウントを登録してから来てくださるお客さまが多いです。

 

 

―――― 新型コロナウィルスの流行で、工夫された点や日頃、心がけていらっしゃることについてお教えください。

フランスパンを始めました。これがキッカケでいい流れが生まれたと思います。

実は、コロナ禍を機にウチのお店は混んだんです。外に遊びにいけないお子さん連れの方がパンを買って近所の公園に出かけたり、関東のお客さまがTwitter経由で通販を頼んでくれたりしました。

ピンチはチャンスじゃないですけれど、コロナ禍で私自身も思考が変わり、「何か違うことをやらなきゃ」という気持ちになりました。

キッカケは、知人から「イーストをちょうだい」と頼まれたことです。理由を聞くと家でパンを作りたいと。1年ほど前からご家庭でパンを作る方が増えています。そんな状況で、家庭で作れるパンと同じものをはなぱんで作っていても仕方がないなと感じました。

フランスパンを始めるときは怖かったですし、売れるのがどうか不安でした。フランスパンは塩しか入っていないので粉の味がダイレクトに伝わります。発酵時間がそのまま味に出るので、技術が高くないと作れないんです。ずっとやりたいパンではありましたが、迷いもありました。

出すと決めてからは、練習を重ねました。千葉の「パン焼き小屋 ツオップ」さんでプロ向けのコースを受講し、本も相当読みました。それなりの失敗もありましたよ。でも自分に活を入れるために、失敗したパンをラスクにすることもしませんでした。もったいないですけれどね。試作を重ね、ようやく「これだ!」と思うパンに至りました。

今もいろんな粉を試作していますよ。粉の熟成、混ぜ方、発酵時間で味が変わってしまうので、パンって本当に奥が深いです。

 

 

―――― お仕事の喜びについて教えてください。

毎日嬉しいことがあります。例えば、お客さまがお店に来てくれることもそうですし、LINEアカウントで返信が返ってくるときも嬉しい。「美味しくてリピート決定です!」と言ってもらえ、LINEアカウントでアンケートを取ったときに「ハード系が好き。何を食べても間違いない」と言ってもらえるとき。どんなに疲れていても、お客さまに良いコメントをいただくと、「明日も頑張ろう!」と思います。私はお喋りが好きなので、一杯買ってくれた方には、自分から「どうでしたか?」と話しかけたりもします。

 

 

―――― 大変さはどのようなところでしょうか?

そんなに大変だなーって思うことはないですが……細かい作業は多いですよ。例えば、パンの中に入れるものを仕分けしたり、40代後半になると力が無くなってくるので粉の重たさを感じたりもします。疲れたなと思うことはあるけれど、ここは明日やろうかな、とか仕事量は調整するようにしています。 

パンが売れないときとか、不安なときはありますね。そういうときは、LINEで常連さんに頼むことにします。「これとこれがありますよ」とアピールすると来てくれたりします。何回も来てくださるお客さまが一杯いらっしゃるので、常連さんに支えられています。

 

 

―――― 飲食業界で活躍するうえで必要なスキルはどのようなことだと感じますか?

日々、勉強でしょうね。自分が「このお店いいな」と思ったら研究していいところを真似して、吸収することが大切。スキルは、長年やっていれば身に着きます。勉強し、努力を続けることが大切だと思います。

あとは、「パンが好きだ」という気持ち。自分が食べたいと思うパンを作っています。お客さまにも、作り手の気持ちは届くと思います。

それから、パンを作ることが好きだといいですね。日々の仕事が楽しくないとメンタルに響いちゃいます。パン屋さんは朝が早いので、生活のリズムを整えて体調管理をしっかりして。

オススメは趣味を持つこと。私はサップを始めてから仕事がはかどるようになりました。休みは休みでしっかり休みを取ること。仕事と趣味は別にしたほうがいいかな。

開業したばかりは、仕事ばっかりでした。でも「店に行きたくないなー」と思う日があったり、闇に入っていた時期もあります。抜け出すためには、休みは休みで仕事を考えないことが大事。そうすれば「パン作り、楽しいな」と思うし、より良いものを作りたいなと心から思えます。最初は突っ走っちゃうからしょうがない部分もありますが……休みは必ず取ってくださいね。

今、おかげさまで売上げも上がってきています。週1回しか休みはありませんが、スタッフがいますし。朝早く仕込みをして、サップをして夜にまた仕込みをするという柔軟な働き方もできています。

体調を崩して入院するよりも、休みは休み、休憩は休憩でしっかりとること。スタッフに委ねる環境を作っていくこと。目標を2年後、5年後、10年後、と刻んで立てると良いと思います。

 

 

―――― 10年後の目標は?

渡航できるようになったら、本場・フランスの技術を見たいです。コロナ前から行こうと思っていました。でもそれには、スタッフにお店を守ってもらわないといけません。なので、製造から営業まで、スタッフに教えこんでいます。私がいなくてもお店が回ることが理想です。

実は、以前にもフランスを訪れたことがあり、そのとき、現地で教えてくれる方を見つけたんです。今はコツコツと行く準備を整えています。「沼津一のフランスパン」を掲げているので、そこをたえず追求していきたいですね。

 

 

―――― レコールバンタンキャリアカレッジへの入学を検討されている方に、ぜひ前向きなメッセージをお願いします!

通ったことはとても良かったです。講師の方々が高い技術を持っているので真剣に取り組めば、相応の結果が返ってきます。何か質問すると、熱心に答えてくれる講師が多いです。

ぜひ、目的を持って入学して!熱意を持って取り組んで欲しいです。

 

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はなぱん

https://peraichi.com/landing_pages/view/hanapan/

@hanapan500614

08:00~17:00、日曜日は10時〜15時

月曜定休

静岡県沼津市我入道352-1

駐車場:あり

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