21.08.16 24.04.01 更新

<卒業生インタビュー> コムギとハカリ オーナーパティシエ ティートベール 岸田怜子さん

学生インタビュー
卒業生
東京校

 

「ウィズコロナ」の時代。

外食産業を担う卒業生たちは、今どのような心持ちでビジネスをしているのでしょうか?

最前線で活躍されている卒業生にヒントをもらうべく、「コムギとハカリ オーナー」パティシエ ティートベール岸田怜子さんにインタビューを行いました。

 

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<在校中について>

 

―――― レコールバンタンキャリアカレッジでのコース名、卒業年次を教えてください。

2017年度卒業です。スイーツコースを12か月受講しました。半年コースもありますが、個人的には1年かけて基礎を習得して、応用も学べたのが良かったと思います。

 

 

―――― クラスは何名くらいでしたか。スケジュールも教えてください。

入学時は16名ほどいましたが、1年間受講したのは13名ほどでした。

 

 

―――― レコールバンタンキャリアカレッジを選ばれた理由を教えてください

長男が生まれる前にドイツのカフェなどで製菓を学んでいたんですが、満足はしていませんでした。ずっと日本語でお菓子も学び直したいと思っていました。

帰国して、レコールバンタンキャリアカレッジは毎週土曜だけの授業だったので、「週末だけなら通える!」と思い入学しました。長男を出産していましたが、夫に見てもらいました。入学したのは29歳のときです。

 

 

―――― それまではどのようなお仕事をされていましたか?

大学卒業後の初任が、セントラルキッチン所属の栄養士として入社しました。

2014年、お菓子メーカーのセントラルキッチン勤務だったので、ひとつの洋菓子を作るのに、ひたすらお菓子の一部を作るスタイルでした。完成形は、均一に出来ているので素敵なんですが、そこに自分が携わっているという感覚はあまりありませんでした。お客さまが喜ぶ顔も直接は見られなかったので、仕事がすごく楽しいという感じではありませんでしたね。2年ほど勤めましたが栄養士にしっくりこなかった為、思い切ってドイツへ留学し、お菓子を学ぶことに。

お菓子の世界では、フランス菓子がいちばん有名だと思います。繊細でビジュアルも美しいですよね。国としてはお隣ですが、ドイツ菓子ってフランス菓子とは全然違います。国民性が出ている印象でとても合理的。カフェでも、26cmとか30cmの型で作ったケーキがザックリと切られて、ウエイトレスが運びやすいように倒した状態でケーキが運ばれてきます。暮らしていたのは10年ほど前ですが、スーパーにはビオやオーガニックが並んでいて食品を選ぶ幅も広がったです。働きながら、ケーキが得意な方を紹介してもらい製菓を学んでいました。

帰国後、夫と結婚してお菓子メーカーのセントラルキッチンに勤務しました。その後、長男が誕生し、レコールバンタンキャリアカレッジに入学しました。

 

 

―――― 学びたい、身につけたい目標は何でしたか?

ドイツで学びきれなかった知識や技術ですね。講師の方は、全て的確に答えてくださいました。経験に裏打ちされた解説なので、分かりやすかったです。

 

 

―――― 印象的だった講師、授業はありますか

富樫講師。教え方もすごく面白くて、今でもSNSで繋がっているのでLINEで質問させてもらっています。私自身も、ベーキングクラスを運営しているのでとても有難いです。クールなんですけれど、とても分かりやすい講義でした。あとは、アシスタント阿部講師がサポートしてくださいました。

授業は週1回なので、毎週違うスイーツを作りました。最初の半年は、卵を使ったプリンなどのメニューを学びます。今振り返ると、「食品のサイエンス」は自然とマスターできるようなカリキュラムでした。プリンをやったからこそ卵の特性が理解できますし、回を重ねるごとに食材の扱い方や特徴が頭の中で自然に繋がっていくので、とてもよく考えられた流れだったと思います。

 

 

―――― レコールバンタンキャリアカレッジでの学びが「実践的だった」「今のビジネス」に活かされていると感じることは?

すべてが今のビジネスに活かされています。製菓が無知な状態から、お客様に提供できるお菓子が作れるようになったので感謝しています。

製菓の過程で予期せぬ緊急事態が起こっても対応できるようになりました。例えばですが、入学前まで私はガラス製のボウルしか持っていませんでした。レシピ本を読んで、バターと卵が乳化しないとき、どうすればいいか分かりませんでした。温かくすると乳化することもありますが、ガラスボウルを直火にかけると火(熱)が入りすぎてしまいます。

入学して分かったのですが、製菓で使うボウルというのは基本、ステンレス製なんです。ステンレスのほうが扱いやすいですし、チョコレートを作るときも失敗しにくい。ほんのちょっとしたことですがそういう知識を重ねていくと、緊急事態が起きても対応することができるようになります。プロ講師の技術を目の前で見られるからこそ、たくさんの技術を吸収できたと感じます。

 

 

―――― 印象的だったイベント、販売実習などはありますか。

卒業前に、お菓子の販売実習がありました。

メンバーは13人だったので「Thirteen Sweets」という店名だったと思います。ご実家がケーキ屋さんという方、広告のお仕事をされている方もいらっしゃりそれぞれの得意な分野を担当し、チラシや広告も本格的なものを作りました。ロールケーキ、モンブラン、フレジエ、シュークリームなど、授業で習ったケーキを作って、集大成を発表しよう!という気持ちでのぞみました。

 

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<卒業後について>

 

―――― 開業された経緯をお教えください。

卒業した翌年に、家族で軽井沢に移住しました。長男の保育園のお母さん方を対象にベーキングクラスを開催していました。季節にもよりますが、月2回ほど教室を開いていました。

2021年7月に、「コムギとハカリ」を開業しました。メインのアイテムはベイキングキットで、他にも、今日の焼き菓子を2~3種類出すようにしています。

「コムギとハカリ」開業のキッカケは、ベーキングクラスに来てくださる方の声です。楽しくお菓子を作っても、ご自宅ではやらないという方が多かったんです。理由を聞くと「材料を集めるのが面倒くさい」、「材料が余ってしまう」、「計量が面倒」といった声がありました。そこで、計量の手間を無くして「もっとベイキングを身近に」感じてもらえるようにしようと考えました。計量無しで、おうちで簡単に作れるキットを開発したらいいんじゃなかな?と。一般的なベイキングキットは、材料ごとに大量のプラスチックが出てしまいますが「コムギとハカリ」ではサステナブルにこだわり、瓶に材料を入れて提供しています。作った後に、使用した瓶を「コムギとハカリ」に戻していただくと瓶代をお返しします。環境面からも、プラスチックはできるだけ使わないようにしています。

また、ベーキングクラスの運営は今も続けています。

 

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―――― 開業された時期、場所、店名、コンセプトなど、こだわりを教えてください。

 

<店名・コンセプト>

お店を始めるずっと前から「これだ!」と思っていました。小麦と秤がないとお菓子は作りえないので。最も重要なことだなと思っていました。

 

<デザイン>

ブランドのフォントは、義理の姉がデザインしてくれました。

 

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<場所>

東京に住んでいたのですが、長女の妊娠が分かった時に「今のマンションに、4人家族で暮らせるか?」という議論になりました。主人は東京勤務なので、1時間くらいで通える場所なら移住してもいいね、と話をしていて、千葉、茨城も下見をしましたがピンときませんでした。観光で軽井沢に行った時に「ドイツに似ている」と主人がすっかり気に入ってしまったんです。

今思えば、ライバルがたくさんいる東京よりも軽井沢でお店をするほうが良かったですね。家賃も抑えられますし、桃やシャインマスカットとか、季節のフルーツも豊富です。

 

<内装>

平日は「日々」さんという定食屋さんで間借りをしています。大きなダイニングテーブルを借りて商品をディスプレイさせてもらっています。保育園のお母さん繋がりで、オーナーさんと知り合いになりました。軽井沢は移住された方が多く、クリエイティブなお母さんが多いです。起業されていたり、技術を持っていらっしゃる方も多く、そうした横の繋がりも心強いです。

 

<客層>

ファミリー層が多いです。計量なしのキットを目当てに来てくださる30代から50代の方、ふらっと入っていただく観光客や、普段いらっしゃらない別荘の方もいます。

 

<包装>

お友だちが御代田町(みよたまち)でライ麦畑を運営しているので、麦をお裾分けしていただき、化粧箱に麦をつけています。

 

 

―――― 特にオススメのメニューについて教えてください。

フリーズドライのイチゴとチアシードが入った、イチゴチアシードクッキー(フレーズキプフェル)(1750円)です。ホロホロのテクスチャーで、人気です。

Lサイズ1瓶から30個ほど作れます。Sサイズもご用意ございます。

 

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―――― 値付けはどのようにしていますか。

安すぎるとチープに見えるので難しいですね。土地柄かもしれませんが、安いものよりも少し高級志向なのかなというのも勉強になります。

 

 

―――― なるほど。YouTubeでは、製菓のプロセスを配信されていますね。

はい。ベイク&シェアキットのハウツーとして、ベーキングクラスの宣伝をかねて配信しています。ベイク&シェアキットでレシピをお渡しするとなると、紙を使いますのでQRコーデで読み取っていただきPDFをダウンロードしてもらい、ペーパーレスにしてます。

 

 

―――― 開業されて経験されたご苦労について教えてください。

資金が少なく、小さいお店なので外注できない作業が多いこと。例えば、お菓子の後ろに貼る食品ラベルや、ロゴのシールなどもすべて自分で貼っています。ラベルの入力などの作業には意外と時間がかかりますね。

もうひとつは、告知をInstagramに頼っているので、50代、60代、70代の方へのお知らせをしたいときどのような方法でお知らせすべきか悩んでいます。

例えば、イレギュラーで閉店する際など、お客さまにご迷惑をかけしてしまうことがあります。InstagramやFacebookをしない方も多く、お店に直接来て休みだと知る方もいらっしゃってとても申し訳ないです。ベーキングクラスの宣伝は、FM軽井沢や、軽井沢新聞ですることもあります。

 

 

―――― 新型コロナウィルスの流行で、工夫された点や日頃、心がけていらっしゃることについて教えてください。

ベーキングクラスはプログラムの内容を変えて、生徒さん同士の接点がないようにしました。

また、販売ではお客さまが商品に触れなくてすむように、商品ディスプレイを変更し、私が持っている在庫分からお渡しするスタイルにしました。ネットショップは、BASEを開設しています。

 

 

―――― 飲食ビジネスの面白さ、喜びについて教えてください。

お客さまに「美味しい」と言われたときの達成感は、「自分のしていることは合っている」という自信に繋がります。

お客さまは、自分の表現の理解者なのかなと感じています。自分のやりたいことにお金を出して認めてくださっているのがお客さまです。

また、開業すると1から100まで全てが自分の仕事なので、お客さまのリアクションを感じられるととても嬉しいです。バースデースイーツのご依頼をいただいて、そのスイーツをSNSに載せてもらって喜びの声をいただくこともあります。

 

 

―――― 大変さはどのようなところでしょうか。

仕込みですね。メニューによっては、膨大な時間がかかってしまいます。家のこともしながら、子どもの面倒もみながらなので体力勝負。

睡眠をたくさんとること、朝ランニングに行ったり、家でヨガをしたりして体力をつけます。今の時期は、熊が出るのであまりランニングには行けないんですけれどね(笑)

 

 

―――― 飲食業界で活躍するうえで必要なスキルは?

需要予測のために、天気はよくチェックします。雨だとお客さんが来なかったりするので。 天気がいい日が続くと冷たいアイテムを出すなど工夫しています。

あとは、SNSで何が好まれているかをチェックします。今あるお菓子屋さんと同じことをしても差別化できないと思うので、自分らしさを出せるようにしています。包装やお店のレイアウトとかで自分らしさを出せるように心がけています。

 

 

―――― レコールバンタンキャリアカレッジへの入学を検討されている方に、ぜひ前向きなメッセージをお願いします!

今、例えば別のお仕事をされていても、お子さんがいても、どんな境遇にいても、レコールバンタンキャリアカレッジで学ぶことで今後の可能性をグンと広げると思います。

私自身は1歳の息子がお昼寝をしているときに、授業の復習をしていました。在学中、妊娠していてお腹が大きかったですが、製菓を学ぶ楽しさで頭がいっぱいでした。旦那さんが協力してくれたからこそ学びと育児を両立できたなと思います。私は、遠回りをしてこの仕事をしたいと気付きました。決してストレートな道のりで来たわけではありませんが、どれもムダではなく、全部の経験が繋がっていたなと思っています。どんな年齢になっても、好きなことを追求できたら幸せです。

 

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<コムギとハカリ>

https://komugihakari.thebase.in

@komugi_and_hakari

@lion_meets_coconut

YouTubeチャンネル「コムギとハカリ」

ベーキングクラス「コムギとハカリ」

 

 

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