21.10.01 24.04.01 更新

<卒業生インタビュー> ひのベイク オーナー 徳久恭子さん

学生インタビュー
卒業生
東京校

 

「ウィズコロナ」の時代。 外食産業を担う卒業生たちは、今どのような心持ちでビジネスをしているのでしょうか?

最前線で活躍されている卒業生にヒントをもらうべく、「ひのベイク」オーナー 徳久恭子さんにインタビューを行いました。

 

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<在校中について>

 

―――― レコールバンタンキャリアカレッジでのコース名、卒業年次を教えてください。

2013年10月に入学し2014年9月に卒業しました。

 

 

―――― クラスは何名くらいでしたか。スケジュールも教えてください。

クラスは、20名から25名くらいだったと思います。カフェ全般を学べるコースで、週1回、日曜日に通っていました。50歳のときに入学しました。

 

 

―――― レコールバンタンキャリアカレッジを選ばれた理由を教えてください。

当初はカフェ開業よりも趣味でジャム作りをしていたので、そちらの販売をメインで考えていました。食品を売るのにはどうしたらいいのかを学びたく、レコールバンタンキャリアカレッジに入学しました。

講義を受けて「ジャムだけじゃダメだ」と思いましたね。幅を広げて、色々やれるほうがいいなと思うようになりました。リサーチすると、パン屋さんにジャムを置いて販売しているお店が多かったです。確かに、パンは毎日食べるけれど、ジャムを買う頻度は月1回前後、気分を変えるためにという感じですよね。ジャム工場など大規模なものではないと成り立たないと思いました。そこで、カフェを開業しジャムも置こうと思うようになりました。

 

 

―――― 入学時までのキャリアは?

30年ほど会社員でした。最初の10年間はSE、後半は秘書、事務職として働きました。レコールバンタンキャリアカレッジは会社員時代に通っていたのですが、定年退職後にチャンスがあればお店をやれたらいいかなと漠然と思っていました。どうしてもここで辞めて始めようという気持ちではなかったんですが、親会社も含めたグループ全体で早期退職を求める時期があり、条件が良かったの思い切って退職しました。

 

 

―――― なるほど。学びたい、身につけたい目標は何でしたか?

応用もできる調理や製菓の技術でした。

卒業してから2年目くらいで、カフェでのイベントを主催する女性と知り合いました。10坪程度のカフェスペースで、リラクゼーションスペース、占い、手芸ワークショップなどさまざまなプロを集めてイベントを仕切っている人でした。その方から「料理を担当してくれないか?」と依頼されました。卒業後2年目から3年間くらいまで、月1のペースで出張カフェをしていましたね。イベントは日曜なので、会社員を続けながらでしたが、この経験が非常に役に立ちました。

レコールバンタンキャリアカレッジで習ったいくつかのメニューも提供しました。ミートソーススパゲティとか、スイーツとドリンクのセット1500円を10食程度提供しましたね。

毎月毎月、メニュー開発をし、さまざまなレシピを考案しました。『ひのベイク』開業時は、そのときに培ったレシピから人気があるものをピックアップして構成しています。なので、苦労はしませんでした。

出張カフェのときに出していた「赤いジュース」は今でもとても人気です。グレープフルーツをベースにレモンとハチミツを入れたオリジナルジュースに、赤キャベツで色付けしています。他にも、「甘くないココア」も好評です。一般的なカフェだとベースのココア飲料があって、そこに牛乳を入れるだけだと思いますが。ウチは「ヴァンホーテン」からちゃんと作っています。ホットなら砂糖、アイスならガムシロップで好みの甘さに調整できます。

開業時に新しいドリンクを追加したので、ドリンクメニューにはとても特徴があり、初めていらした方はとても迷われます(笑)ドリンク目当てで常連さんになってくれる人もいます。

 

 

―――― 印象的だった講師、授業はありますか

調理の手塚講師。手さばきがとにかく格好良く「背中を見て技術を盗みたい」と思わせてくれました。一つひとつの所作も綺麗ですし、無駄がない動きでした。盛り付けも素晴らしくて。「盛りつけ」に特化した授業はなかったものの、講師の方々の調理デモンストレーションはとても参考になりました。

 

 

―――― レコールバンタンキャリアカレッジでの学びが「実践的だった」「今のビジネス」に活かされていると感じることは?

調理ですね。料理の基礎の基礎から教えてもらったことがとても良かったです。スープひとつにしても、コンソメ顆粒で手軽に作るものとは異なり「素材の味をきちんと引き出す」ことを教えてもらいました。ウチでは、土日にスープを出しているんですが、野菜からきちんと出汁をとっています。スープを目当てにいらっしゃるお客さんが多いです。「体に良さそう」「美味しい」と好評なので、学んだことが活かされていると感じます。

 

 

―――― 印象的だったイベント、販売実習などはありますか。

「店舗実習」ですね。レシピを決めるときに、クラスメイトの皆さんが意見をあまりお持ちでなくて、私がアイデアをどんどん出してほぼ採用されました。「いいんですか」という気持ちでしたが……。私の案が多く採用された分、変なプレッシャーもありましたね。また、当日は運営する学生が多く15~16名程で営業していたので、店舗の全貌が見え辛くなってしまい大変でした。20人前、60食ほど料理を仕込んだのですが、分担が上手くいかないなんてハプニングもありました……。

 

 

―――― 在学中、アルバイトなどで飲食業界の経験をされていましたか?

0ですが、今となっては下手にアルバイトしなくて良かったかもしれないと思います。何故なら、どこかに飛び込んで働くと、そこがすべてになってしまう可能性があるから。個人店は、店主によって仕事の進め方も変わりますしね。

 

 

―――― 出張カフェをしていて良かったことは?

お店に行かないと、どんな設備やお皿があるのか分からないところ。大抵の場合、鍋、炊飯器などがあると分かっていますが、お皿の柄までは分かりません。その場その場の勝負でしたが、結果的に、とても応用力がつきました。こうすればお客さんが喜ぶといった感覚が会得できました。例えば、お客さまが3人で来店されて「2種類のケーキを3人でシェアしたい。等分にして持ってきてください」と言われたら、3等分して、いかに素敵に盛り付けるかが問われます。上手にできると喜ばれて、こちらもとても嬉しいです。開業前から手探りながら色々な経験をしていたのは良かったですし、自分の性にも合っていましたね。

 

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<卒業後について>

 

―――― 開業された経緯をお教えください。

2019年11月にオープンしました。

 

 

―――― 開業された時期、場所、店名、コンセプトなど、こだわりをお教えください。

 

<場所>

第一希望として、自分の住まいから歩ける範囲であること。他に、駅から徒歩5分以内、広さは10坪以上であることを重視しました。

10件ほど物件を回って、立地、一階、路面店、広さすべてが良かったので現在の場所に決めました。一緒に物件を見てもらった佐々木講師に「勝手口があるのも良い」と言われました。小さな裏庭があるので、何か置いたりもできます。あとはコロナ禍になって気付いたんですが、客席側に換気扇がありとても役立ちました。

ちなみに、佐々木講師は、私が未だ契約を決めていない時点で、「決まったときのために」と、全ての寸法を測って帰られたのも印象に残っています。

他にも、運命的な出会いだと思うことがふたつあります。この場所は、かつて何かの事務所だったんです。扉が水色だったので、私は遠目から見てカフェだと思い、勘違いして入ろうとしたことがありました。近づいてみて、ようやくここが事務所だと知った覚えがあります。

あとは物件のアドレスが自宅のアドレスと数字の並びが似ているんです。例えば、2丁目11-2と2丁目1-2という具合に、そっくりで驚きました。すごい偶然ですよね。

 

<店名>

お菓子に力を入れているので「ひのベイク」としました。お菓子に関しては新しい「発想」で向き合うことを、とても大事にしています。

 

<内装>

卒業生特典の開業サポートで、佐々木講師に数回の相談を無料で行っていただきました。内装は佐々木講師にお願いしようと決めていて、9件目と10件目の物件を一緒に見てもらいました。

実は、私はインテリアなどのジャンルは得意な方ではありません。希望のイメージや雰囲気を伝えて、佐々木講師にお任せしました。テーブルから、ランプシェードから全部お願いして統一感が出たと思います。厨房もイメージ通り。

お客さんが入りやすい動線になっていて、「居心地がいい」と好評です。

 

<客層>

いちばん多いのは女性で、30代、40代、50代前半がメインです。ご主人やご家族を連れてきてくださる方も多いです。ベビーカーごと入店できるので、ママさんたちも多くいらっしゃいます。

 

 

―――― 特にオススメのメニューについてお教えください。

土日のメニューで、甘くない「発酵酵母クレープサンド」を提供しています。クレープ、スープ、ドリンクがセットで1000円(税込)です。冷蔵庫でじっくり発酵させた生地を丁寧にクレープパンで焼き上げ、フレッシュなレタスとチェダーチーズをはさんでいます。出張カフェをしているときからのレシピで、特に人気が高いです。

もともとはロシアの料理で、発酵したそば粉のクレープがあるんです。個人的に、そば粉は食べるのも作るのも得意じゃないので、小麦粉で食べやすいものはできないか試行錯誤して、出来あがりました。クレープとパンの間くらいの質感で、酵母の良い香りもするのでオススメです。

 

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――――  仕入れについては?

スーパーマーケットを活用しています。クレープサンド用のナチュラルチーズは決まったスーパーで大きな塊を買うことができます。お野菜も特定の農家さんを決めず、近所のスーパーで買うほうが新鮮さを保てる適切な量を確保できます。生クリームも送料を考えるとスーパーのほうが割安ですね。保存がきく粉とバターは業者さんからまとまった量を取り寄せています。

 

 

―――― 開業されて経験されたご苦労についてお聞かせください。

ずっと感じているのが仕込み。いちから作っているので、時間がいくらあっても足りないです。好きなことなので続けていますが、手を抜けないのは大変です。手を抜いたら、お客さんにバレてしまいますから。

 

 

―――― 一日、平均してどれくらいの時間「仕込み」をしますか?

品数にもよりますけれど、10時間くらいですね。お店がある日も閉じてから、仕込みを行います。

開業されて気付いたんですが、次の日が営業日だとやることが多く休めませんね。定休日は2日設けていますけれど、休みではなく「仕込み日」です。もちろん、午前中に美容院行ったりはしますけれど……。始める前まで気づかなかったです。

ひのベイクでは、焼き菓子も置いているので、棚が空になることは避けたいんです。お客さまに「何もない」とガッカリされるとこちらも悲しいので、期待に応えるために日々頑張っています。

 

 

―――― 新型コロナウィルスの流行で、工夫された点や日頃、心がけていらっしゃることについてお教えください。

アクリルボードを付け、レジにはビニールを垂らしました。席数を減らし、16席あった椅子を9席にしました。

1度目の緊急事態宣言時は、焼き菓子と生菓子のテイクアウトだけにしました。開業して3~4か月目でしたが、そこまでに付いていた常連さんがすごく心配してくれて、人によっては毎日買いに来てくれました。時短、週休3日の営業にしましたが、売り上げは思ったよりも落ちませんでした。

佐々木講師にはすごく感謝しています。というのは当初「イートイン」をメインにしようと考えていて、お食事メインでレジ周りに焼き菓子を少し置く程度のイメージでした。すると佐々木講師が「イートインだけじゃ売り上げが安定しない。テイクアウトのケーキや焼き菓子を充実させたらいい」とアドバイス、焼き菓子用の棚の設計やケーキ用のショーケースの手配等もしていただきました。テイクアウト充実の助言があったからこそ、はじめから「菓子製造業」、「飲食業」のふたつの業種としてスタートすることができました。

新型コロナウィルスが流行したときに「ケーキのテイクアウトもやっていて助かった!」と思いましたね。もしも、イートインだけでしたら新にテイクアウト用のお弁当などを考えないといけないところでした。そうなれば夏場に向かう時期でタイミングも最悪だったと思います。

「将来性的に育てていく要素にすればいいか」と構えていたテイクアウトに救われました。

また、コロナ禍を機に、生菓子のレパートリーが増えました。

約1週間ごとを目安に内容を変えていて、新しい生菓子を目当てに常連さんが来てくれています。(1回目の緊急事態宣言中に)料理を作れなかった分、熱量が生菓子に向かったように思います。

 

 

―――― 飲食ビジネスの面白さ、喜びはどのような時に感じられますか。

料理をお持ちして、お客さんの顔が輝くとき。「わー!素敵」「美味しそう」とか、入店時はムッとした表情の人が、とても幸せそうな表情になってお帰りになるときです。

また、最初は不機嫌だった方が帰る時は満足されて、思いがけず常連さんになってくださることも嬉しいです。

 

 

―――― 大変さはどのようなところでしょうか。

お昼どきに、オーダーが回りそうにないとき。忙しいことそれ自体は大変ではないのですが、結果的にお客さんを待たせるは忍びないし申し訳ないです。なので、お声がけは必ずしています。お客さんからすると、ただただ待たされるのは不安なんです。なので、「紅茶の抽出に時間がかかっていますけれど、でき次第お持ちします」と説明します。なかには「時間があるから大丈夫」と言ってくださる方もいます。

 

 

―――― 飲食業界で活躍するうえで必要なスキルは?

料理のセンスですね。味のセンス、盛り付けのセンス。それはケーキを並べるときに、どういう色がいいか、どのように並べたら見栄えがいいかなどをイメージする力でもあります。

センスを磨くことに対しては、時間もお金も惜しまないでほしいです。有名店は有名店になるだけの理由があると思うので、ぜひ評判のレストランやカフェに食事に行ってみてください。ただし、「一人」で行くこと。友だちと行くとお喋りに夢中になってしまって料理は覚えていません。勉強しに行くなら「この素材は何だろう」とか、「盛りつけはどうなっているか」よく見てください。有名なシェフやプロの単発セミナーに行くのもいいと思います。

もうひとつは、自炊するときに手を抜かないこと!美味しそうに見えるにはどうしたらいいか、自分のご飯を作るときも試行錯誤してみてください。在学中に、「写真の撮り方」も学ぶといいと思います。写真で撮られることを意識すると、盛り付けにも意識がいくようになります。

 

 

―――― レコールバンタンキャリアカレッジへの入学を検討されている方に、ぜひ前向きなメッセージをお願いします!

講師の方々が素晴らしいです。カリキュラムも料理のレシピも素晴らしく、学ぶ価値があると思います。

今でも、クラス担任の言葉がとても印象に残っています。「レコールバンタンキャリアカレッジは単に料理のレシピを習う場所ではありません。応用までできるようにしてくれるスクールです」。言い換えると、ミートソースを習って終わりではなく、それはひとつのレシピに過ぎないんです。基本さえしっかりおさえておけばその技術を応用して、美味しい料理が作れるようになります。社会人コースは、学ぶ仲間たちもものすごく真剣で刺激になります。もうひとつ付け足すとすれば、料理って甘いものではありません。家庭で上手くこなせている人が飲食の商売ができるかとそういう訳ではありません。レコールバンタンキャリアカレッジは、お客さまからお金をいただくレベルにまで上げてくれます。プロの技術を学べると思います。ためらっている人、不安な人は見学して、ぜひ納得して入ってください!

 

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<ひのベイク>

〒191-0011 東京都日野市日野本町2丁目11-2
Tel 042-843-3990.

営業時間:11:30~18:00

定休日:月・木

https://hino-bake.com

 

 

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