「ウィズコロナ」の時代。
外食産業を担う卒業生たちは、今どのような心持ちでビジネスをしているのでしょうか?最前線で活躍されている卒業生にヒントをもらうべく、「シモキタシマイ」オーナー中村真(まな)さんにインタビューを行いました。
<在校中について>
―――― レコールバンタンキャリアカレッジでのコース名、卒業年次をお教えください。
1年間の「スイーツエキスパート」というコースを、2017年4月から2018年3月まで受講していました。
―――― クラスは何名くらいでしたか。スケジュールも教えてください。
15名前後ですね。週1回、土曜日に通学していました。
―――― レコールバンタンキャリアカレッジ東京校を選ばれた理由を教えてください。
いちばん魅力的だったのは、実技がメインだったことです。
製菓学校に通おうと決めてから、色々な学校のパンフレットを取り寄せて体験授業に参加しました。他のスクールも見学しましたが、厳しい空気感や、殺伐としている雰囲気のところも多くて。
そんな中、レコールバンタンキャリアカレッジは和やかな雰囲気でしたね。講師に質問もしやすかったです。実は、スケジュールが合わずスイーツの体験授業が受けられなかったんですが、代わりにバリスタの体験授業を受けさせてくださいました。講師が、講義に付随する豆知識も教えてくださって、終始穏やかな雰囲気だったのも決め手になりましたね。
―――― お母さまが料理と洋菓子の研究家だとうかがっています。お母さまのご指導もあったと思いますが、それでもなお入学されて、学びたい目標は何でしたか?
基礎はもちろん、より専門的な知識を学びたいと思っていました。母が主催するお料理やお菓子教室に生徒やスタッフとして参加していましたが、まとまった時間をとって、しっかりと学ぶのも良いのではないかと思っていたんです。
―――― 印象的だった講師、授業は?
トガシ講師の授業です。とても実践的で学びが多かったです。
―――― レコールバンタンキャリアカレッジでの学びが「今のビジネスに活かされている」と感じることはありますか
販売実習です。
約1年間、一緒に勉強してきたクラスメイトとスケジュールを組んでメニューを考え校舎で焼き菓子と生菓子を販売しました。リアルな店舗運営に近い経験ができましたね。特に勉強になったのは「大量に仕込む」こと。それまでは経験したことがなかったので、チームワークも含めてとても役に立ったと思います。
―――― アルバイトなどで飲食業界の経験をされていましたか?
アルバイトはしていませんが、日曜日は母のお店で製造と販売の仕事をしていました。
平日は会社員、土曜日はレコールバンタンキャリアカレッジスクール、日曜は洋菓子店で働いていました。
洋菓子店で働いている時感じたのは、「製菓を学んでいる身である」ということは、お客さまにとっては関係ない、と思い知ったこと。なので、お店に立つ時はいつもプロとして接していましたね。1週間の中で、生徒モードの時とプロモードの時とメリハリがありましたし、その時に「販売」としての立ち居振る舞い方を学べたのは良かったと思います。
<卒業後について>
―――― 開業された経緯をお教えください。
自営業を継承するかどうかはさておき、「自分たちで何か発信していきたいね」と、高校くらいの時から姉妹で考えていました。
母の病気を機に、お店を続けていくのが難しいかもしれないと思い、ぼんやりしていた「何か」が明確になっていったように思います。
―――― 場所、店名、コンセプトについてのこだわりをお教えください。
去年、カンボジアから帰国した姉と一緒に「シモキタシマイ」を始めました。
<場所>
場所は、私たち姉妹が育った下北沢を選びました。築25年ほど経つ一軒家を、業態を変更する兼ね合いでリフォームしています。母が、自宅の一部をリフォームして洋菓子店を営んでいたので、そのエッセンスも引き継いでいます。
<店名>
「いちばん分かりやすい名前にしよう」ということで決まりました。姉が東南アジアで仕事をしていたこともあり、ゆくゆくは、海外の材料や陶器などを輸入販売するのもいいなと思っています。食べ物だけにフォーカスするというよりは、事業を拡げていく時にも使えるネーミングを心がけました。
<イラスト>
実は、パッケージなどに使っている姉妹のイラストは、私が描いた絵なんです(笑)母の洋菓子店でも使っていたデザインということもあり、地域に浸透しているマークだったので使っています。HPに掲載されている姉妹のイラストは、友人が描いてくれたものです。
<コンセプト>
地元の方にとって開けていて、憩いの場所にしたい。また、地元の方はもちろん、SNSで「可愛い」という印象でお店探しをする人にも来ていただけるスペースにしたいと思っています。
―――― 特にオススメのメニューについてお教えください。
<スイーツ>
アップルパイです。いちばん売れているメニューですね。母から引き継いだベースに、試行錯誤して、私たちらしいアレンジを加えています。フィナンシェとガトーショコラに関しては、レシピを一新しました!
<ドリンク>
ドリンクもこだわってお出ししています。
いちばん売れているのが、自家製レモネード。無農薬で、ノンワックスレモンなので皮ごと食べられます。レモンは輪切りにすることが多いと思いますが、シモキタシマイのレモネードは細かくみじん切りにしたレモンビールを入れています。レモンビールをスプーンですくって召し上がっていくお客様も沢山いらっしゃいます。味は三温糖、カルダモン、シナモンがベース。リピートされる方が多いですね。
もうひとつのオススメは、バタースコッチラテ。三温糖、バター、生クリームをベースに煮詰めた、自家製バタースコッチを作っています。「初めて飲んだ」と、お客さまからも大変好評です。商品開発の際には、どこかに「お菓子屋さんらしさ」を取り入れるようにしています。
<ランチ>
母は、料理とお菓子をどちらも大切にして仕事をしていました。お教室も料理・洋菓子を同じくらいのボリュームで行っていたので、私たちもどちらも大事にしたいと思っています。
洋菓子とお料理は同じ工房では作れないので、「やりたくてもできない」状態でしたが、「カフェ」に業態変更をしてから、お菓子工房を移設。今は、別々のキッチンで商品を作り、食事にも洋菓子にも力を入れています。
ランチメニューの開発も、お菓子の工程を料理に取り入れています。例えば「豚肩ロースのビール煮」は、ワインビネガーを使ったキャラメルが味のアクセントになっています。
―――― バースデーケーキも作られていますね?
そうですね。クリスマスや、お誕生日に、ショートケーキとかチョコレートといった規格が決まっているケーキじゃなくて、ケーキを用意される「主役」になる人の趣味や、好きなものを形にする「オンリーワンのケーキ」を食べてほしいなと思っています。自分たちもやっていて楽しいですし、そうした文化を広めていきたいです。好きなキャラクターがない方は、好きな色だけでも大丈夫。抽象的なイメージでもケーキをデザインすることはできるので、お客さまが持っている「ぼんやり」としたイメージを具体化していきたいですね。
また、ホームページには載せられませんが、企業案件をいただくことも多いです。企業さんの創立記念パーティのお祝いでデコレーションケーキを作ったり、株主総会で配る焼き菓子を作ったり。事業として、文化として「オンリーワン」なスイーツを広めていけたらなと思っています。
―――― 開業されて経験されたご苦労についてお聞かせください
オープンして一か月くらいですが、いっぱいあるなぁ……。時期的に新型コロナウィルスの流行と重なったので、5月オープンの予定が延びましたね。3密を避けるため、大工さん一人での作業になってしまったので工期が延びてしまいました。
開業後に関して言えば、有難いことに、沢山のお客様にお越しいただいています。カフェのホールには、知人やインスタグラムのDMで「働きたいです」という方にお手伝いに来てもらっています。ですが、作り手は変わらず姉妹ふたりなので、ちょっと人手が足りないなと感じています。レコールバンタンさんにも求人をお願いしたところなんですよ。作り手を雇うにしても、その方との相性もあるでしょうし。そこをどのようにはかっていくかが、今後の課題ですね。
―――― コロナウィルスの流行で、工夫された点、心がけていらっしゃることについてお教えください
イートインでは、お客さまにアルコール除菌にご協力いただいり、ソーシャルディスタンスを保つために席と席の感覚を保つように工夫をしています。窓は常時開けて換気していますね。
―――― 飲食ビジネスの面白さ、喜びについてお教えください
ご飯を食べる時間って、一日の中でも些細なひと時だと思うんです。でも、食事は人の心を満たして、笑顔にできる。それは食べ物が持つ大きな力だと感じます。新型コロナウィルスの流行で、「外出を控えなきゃ」という空気感が広がって、時々経験できていた「人生が豊かになること」がしにくい状況だと思います。でも、時々は外に出て、好きなお店のフードをテイクアウトして、ピクニックしたりするだけでも気分は晴れます。身近でありながら、心を豊かにできるのが飲食の持つ大きな力ですね。近くでお客さまの反応を見ていると、楽しいな、嬉しいなと日々喜びを感じられます。
―――― 5か月の娘さんを育てるママでもあるとうかがいました。子育てと仕事の両立はどのようにされていますか?
例えば、子供の寝かしつけを19時半にして、夜中1時とか2時に起きて仕込みをしたりしています。最初は、スケジュールの組み方が難しいなと思っていましたが、娘のペースがつかめてきたので、少しずつ慣れてきましたね。
―――― 飲食業界で活躍するうえで必要なことはどのようなスキルだとお感じでしょうか?
技術はもちろん必要だと思います。あとは、コミュニケーションを楽しめる力。お手伝いに来てくれる方が店頭に立っている時もありますが、私たちもお客さまの前に出て会話を楽しむようにしています。いつも来てくださるお客様とは「こういうお店が近所にできたみたいですよ~」といった何気ない話もするんです。そうすると、リピートのお客さまがついてくださいますね。それは、母が洋菓子店を営んでいる時からずっと感じていたことです。相手に関心を持つことってすごく大事ですし、それを楽しめるとなお良いと思います。
―――― ありがとうございます。最後に、レコールバンタンキャリアカレッジへの入学を検討されている方にぜひ前向きなメッセージをお願い致します!
悩んでいるなら、入学しちゃったほうがいいと思います‼製菓学校に通うとなると、金額も大きいし、大人になって週1日を学校に捧げるとなると……と、迷う人もいるかもしれません。でも、迷っているなら、ぜひ入学してみて。
プロの講師や、授業内容ももちろん素晴らしかったですが、いちばん良かったのは、学生同士のコミュニティができること。卒業後、起業された方もいて良い刺激になるし、励みにもなります。ビジネスを始めるとなると、仲間ってなかなか作りにくいものだと思いますが、私はすごく気の合う仲間に出会うことができました。得たものがすごく大きかったです。
シモキタシマイ
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