<卒業生インタビュー>ぽんしゅビルヂング オーナー・株式会社ぽんぽんぽん 鈴木登子さん
「ウィズコロナ」の時代。
外食産業を担う卒業生たちは、今どのような心持ちでビジネスをしているのでしょうか?最前線で活躍されている卒業生にヒントをもらうべく、卒業生「ぽんしゅビルヂング」オーナー・株式会社ぽんぽんぽんの鈴木登子さんにインタビューを行いました。
<在校中について>
―――― レコールバンタンキャリアカレッジでのコース名、卒業年次を教えてください。
2016年頃、ビストロバルコース(現:飲食店開業コース)で学びました。
―――― クラスは何名くらいでしたか。スケジュールも教えてください。
ビストロバルコースは20名くらいです。週に1回、日曜日のみだったと思います。
―――― レコールバンタンキャリアカレッジを選ばれた理由を教えてください
前職を辞めて、開業予定だったから。また、当時のスタッフさんが「卒業後、病気を除いて100%開業されている」という実績をお話されていてその点にも魅力を感じました。
―――― 学びたい、身につけたい目標は何でしたか?
料理でした。バル系の料理を身に付けたいという気持ちでした。
―――― 印象的だった講師、授業はありますか
宮崎講師は、ロボット的な感じで(笑)理論的な説明で、感情論で話さないところが好きでした。また、飲食店のメリットとデメリットを教えてくださり、夢だけでは食べていけないといったところを教えていただきました。
―――― レコールバンタンキャリアカレッジでの学びが「実践的だった」「今のビジネス」に活かされていると感じることは?
異業種から参入する人に対しても、飲食業界の経営手法について分かりやすく簡潔に伝えてくれると思います。
また、飲食業界はレコールバンタンキャリアカレッジ、全日制のレコールバンタンの出身者が多いですね。前のシェフやスタッフもレコールバンタン出身者が多いです。私のキャラクターがいいというのもあると思いますが(笑)、人にも恵まれました。将来開業したいという夢のある方が多いですし、高校を卒業してすぐの方も、社会人として経験を積まれた方などさまざまなバッググラウンドのクラスメイトがいて、幅広い世代の人と交流できるのも良かったと思います。
―――― 印象的だったイベント、販売実習などはありますか。
篠崎講師とのイタリア研修ですね。現地のカフェ、レストラン、ラ・マルゾッコ社などを訪れました。通訳さんを通して、お話が聞けたので、その点も安心できましたね。
<卒業後について>
―――― 開業された経緯をお教えください。
「日本酒を一人でも多くの人に伝えたい」という気持ちで開業しました。日本酒というと、中年の男性が飲むイメージが強いかもしれないけれど、女性、若い世代にこそ、訴求していくことが大事だと考えています。
―――― 開業された時期、場所、店名、コンセプトなど、こだわりをお教えください。
<店名・コンセプト>
2018年12月3日に、「日本酒専門店 人形町ぽんしゅ家」をオープンしました。卒業して1年ほどですね。
また、2022年2月11日に、ビル一棟で日本酒の魅力を発信する「ぽんしゅビルヂング」をオープンしました。
<場所>
物件を探すのが、とても難易度が高かったです。中央区日本橋蛎殻町なのですが、エリアの端のはじのビル2Fでした。「日本酒専門店 人形町ぽんしゅ家」の物件は、家賃保証会社の社長さんが知り合いだったこともあり、スムーズに審査に通りました。その社長さんは、たまたまアルバイトしていたときのお客さんです。当時住んでいた場所からは通いにくい距離でしたが、行き来していました。
<集客>
日本酒が集まるようなコミュニティに行くなど、地道に挨拶に行きました。人形町は集落のようなので、一件ずつ、挨拶行ってショップカードを置いていったりしました。
<客層>
ペルソナは、32歳、日本橋で働くOL、と想定していましたが、全然違いますね。実際の顧客はおじさまが多いです。40代、50代 60代です。日本酒を使ったカクテルや、甘酒のスムージーなどを提供することで、比率として、4割女性、6割男性となっています。
<客単価>
このエリアの相場は、6000円から7000円くらいが平均です。街の単価というのはあると思います。目をひくようなぶっとんだ取り組みや、何かしらのキッカケがないと、お店に来てもらえないと思います。
最近では、「体感型」が繁盛していると思います。例えば、お客さま同士が仲良くなれるようなイベントを実施したりしています。蔵元を招いての『蔵会』、『3周年イベント』には、100人のお客さまが来てくれました。お客さん同士が繋がって仲良くなってくださるのがとても嬉しいです。
生き残っていく中で、どう考えていくかというのは徹底的に考えます。大手さんには、大量仕入れ、人材教育などに注力しますが、個人店では同じことはできないです。個人店ならではの良さを追求していくことなのかなと思います。
そして、2022年2月11日(金・祝)に、門前仲町に「ぽんしゅビルヂング」をオープンしました。1階から4階までのビル一棟にしたのは、キャッチ―だと思ったから。1階は立ち飲みで、お客様同士が仲良くなりやすいのもあり、リピーター率が高いです。日本酒を75mL、150mLと量り売りしています。
<2F>テーブル席。セミナー会場にしようと思います。スクリーンやプロジェクターを設置して、オンライン発信する場所にも活用できます。
<3F>厨房とカウンター席です。他店とコラボレーションしたり、ラーメンも提供したいと思っています。一人でできることは限られていると思うので。
<4F>個室、貸し切りスペース。2022年3月22日に完成予定の屋上では、BBQも楽しめます。桜もライトアップされる予定なので、楽しみです。
おかげさまで、連日、満席をいただいています。1棟貸し切りすることもでき、その場合は50名のお客さまが入れます。
―――― 一軒丸ごとというのは、チャレンジングだったのではないでしょうか。
経済産業省の事業再構築の申請が採択され、補助金を得ることができたことが大きかったですね。
―――― 日本酒の需要を喚起するために、どのような取り組みをされているのでしょうか。
2020年の清酒の出荷量はコロナ前と比べると、約16%減しているそうです。(日本酒造組合中央会より)酒蔵では、国税局の人が入って廃棄処分している現実を知りました。
2021年夏には、青木酒造株式会社様と、これまでにないお酒を創ろうと「アッサンブラージュ」(※)に挑戦しました。甘口、うま口、辛口の3種類の中から、お客さまにどれが好きかを投票していただいました。結果、150本のオーダーが入りました。この様子は、NHK総合の『ひるまえほっと~関東甲信越~』でも紹介され、とても反響の大きかった企画です。日本酒業界に役立てることはないか、日々考えています。
※アッサンブラ―ジュ……ブレンド、混ぜ合わせるという意味。ワイン業界では、ワインの原酒を混ぜ合わせるという伝統的な手法。
―――― 特にオススメのメニューについてお教えください。
日本酒は、150~200種類をラインナップ。1週間ごとにメニューが変わるので、季節ごとのおススメを楽しんでいただけます。
「日本酒専門店 人形町ぽんしゅ家」では、グラスで春らしいものが売れています。
また、お客さまの中に「ドライ、辛口がいい」と言う人もいますが、結果的には甘いもの、フルーティなものが人気です。結局は、「人の感覚」なのだろうなと思います。
フードでは、「黄ニラとピータン添え」、「いぶりがっこ ネギトロタルタル」、「照り焼き鶏レバーペースト クリームチーズ」がオススメ。料理は元ザ・リッツ・カールトンの副料理長が監修しています。
――― 値付けはどのように行いましたか。
FL比率は、55%以内に抑えるようにしています。
F(FOOD・原価、材料費)をできるだけ抑えて、L(Labor・人件費)にかけるようにしています。飲食業はブラックになりやすい業界ですが、うちでは「飲食ホワイト」を掲げ、年107日の休業を確保し、伸び伸びと仕事ができるような環境を整えています。
また、原価が高いメニューもあれば、原価を抑えたメニューもあり全体のバランスが取れるようにしています。
――― スタッフ数は?
アルバイト10名以上働いていると思います。人形町店は、25歳の店長にお任せしています。スタッフは、日本酒に関心のある人、将来日本酒にまつわるビジネスをしたい外国人雇用も積極的に行っています。
今、私自身は、調理はまったくやりません。経営に注力し、私がいなくても回る仕組みを作っていきたいです。
―――― 開業されて経験されたご苦労についてお聞かせください。
集客が大変でした。お客様があっての売り上げ、飲食店なので。その売り上げについて、毎日考えさせられた時期はあります。
―――― 新型コロナウィルスの流行で、工夫された点や日頃、心がけていらっしゃることについてお教えください。
今も、コロナの感染者数や、政府のまん延防止措置などで、日々変わるので、その辺りは柔軟に考えています。
あとは、一般的な話として、飲食店が最初の緊急事態宣言でアルバイトスタッフを一気に解雇した時期がありました。それを受けて、スタッフさんが定着しない、募集をかけても集まらない、良いスタッフが定着しないという話は聞きます。
―――― 飲食ビジネスの面白さ、喜びについて教えてください。
その日、その日で違うところ。毎日違う顔を持つお店なので、それが面白いです。お客さまも、雰囲気も違うので。
あとは日本酒業界に、多少なりとも貢献できているのかなと思うと嬉しいです。そもそも、日本酒は日本を代表するお酒なのに、なぜか安価な値段で売らないといけないことにも納得がいきません。日露戦争時の税収の半分は、日本酒なんですよ。当時は日本をあげて、日本人が飲んでいた国のお酒なんですけれど、ワインが入ってきて、ワインをくるくるさせて飲むようになりました。
今も、月に一回は酒蔵を訪問しています。日本酒って、アルコール度数が高く15~16%あります。ワインは13%くらいなんですね。食事と合わせるときに、どうしても甘く感じてしまうということもあるかもしれません。3%くらいの日本酒を作ろうと提案すると、「それでは日本酒じゃないからやりたくない」という職人さんも多いです。
とはいえ、日本酒も進化しています。例えば、永井酒造株式会社では、伝統的な日本酒製法に、瓶内二次発酵を取り入れたスパークリング酒「MIZUBASHO PURE」もあります。山梨銘醸株式会社では、サントリー白州蒸溜所のウイスキー樽に七賢を寝かせた七賢スパークリング「杜ノ奏(もりのかなで)」を製造しています。
私は、ソムリエと「利き酒師」の資格を取得していますが、日々勉強ですね。
―――― 飲食業界で活躍するうえで必要なスキルは?
コミュニケーション能力が、めちゃくちゃ必要です。またブレない信念。ブレていると、お客さまもブレてしまうので。これと決めたら、最初はお客さんが来なくても突き進んで。あとは、人との出会いにも助けられたので、人を大切にしてください。
―――― 大変さはどのようなところでしょうか。
体力的なところでしょうか。脱サラして中途半端な気持ちで参入すると難しいかもしれません。
―――― レコールバンタンキャリアカレッジを、オススメされますか。どのような点でオススメされますか。
開業をしたいのであれば、一回通ってみたらいいと思います。飲食店開業、経営は大変です。誤解を恐れずに言えば、毎日色んなトラブルも起こります。夢のある話だけでなく、現実に即した講義を受けることもできます。現実を知って、開業しないという勇気も肯定します。それ以上に想いが強いのであれば、通う価値はあると思います。
卒業後は、宮崎講師にメニューなどコンサルテーションに入っていただきました。また、AKIRA講師に施工をしていただきました。センスが良かったと思います。レコールバンタンキャリアカレッジに通っていなければ出会えなかった講師陣なので、感謝しています。
―――― レコールバンタンキャリアカレッジへの入学を検討されている方に、ぜひ前向きなメッセージをお願いします!
飲食店はコミュニケーションです。人と接することが好きな方にとっては、感動することがたくさんあります。
今でもレコールバンタンキャリアカレッジで知り合った仲間20~30名と仲良くしています。喫茶店を副業としてやっている人もいます。
社会人になってから仲良くなれることって、ないと思うのでとても貴重なことです。ある一定の金額を払って来れるメンバーなので、質のいい方が揃っていると感じます。
―――― これからの目標は?
次の店舗は、海外に出す予定です。日本人が日本酒を飲まないのであれば、海外だなと感じます。人形町のビルで、オーナーチェンジがあり、そのオーナーさんが台湾にコネクションがある人でした。今、外国人雇用も積極的に行っていて、JETROの人とも仲良くさせていただいているので、私自身も台湾にコネクションがあります。数年以内に、実現すると思います。
もうひとつ、若手オーナーは多いですが、女性オーナーが少ないので、女性オーナーに活躍してほしいですね。
<SHOP INFO>
日本酒専門店 ぽんしゅ家
東京都中央区日本橋蛎殻町1-11-9 マガザン人形町 2F
ぽんしゅビルヂング
東京都江東区富岡1-4-8
平日16-23時(L.O.22時)土日•祝15-23時(L.O22時)