21.12.06 24.04.01 更新

<卒業生インタビュー> Quindi オーナー 塩原弘太さん

学生インタビュー
卒業生
東京校

 

「ウィズコロナ」の時代。 卒業生たちは、今どのような心持ちでビジネスをしているのでしょうか? 最前線で活躍 されているプロフェッショナルにヒントをもらうべく、代々木上原「Quindi」 オーナー塩原 弘太さんにインタビューを行いました。

 

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―――― レコールバンタンキャリアカレッジでのコース名、卒業年次を教えてください。

今から18年前に、レコールバンタンのカフェ科1年制コースに大学卒業後に通っていました。

 

 

―――― レコールバンタンを選ばれた理由を教えてください

調理師の専門学校だと、高校を卒業して入学してみっちりと技術を学ぶというイメージだったので今後自分が目指す方向性とは少し違うかなと思いました。

レコールバンタンは受講生の年齢層も幅広いですし、調理技術だけではなく飲食店に付随する業界の様々なことが身につくのではないかと思いました。

 

 

―――― 学びたい、身につけたい目標は何でしたか?

2003年は、カフェブームの真っ只中でした。代官山、恵比寿に、新しいカフェがたくさんできていて、どのお店も毎日たくさんのお客さんで溢れていました。僕は大学を卒業してスポーツバーで働きたかったんです。ずっとサッカーをしていたので、それを通して人が集まり皆で盛り上がれるような活気ある場所に魅力を感じていました。2002年の日韓ワールドカップも終わったばかりでしたし2006年は当時、スポーツバーは都内に片手で数える切れるほどしかありませんでした。面接を受けに行っても「即戦力じゃなきゃダメだ」と断れてしまって。料理を作れないとダメだと思ってレコールバンタンへの入学を決めました。

 

 

―――― 印象的だった講師、授業はありますか。

調理は手塚講師や船木講師に教えてもらいました。プロの技術や考え方などをすぐ近くで体験させてもらい「即戦力とはこうことなんだな」と思いました。経営の話をしてくれる現役コンサルタントの講師や、コーヒーやお茶のプロフェッショナルもいたので、いろいろなジャンルのことが総合的に学べたのが良かったです。

 

 

―――― レコールバンタンでの学びが「実践的だった」「今のビジネスに活かされている」と感じることは?

調理だけでなく、お菓子もパンもドリンクも幅広いジャンルで教えてもらったのが良かったです。その後どこに興味を持って深めていくかは自分次第なので。

 

 

―――― レコールバンタンの思い出はありますか。

レコールバンタンの授業が終わったら、男3人でレストランに通ってましたね。

「CANOVIANO」にも行ったし「HIRO」にも行きました。六本木ヒルズにできたイタリアで星付きのサドレルにも行ってみようとなりましたが、さすがに場違いすぎて入り口で引き返しました。代官山という場所も良かったと思います。

今でも、仲の良い同期とは連絡を取って、遊びに行ったりしています。仕事の話はあんまりしないですけど、同じことやっている仲間がいることは心強いですし、みんなそれぞれにスタイルが違うので刺激をもらいます。

代々木上原「MAISON CINQUANTECINQ」オーナーの丸山くんは学年が一緒で、隣のクラスでした。「料理通信」などのメディアに取り上げられるようになったのも早かったですね。恵比寿「sel sal sale」の濱ちゃん(濱口シェフ)は、同じクラスで在学中から仲が良く、彼が独立したことも刺激になりました。

先日パスタメーカーの「Barilla Japan」のセミナー講師で、濱ちゃんと、うちのシェフが招かれたこともあります。そういうのって、嬉しいものです。

 

 

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―――― 卒業後の進路について教えてください。

在学中にバイトをしていた恵比寿のイタリアン居酒屋に声をかけていただきました。2年働いた後、リストランテの料理が知りたくて、2005年2月に丸の内「IL GHIOTTONE(イル ギオットーネ)」に転職しました。当時、来月の予約が30分で埋まるような人気店でした。厨房を希望していたのですが、同じように志望する人が山ほどいました。サービススタッフなら空きがあるといわれて、「それでもいい」と働きはじめました。「次に厨房の誰かが抜けたら入っていいよ」と言われたんです。入社して一週間でキッチンの人が辞めて「明日から入っていいよ」と言われたんですが、僕としてはサービスをやる心づもりになっていたので「1年くらいサービスやります。次に空きが出たらお願いします」と伝えました。すると、不思議なことにその後はもう全然空かなくて。一方で、サービス側は先輩たちが次々に卒業してしまい、徐々に任せてもらえる仕事が増えていき、楽しくなっていきました。「IL GHIOTTONE」という名前のもとで他では出来ないような様々な経験させてもらった5年間でした。

サービススタッフとして、調理に興味を持ちながら、ワインの知識を身に着けられたのも大きかったです。クローズドキッチンだとお客さんの顔は見えませんが、厨房の外は、どのようなサービスをどのようなタイミングでするとお客さんに喜んでもらえるのかがダイレクトに分かります。またその時いた先輩方が作り出す料理を見ていて、僕はこの人たちを超えられるのか、それよりも渡された一皿をより美味しく感じてもらう方法をサービスとして考えた方がいいのではないか?と思うようになり「IL GHIOTTONE」ではマネージャーとして2010年の最終日まで働きました。

 

 

―――― その後は?

どうしてもイタリアに行きたくて。2カ月ほどイタリア各地を回りながらピエモンテ州のロエロのワイナリーやレストランを手伝わせてもらったりしました。

日本に帰国して、再びイタリア料理店で働くことも考えましたが、「丸の内での5年間と同じことをしても仕方ない」と思い、目黒の「キッチンセロ」に就職。スペインバルでありながら、日本ワインの聖地のようなお店で2年間お世話になりました。実際に日本のワイナリーを訪れたりイタリア料理とはまた違った食材を教えていただきました。「キッチンセロ」では日本ワインはもちろんですがより日本における食文化を意識するようになりました。

その後も酒屋さんに併設されたレストランで卸も小売も経験させいただき、イタリアクラフトビールのお店や熟成牛のお店で働いたり……イタリアンの繋がりの中でさまざまな機会をいただきました。その中でいろんな思いが生まれ、自分でお店を持ちたいという気持ちが強くなっていきました、レストランを出すなら「IL GHIOTTONE」の同期・安藤曜磁をシェフにと決めていました。

 

 

<卒業後について>

 

―――― 開業された時期、場所、店名、コンセプトなど、こだわりを教えてください。

 

<オープン日>

2018年3月です。

 

<店名>

Quindiは、イタリア語の接続詞で「だから」とか「それから」という意味です。日常会話でめちゃくちゃよく使う言葉で、イタリア人の会話を聞いているとすごく耳に入ってきます。僕らだからできること、この生産者さんのこの食材だからできる料理、お客さんやお店に関わる人たちの「それから」に繋がるようにという想いを込めています。

 

<コンセプト>

コンセプトは、レストランと家庭の食卓を繋ぐ存在であること。
自給率やフードロス、伝統野菜など食材としての種(しゅ)の保存、「もったいない」を減らすことなど、食における環境問題に目を向けるキッカケになるようなお店を目標にしています。Quindiで食事されたお客さんが畑や海や山などの環境の問題や電力のこと、ゴミを出さないためにどうしたらいいのか、どうしたら食材を使い切ることができるか、そうしたことが身近に感じられて、家庭に持ち帰ることができる場所であるといいなと思います。ご来店されて、食事してお帰りになる際には「そうなんだ」とか「ちょっと変えてみようかな」と思えるような場所を目指しています。

よく、「もっとグイグイ伝えた方がいい」とアドバイスされることもありますが、食事を楽しんでいただいた結果、その食体験がキッカケになりお客さんに興味を持ってもらったらいいと思っています。難しく考えていくよりもその方が自分の生活に入り込んでいくと思うので。

 

<場所>

生活に入っていける場所で開業したかったので、駅前などではなく人が住む場所とつながる商店街で物件を探していました。

 

<内装デザイン>

あえてこれまでレストランばかりを設計してきた方ではなく、インテイアショップや美術館の展示などを中心に活動してきた方にお願いしました。レストラン専門の方だとスタッフの動線や作業性などを中心に話が進むのですが、

Quindiを担当してくれた建築家さんに最初に聞かれたのは「どんなお料理をされるのか、テーブルの上に置くお皿は、どんなものなのか色合いや形・質感を教えてほしい」と言われました。一枚のお皿とお店のコンセプトから、外観や内観を発想して実装していただきました。お店にある収納は、麻と米の素材を使っていたり、随所にこだわりが詰まっています。一日のほとんどを過ごす場所なので、妥協はしたくないと思っていましたね。

ショップを併設している理由も、作り手がこだわる食材やワインと出合えて、そのであいが家庭の食卓に繋がる場所でありたいという想いからです。

 

<ロゴデザイン>

建築家の方を紹介してくださったデザイナーさんに依頼しました。

 

<想定していた客層>

家族連れをイメージしていて、お子さんも大歓迎です。なぜかというと、ちょうど僕たちの世代は結婚して子供が産まれてレストランに行きたくても行けなくてというタイミングで子どもが騒いでも許してもらえる居酒屋さんとかで外食しがちでした。だけれど、そういう人たちこそ、本当は美味しいレストランに行きたいと思っているんですよね。1万円札を握りしめて来たら、ちょっとお釣りがくるような価格帯にしたのもそうした考えからです。

お客さんも「そういうお店なんだ」と感じ取ってくれます。

 

 

―――― 特にオススメのメニューは?

「日本中の野菜」(約2名様分、約1400円)は、マリネや、ローストなど日替わりの野菜を10種類前後入った野菜の盛り合わせのようなサラダです。

一般的にレストランは、業者さんに「人参ちょうだい」とか「大根が欲しい」といったことを伝えると思うんですが、Quindiでは農家さんにお任せしていて、季節ごとの旬の野菜を送っていただいてます。なので届くまで何が入っているか分からないこともよくあります。魚もそうで、朝に魚屋さんと電話して、その日何が揚ってて美味しいのか話してメニューを構築していきます。再来店していただいた時「この前食べたアレが食べたい!」いうご要望に応えられないことも多々ありますが、それこそがQuindiが提供する価値だと考えています。シェフや厨房のみんなは大変だと思います。

 

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―――― 開業されて経験されたご苦労についてお聞かせください。

オープンする前の、お金を集める部分ですね。お店の内装や設備にはこだわりたくて、そうなってくるとお金がかかります。一日の大半を過ごす場所なので妥協はしたくありませんでした。

銀行や、政策金融公庫に資料を提出してお金を集めるときは、融資の回答が来るまでは、本当に胃が痛くて、吐きそうな毎日でした。

 

 

―――― 開業してからの大変さはどのようなところでしょうか?

Quindiを知ってもらうということ。いちばん大事な部分ですが、どういう方向でやっていくか……。SNS 、雑誌、ウェブなど色々な媒体がある中で、適切にアプローチしていくのが大変でした。先輩の紹介で、一つの媒体に紹介されてからは、とんとん拍子に他の媒体でも取り上げらえるようになりました。

あとは、ご近所付き合いです。代々木上原は古くから住まわれている方が多く、高齢者の方も多いです。一部ですが、街が変わっていくことに対して抵抗を持つ方もいます。なので音や匂いには設計の段階から気をつけました。細かなこともありますが街の方と仲良く「うちの近くにはQuindiがあってよかった」と思ってもらえるようご意見はしっかりと受け止めています。

 

 

―――― 新型コロナウィルスで経験されたご苦労は?

2020年21年はお客様に助けていただいた年でした。気にかけてテイクアウトのご注文をいただいたりワインを購入してくださる方が多かったです。

去年は、初めてのことだったので、「ああしてみよう」「こうしてみよう」と考えながらある意味楽しみながら乗り切ることができたように思います。数字の部分は大変でしたけれど。

2021年、今年のほうがキツイです。気持ちが落ちるというか、「未だ続くのか」というのはあります。まさかレストランをしていてお酒が出せない日が来るなんて思ってもみませんでした。

 

 

―――― 飲食ビジネスの面白さ、喜びについて教えてください。

お客さんに喜んでもらうとき。

生産者さんに喜んでもらえたとき。

同じくらい喜びがあります。Quindiでは、生産者さんが送ってくれた食材で、メニューを構成していきます。たまに生産者さんが食べにきてくれることもあり、自分が作った野菜を使っていると、とても喜んでくれるし、その喜びというのは、自然とお客さんにも繋がっていきます。

もしも、イタリアからワインの生産者が遠路はるばる来て、自分のワインをレストランで美味しそうに飲んでいる人を見たら、嬉しいじゃないですか。今は、コロナ禍で思うようにできていませんが……。

あと、レストランは誰もが集える場所です。おじいちゃん、おばあちゃんはもちろん、ずっと会っていない友だちが突然訪ねて来てくれることもあります。一般的には、誰かの仕事場は気軽には見られないですが、知り合いも来ることができる。それは飲食業の面白いところだと思います

 

 

―――― 飲食業界で活躍するうえで必要なスキルとはどのようなものだとお考えでしょうか?

当たり前のことを当たり前にすることだと思います。レコールバンタンを卒業した直後、レストランで任されること、できることは限られていると思います。なので、自分が何をしたいのか考えて、先輩の技術を真似したり工夫したりしながら基礎を身に付けていってください。「これをやったらすぐに上に行ける」なんてことはないじゃないですか?

僕の場合は、何も知らないサービスを突然任されて、気がつけばマネージャーと呼ばれていました。それをまっとうする為に他の休みの日はレストランに足を運び、仕事終わりには毎晩、飲食業の人たちが集まるバーに通いました。そこで自分がしてもらって嬉しかったことはお客さまにもできるように心がけてきました。お邪魔したレストランで学んだことを実際に自分でも試してみる、これの繰り返しです。いいと思うことをどんどん吸収していってください。

 

 

―――― レコールバンタンキャリアカレッジ/レコールバンタンへの入学を検討されている方に、ぜひ前向きなメッセージをお願いします!

ただ料理人になりたい人は他の学校でも技術を学べるかもしれませんが、自分でお店を持って料理もしたいしサービスも経営もしたいという人にレコールバンタンは最適だと思います。そういった技術や知識が学べる場所ですし、教えてもらうというよりも先生と一緒に学ぶという感覚の方が近い学校だと思います。

 

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<INFO>

http://www.quindi-tokyo.net

東京都渋谷区上原2-48-12 東洋代々木上原コーポ101

 TEL:03-6407-0703

OPEN HOURS:定休日なし

LUNCH 11:30〜14:00(L.O.)/DINNER 18:00〜22:00(L.O.)

 

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