＜大阪校卒業生インタビュー＞パンと焼き菓子Lis オーナーブランジェ 井上由里子さん
「ウィズコロナ」の時代。
外食産業を担う卒業生たちは、今どのような心持ちでビジネスをしているのでしょうか？
最前線で活躍されている卒業生にヒントをもらうべく、パンと焼き菓子Lis オーナーブランジェ 井上由里子さんにインタビューを行いました。
＜在校中について＞
―――― レコールバンタンキャリアカレッジでのコース名、卒業年次をお教えください。
ベーカリーコースを１年受講しました。その後スイーツコースを半年受講しました。入学時は48歳です。卒業した翌年2019年にお店をオープンしました。
―――― クラスは何名くらいでしたか。スケジュールも教えてください
ベーカリーコースは15人くらい。週1回、日曜日に授業がありました。
―――― レコールバンタンキャリアカレッジ大阪校を選ばれた理由を教えてください
趣味でパン教室とかお菓子教室など色々な教室に通っていました。本職は歯科衛生士をしていて、それまで趣味でパンを作っていましたが、45歳頃から自宅や市の施設を借りて教室を開くようになりました。たくさんの方に楽しんでいただき、「ゆくゆくは自宅で小さいお店を持ちたいな」思っていました。
ただ、お店をするのであれば、自己流ではなく、プロのシェフに教えてもらいたいなという気持ちがありました。
レコールバンタンキャリアカレッジは、「開業を目指す」授業というのが良かったです。一般的な教室だと、「自宅で」パンを作ると目的が多いです。お店をするためのスキルを学びたかったので講師陣が現役でパン職人であるレコールバンタンキャリアカレッジを選びました。
―――― 学びたい、身につけたい目標は何でしたでしょうか
家庭で少量を作るのとは違うので、生地を大量に仕込む際や調理のポイントを学びたいと思いました。ゆっくり丁寧に丁寧に作る、というよりは手際よく効率よく作らないといけないので。これをやっている間に、このメニューを同時進行で作るなど、複数のメニューを同時に仕上げていくポイントなども知りたかったです。
また、開業するにあたりどれくらい費用がかかるのかなど、身近に聞けるプロの方がいるのも良かったです。
―――― 印象的だった講師、授業はありますでしょうか
どの先生も三者三様でどの授業も新鮮に学ぶ事ができました。
クラス担当の米沢講師。また、楽しく、明確に教えてくれました。特別授業では有名店のシェフからいろんなやり方を学べました。
お菓子とパンを並べた可愛らしいお店にしたいと思い、追加でスイーツコースも受けましたが、それも学びになりました。日々の調理に、学んだ技術が活かされていると思います。
―――― レコールバンタンキャリアカレッジでの学びが「実践的だった」「今のビジネス」に活かされていると感じますか？
実際にパン屋さんを経営されている方のお話を聞けたのが貴重でした。包み隠さず、一ヵ月の売り上げの中で、家賃や材料費
、光熱費などの割合と、そこから必要な売上げの目安を考えたり、業務用機械を使って実習できたことも良かったです。
―――― 印象的だったイベント、販売実習などはありますか。
卒業制作ですね。自分で考えたレシピで作ったパンを、校舎１Fで販売しました。ひとり２種類を作りました。私は、平べったいパン「フーガス」をもとに、キムチとチーズを具材にしたメニューを作りました。販売時期がハロウィンの時期だったのでカボチャやお化けの形にしました。もう一品は、丸い10cmくらいのパンをお皿に見立て、カスタードクリーム、みかん、パイナップル、キウイ、サクランボをのせた「パフェ風の菓子パン」です。
自分が作ったパンに、お客さんがどんな反応をするかが分かります。呼び込みをしたり、パンをオススメしたり、コミュニケーションが取れるのも面白かったですね。 暑い時期だったので、完売は大変といわれていましたが、ほぼ売り切れたので印象に残っています。
―――― 在学中、アルバイトなどで飲食業界の経験をされていましたか？
卒業してから2018年頃、週１～２回、数時間ですが大手のパン屋さんでサンドイッチを作るバイトをしました。サンドイッチも販売していますし、学びになったと思います。
どんな設備があって、どんなパンがあり、何が売れるかなどを知れましたし、準備や後片付け、掃除のやり方なども経験しておいてよかったです。
＜卒業後について＞
―――― 開業された場所について教えてください。
大阪府の和泉市です。まわりは静かな住宅街で駅から少し離れています。大きなお店ではなく、自分でできる範囲でやれたらという感じでした。とても良い環境で、のんびりした雰囲気です。
また、和泉市は若い人が増えてきている街でもあります。隣にスーパーマーケットがあり、ある程度車や人通りもあるのでとても気に入り、土地を購入し自宅兼店舗を建てました。
―――― 自宅兼店舗というのは珍しいですね。
不動産屋さんで探してもらって、数ヵ月掛かると思っていたんですが、予想よりも早く決まりましたね。車道との段差もなく、店舗前の歩道もすごく広くて。車で来られる方が多いですが、車でも入りやすく、いい場所だったのでその日のうちに決めました。
自宅兼店舗は、建てるときにはお金がかかりますけれど、お店を持つと決めた時からイメージは明確でした。朝が早い仕事なので店舗を借りてというのは考えていませんでしたね。また、将来自分がお店をできなくなった時に貸店舗として収益を得るという事も想定しています。
2人くらいで営業できる小さいお店がいいなと思っていて、今となっては、当初の想定よりも、店舗面積は大きいくらいです。最初のイメージとしては、対面のショーケースだけでもいいくらいでした。
―――― 開業された時期、場所、店名、コンセプトなど、こだわりを教えてください。
＜店名・コンセプト＞
屋号はパンと焼き菓子 Lis （リス）としました。形態としては会社にしていて、社名は株式会社フルール・ド・リス。フランス語でフルールは花、リスは百合という意味です。私の名前に「ゆり」がつくのと、動物のリスが好きで響きも良いと思いました。
＜こだわり＞
北海道が大好きで粉は全て北海道産の「はるゆたかブレンド」「ドルチェ」「ゆめちから」「キタノカオリ」などを使っています。特にキタノカオリは大きなパン屋さんしか業務用で仕入れられないほど、数が出回っておらず高価です。バターも牛乳も北海道産のみ。ショートニングやマーガリンは使っていません。仕入れている業者さんから材料費のかけすぎを心配されながら（笑）
お客さまからも「マーガリンは使っていますか？」と聞かれることが多いです。フィリングは業者さんから仕入れているものもあるので、必ずしも完全に無添加という訳ではないのですが、土台となる生地は添加物を入れずこだわって作りたいと思っています。
＜ロゴデザイン＞
うちのワンコなんです。私が描いた絵をデザイナーさんにロゴにしてもらったんですよ。ワンちゃん好きな方が多いので、ロゴをプリントしたエコバッグも販売していますがプレゼントに買ってくださる方も多いですね。（250円 ／A4サイズ）向かいに動物病院があるのでワンちゃん好きな方が寄ってくださいます。
＜客層＞
30、40、50代の方が多いです。お子さん連れのお客さまも多いですね。７～８割が常連の方です。
＜宣伝＞
プレオープンの際に、近所の方にだけお知らせをしました。当日になって、たくさんの方が並ばれてビックリしました。オープンしてしばらくはあっという間にパンがなくなってしまったので、これは申し訳ないと思いました。さらに広告を出してしまうと、手に負えないなと思って。広告を出さずに今はマイペースで営業しています。お友だちが、知り合いに声をかけてくれたり、口コミで広めて下さることが多いです。
―――― 特にオススメのメニューについてお教えください。
オススメは、いつも選べなくて…期間限定のパンや焼き菓子をおすすめしています。クッキーはオリジナルの型にこだわっていまして、ワンちゃん型クッキーは常に置いています。パンの売れ筋は、ハード系のパン。ベーコンエピとか、ドライフルーツが入ったバトンも人気です。
―――― 仕入れ先は、どのように決めましたか？
アシスタントの講師の方も、ひとりでパン屋さんをされていたので一日体験でお店を手伝わせていただきました。たまたま、パンの材料を取り扱う業者さんの出入りがあったので、紹介していただきました。少量でも持ってきてくださるので有難いです。
―――― 発酵種は何を使っていますか？
ウチでは、サフのどらいイーストを使っています。レコールバンタンキャリアカレッジで、天然酵母の作り方も教えてもらったんですけれど、管理が難しくいろんな菌が入っているので自家製酵母を使うのであれば、専門の検査機関でしっかりと調べてもらってからのほうが良いそうです。歯科衛生士をしていたので菌に関しては神経質かもしれません(笑)
一人で仕込んでいるので、手間暇をかけたい部分にきちんとかけられるようにイーストを選びました。
―――― 開業されて経験されたご苦労についてお聞かせください。
お客さんの動き、来客数を読むのが難しいです。暑い日は少ないことが多いんですけれども、雨の日だから、客足が少ないということもなく、逆に多く来てくださったり。日曜日でお天気が良いから今日は多いかと思うと意外とお客さんが少なかったり。あとは、売れるメニューもそうです。昨日は甘いパンがたくさん売れたから、多めに仕込むと次の日は総菜系パンが売れたりして、日によって出方が全然違う。昨日売れ残ったパンを翌日控えめに作ると、その日に限って売れたりもします。
いちばん困るのはロスです。気持ちを込めて作っているのでロスが出たときに、捨てられません。食べ切れないので、甥っこに送ったり、家族にあげたりしていました。
最近、ロスを出さないために活用を始めたのが通販サイトです。その日に冷凍して、翌日送る「リベイク」を活用しています（https://rebake.me）。心を込めて作っているので売れ残ったものがあっても、捨てられません。なので、とてもいいシステムだと思います。「リベイク」を知ってからは、売れ残りを気にせずに営業できています。
―――― 新型コロナウィルスの流行で、工夫された点、心がけていらっしゃることについて教えください。
2020年４月に緊急事態宣言が出たときは、食べ物を扱っているのでとにかく怖いと感じました。オープンのときからもカバーケースをかけ、お客さまご自身で取っていただく形式にしていましたが、とても心配になりました。そこでお店を休業してリニューアルすることにしました。サンドイッチ、クッキーなど個包装されているものはお客さまに取っていただき、袋に入っていない商品は全てショーケースに入れケーキ屋さんのようにこちらでお取りしてお出しする対面式に切り替えました。
それでも食べ物を扱う身として、自分がかかってしまって販売していたらどうしようという怖さがありました。今になって（2021年７月現在）どうすればいいかは少しずつ分かってきましたし、ワクチンもできたので、不安は和らぎました。人混みには極力出かけません。販売方法については、お客さまからも「いいですね」とおっしゃっていただいていますので、今後もこの販売スタイルでいきたいです。
―――― クッションカバーや、コースターも販売されていらっしゃいますね。
お菓子を置いているのでプレゼントに使われる方も多いので、一緒にプレゼントできるようなものがあればいいと思ったんです。知り合いの方が作品を作られているので「欲しい方がいらっしゃったら」と思って置いています。良い出会いになれば、嬉しいですね。
―――― 飲食ビジネスの面白さ、喜びについて教えてください。
お客さまとお話したり「美味しかったよー」とおっしゃっていただけるとうれしいです。パンも焼き菓子も、自分が一から作ったものです。それを買ってくださるのが嬉しいですし、やり甲斐があります。モノを仕入れて売るのとは違った面白さだと思います。
―――― 大変さはどのようなところでしょうか。
オープンしてしばらくは、今よりも数を多く作っていたんですけれど、とても大変でした。体力的にも精神的にもしんどくなってきてしまって……。オープン３か月目くらいに、この状態をずっと続けるとダメだなと思い、作る数を減らすことにしました。オープンして、しばらくするとお客さまも落ちついてくるので。最初は300個以上作っていましたが、今は200個くらいです。
―――― 一週間のスケジュールは？
金曜日は開店するので、木曜日は仕込みで朝から夕方４時頃までずっと準備をしています。営業日は18時まで開けていますが17時くらいまでは販売しながら、次の日の仕込みをしています。定休日は食材の買い出しにいったりすることもありますが、月曜だけはお休みにしています。火曜、水曜は焼き菓子製造の日です。作るだけじゃなく、包装、ラベルを貼るのも時間がかかるんです。製造に加えて、買い出し、事務作業、資材の仕入れもしないといけないので、休業日も忙しいです。ケーキなどの焼き菓子は作って冷凍して、販売するときに解凍して出しています。
―――― 飲食業界で活躍するうえで必要なスキルは？
清潔不潔の認識が1番大切だとおもいます。
また、個人店ならではだと思いますがお客様へのきめの細かい対応やコミニュケーションをしっかりとる事、自分を助けてくれるスタッフを大事にする事も大切な事だなと思います。
―――― レコールバンタンキャリアカレッジへの入学を検討されている方にぜひ前向きなメッセージをお願いします。
学費は安くはないので、どうしようと悩んでいる方は多いと思います。私も数年悩んで入りました。本当にやりたい気持ちがあるのなら、ぜひしっかりとした目標と覚悟をもって進んでいかれたらと思います。年齢もあまり気にしなくていいかと思います。
目標を持って前に進まれるなら、講師の方々は親身になって相談に乗って下さいます。
<パンと焼き菓子Lis>
大阪府和泉市納花町284-1
金・土・日OPEN 11時～18時
