21.06.06 24.04.01 更新

<卒業生インタビュー>Pollon オーナー 佐藤理佳さん

学生インタビュー
卒業生
東京校

 

「ウィズコロナ」の時代。 外食産業を担う卒業生たちは、今どのような心持ちでビジネスをしているのでしょうか? 最前線で活躍されている卒業生にヒントをもらうべく、Pollonオーナー佐藤理佳さんにインタビューを行いました。

 

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<在校中について>

 

――――― レコールバンタンキャリアカレッジでのコース名、卒業年次をお教えください。

2014年カフェオーナーコース(現:飲食店開業コース)に入学し、2015年に卒業しました。「Adam's awesome PIE」オーナー 根津さんとクラスメイトです。

 

 

――――― 入学したのはおいくつの時ですか。

51歳のときです。

 

 

――――― クラスは何名くらいでしたか。またスケジュール教えてください

日曜日、朝9時から18時まで学んでいました。

 

 

――――― レコールバンタンキャリアカレッジ東京校を選ばれた理由を教えてください。

ずっと会社員だったので、飲食については素人でした。バンタンならば会社員をしながら開店に向けて準備できると思い選びました。

 

 

――――― 学びたい、身につけたい技術は何でしたでしょうか

開業にあたって必要な知識がなにもなかったので……物件の探し方から事業計画、経営面、調理などの実践的なこと全て教えていただきたくて。

 

 

――――― 飲食のご経験はありましたか?

いえ。ただ、親が飲食業だったので、飲食をやることに関して抵抗はない環境でした。父は料理人で、何店舗か経営していました。洋食屋店、回転寿司、タクシーの社員食堂など食堂も経営していました。母も釜めし屋さんや居酒屋を営んでいたので、アルバイトで手伝ったりはしていました。

 

 

――――― 飲食を始めようと思われたキッカケは。

子どもが大学進学で京都に行き、初めて一人暮らしになったんです。シングルマザーなので、息子が5歳のときから一緒に暮らしていましたが、時間に余裕もでき「これからの人生、どう生きていこうか」と真剣に考えたんです。定年までずっと会社員を続けていくことには迷いがあったのです。具体的に、自分が何がしたいのかを知りたくて、本屋さんに行き興味のある本を探してみました。そして手に取ったのは「小さなカフェの始め方」という本でした。直感的に「これ、やりたい」と思ったんです。インテリアや雑貨が好きでしたし、食べること作ることも好きでしたのでカフェという自分の作った空間で美味しいものを作って人をおもてなししてみたいと思って。それからはヒントを探すためにカフェ巡りをして、さまざまなお店に行きました。あるとき、横浜で「アイデアのもとになるお店」に巡り会いました。マフィン、スコーンなど美味しそうな焼きたてのベイクスイーツがお皿にデイスプレイされてカウンターにぎっしり並んでいました。

お店に入った時に思わず「わあー、美味しそう!!」と誰もがわくわくする感じです。「これだ」と衝撃を受けました。店主らしい女性に、「これ、全部ここで焼いたんですか?」とたずねると「そうですよ!」と明るく答えてくれて。

なので、レコールバンタンキャリアカレッジ入学前から、マフィンの試作は始めていましたね。会社員時代から、本を見て試作し、コツコツ準備していました。

 

 

――――― なるほど。在学中、印象的だった講師は。

宮崎講師とアキラ講師、調理の船木講師。宮崎講師、アキラ講師の開業計画の授業は毎回実戦で役に立つ内容で、興味深くてとても楽しみでした。

船木講師には、卒業後にお店のコンサルティングに入っていただきました。困ったときに相談できる専門家がいるのは有難かったですね。一緒にキッシュやビスケットの試作をしてレシピを完成させたり、必要な調理器具から店内造作、経営面のこともアドバイスを受けました。現役のプロフェッショナルから助言をいただけるのは心強かったです。開店して1か月ほどは、定期的に電話をくださり、分からないことを教えてもらったりしていました。

 

 

――――― 印象的な授業は?

授業はすべて楽しくて、実践的でしたよ。社会人になってから学生になれたのも良かったです。皆さんそれぞれに目標を持ってきているので、年齢はバラバラでも仲間という感じで学べました。

一流の講師からコーヒーや紅茶の淹れ方を学べるのも良かったです。「ちょっとしたこと」を変えるだけで、こんなに美味しいんだ!と感動しました。

それから、自分たちの事業計画書を作って一人ひとりプレゼンしたこと。これはすごく勉強になりました。あらためて、自分がどんなお店を作って何をやりたいのかをよく考えることができたし、クラスメイトのプレゼンもとても参考になりました。宮崎講師とアキラ講師がそれぞれプロの視線で感想やアドバイスをしてくださったこともうれしかったです。

バンタンで教えていただいた知識は開業につながっていると思うので、とても感謝しています。

 

 

――――― レコールバンタンキャリアカレッジでの学びが「実践的だった」「今のビジネスに活かされている」と感じることはありますか?

調理では、基本のレシピや食材の扱い方など浅く広くポイントを絞って学ぶことができました。毎日マフィンやキッシュの仕込みをしながら、バンタンで習っていてよかったなあと感じています。

また、事業計画をするにあたって、「街にそぐわないお店を作ったらダメ。その街に必要な店を作ることが大切」というアドバイスが印象に残っています。出店予定の街では、どんなお店が求められているのか?どんなお客様が来て、どれくらいの金額なら、払ってもらえるのかということです。

営業している谷根千エリアは街歩きで有名な観光地のような場所ですが、庶民的な下町でもありますので、六本木や青山で流行しているものをそのまま持ってきても受け入れられません。お客様のニーズが自分のお店とあっているのか、いつも考えています。

マフィンは地元の八百屋さんに並べられている親しみのある旬の果物で作ります。そしてほかの食材との組み合わせやスパイスなどでポロンらしさを演出してコンビニやスーパーの焼き菓子との差別化を心がけています。価格も高くなりすぎないように、またマフィンの大きさもターゲット層の女性が食べやすい大きさにしています。

 

 

――――― 印象的だったイベント、販売実習などはありますか。

卒業前に、販売実習(※現在コロナ影響で中止)をしました。フルコースを提供したと思います。私はベイクスイーツのお店を出すと決めていたので、スイーツを担当しました。

デザートを盛りつけたお皿に、仕上げでフルーツソースをかけるのですが、船木講師がサッとやると見栄えよく盛れるのに、いざ、自分がすると思うようにできなかった記憶があります。イベントは楽しかったですし、プロ講師の技術を間近で感じることができました。

 

 

――――― 在学中、アルバイトなどで飲食業界の経験をされていましたか?

どこかのお店で修行したほうがいいのかとも思いましたが、していません。船木講師に「自分のやりかたで大丈夫。佐藤さんのやりたいようにやったらいい」と言っていただき、背中を押していただきました。

 

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<卒業後について>

――――― 場所、店名についてのこだわりをお教えください

オープンしたのは今から2年半前です。

 

<場所>

ネコが好きで、谷根千エリアにはネコの写真を撮りに来ていたんです。谷中は東京のど真ん中にあるのに、下町ののんびりとした雰囲気があるほっとできる街です。そして昔からあるお店が新しいお店と共存していて、どこにでもある大型店やチェーン店ではなく個人店が頑張れる街です。「どこでお店をやりたいか?」と考えたときに、大好きな谷中にしようと思いました。開業前は、練馬に分譲マンションに住んでいましたが、そこは売り、谷中の賃貸マンションに引っ越ししました。始めるなら自分の好きな街でしたいと思ったんです。でも、人気のエリアでなかなか思うような物件に巡り合えず、物件取得まで4年以上かかりました。

 

<店名>

ウチで飼っていた猫の名前です。ロゴは、イラストレーターさんに写真を渡して墨で描いてもらいました。息子からも「響きがレトロで谷中の街やお店のイメージに合う」とお墨付きをもらっています。

 

 

――――― 特にオススメのメニューについてお教えください。

マフィンですね。マフィンはいろんなアレンジができて楽しい焼き菓子です。街歩きをしながらかじるカジュアルなマフィン、美味しいハーブティと一緒に食べるおしゃれなマフィン、おやつにも朝食にもOKですし、老若男女、誰でもどこでも食べてもらえます。また、箱に入れてラッピングすればちょっとしたプレゼントにもなります。横浜でベイクスイーツのお店に出会って以来、わたしもいろいろなマフィンをカウンターいっぱいに並べて入店されたお客様をびっくりさせたいと思いました。絶対にお店のカモフラージュになると思いました。

それからずっと独学でマフィンの勉強をしてきました。

最近は、自信が持てるものを作れるようになりました。作ることがすごく楽しいんです。新しいメニューレシピを考えるのも楽しいし、試作して身近な人に食べてもらうのもワクワクします。

原材料にも、美味しくてからだにやさしいものにこだわっています。小麦粉は、北海道産の粉を使います。お砂糖も、奄美諸島のミネラルたっぷりきび砂糖です。バター、牛乳、生クリーム、チーズは北海道「よつ葉」のもの。高いですが、味に反映されるので譲れないですね。タルト、キッシュ、カスタードプリン、クッキーも作っています。

 

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――――― ドリンクのこだわりは?

コーヒーは、オーガニックでマフィンとピッタリ合うものを提供しています。紅茶やハーブティは、Mighty Leaf Tea Companyの、やはりオーガニックのもので、ラベルも可愛いし味もレベルが高くてとても美味しい。仕入れ値は高いですけれど、お客様にとても喜んでいただいています。カップ&ソーサ―は、Fire-King社のアンティークミルクガラスのものです。会社員時代に、花柄など数種類をオークションで買って揃えました。可愛くてお店の雰囲気づくりにとても役立っています。

 

 

――――― オーブンはどのようなものを使っていますか?

厨房が狭いのですが、比較的コンパクトで力がある、フランスメーカーの電気オーブンを使っています。操作が複雑でなく機能も最低限でとてもシンプル。気に入っています。展示会に足を運んだり、メーカーに電話したりして選びました。

 

 

――――― 開業されて経験されたご苦労についてお聞かせください。

開業前の話ですが、工務店、デザイン会社さんのやりとりは大変で……痩せました。授業で、施工会社、デザイン会社のマッチングサイトを教えてもらいました。大手ではなく個人店に頼んだところ、施工が予定より2か月ほど遅れてしまいました。イメージに合う内装デザインを手掛けていたので、見込んで依頼したのですが……。

ヒドいときは、作業予定日に、誰も来ていないこともありました。施工が遅れると、機材の搬入も遅れていきます。大工さんが寸法を間違えて、図面と違うカウンターを作ってしまったこともありました。家賃も発生していたので、本当に大変でした。

最終的に、デザイン面は自分の理想通りになりましたが、工事そのものに関しては、とても辛い想いをしました。実際に施工する業者の「質」を見極めるのは至難の業です。対等にものが言えるくらい、事前に勉強しておくべきだったなと感じています。

それから、自分としてはカフェを営業しているつもりですが、お客様はマフィン屋として認識されている方がほとんどということがあります。

狭いので席数も少なく、マフィンをお店のウリとして前面に出しているので無理もありませんが…美味しいハーブティやジェラートやプリンも出して、店内もかわいらしく、心地よさを演出してカフェ利用を増やしたいと努力していますが、多くのお客様はマフィン屋さんとしてのポロンを求めていると感じています。自分が進みたい方向性と現状とのギャップをどうするか……課題です。

 

 

――――― コロナウィルスの流行で、工夫された点、心がけていらっしゃることについて教えてください。

1度目の緊急事態宣言発令中は、狭いお店なので不安に思ってカフェはクローズしました。レジに、透明なビニールシートで仕切りをつけ、消毒液も設置しましたね。

しばらくはテイクアウト営業のみをしていたのですが、マフィンがよく売れました。出かけられないので近所で美味しいものを食べたいという方が多かったのかもしれません。テイクアウトとカフェ両方やっていて良かったと感じます。

現在、カフェは、受け入れる人数を減らして営業しています。外国人観光客がいらっしゃらないためカフェの売り上げはよくない状況が続き、苦戦中です。

店内は狭いためテイクアウトのお客様が2組入ると、すぐ密になるのでお店の入口で持っていただくこともあります。

 

 

――――― 飲食ビジネスの面白さ、喜びについてお教えください

ものづくりがすごく楽しいので、仕事にできていることが喜びです。あとは、お客さんの反応がダイレクトに返ってくること。例えば、イートインでマフィンとコーヒーを召し上がってお帰りの際に「美味しいから5個ボックスも買っていく!」とテイクアウトしてくださったり、「昨日来たけれど、美味しくてまた買いに来たよ」という方もいて、直接反応を見られることが励みになります。ご期待にそえるように、美味しいものを作らなきゃ、と思います。

それから下町なので気さくなお客様が多くて、常連さんのお客様とは親しくおしゃべりをすることもあります。今日のお天気の話から街のいろいろな情報まで。ずっと一人で仕事しているのでうれしくもあり、とても楽しい時間です。

 

 

――――― また、大変さはどのようなところでしょうか。

日によって、波があること。売り上げは、お天気や季節に左右されるのですが、差が激しいです。たくさん余ってしまう日もあれば、あっという間に売り切れて、10人以上のお客さんを断らざるを得ない日もあります。昨日も11時半にマフィンが完売しました。10時に開店なんですが、昼前には5個入りボックスが5箱売れました。

足を運んでくださった方にお断りするのは申し訳ないですし、余ってしまう日は、一つひとつ丹精を込めて作っているので悲しい気持ちです。お店初めて2年半になりますけれど、お客さんの流れを読むのが難しいですね。

でもこれは「この業界アルアル」で、どのお店でも皆さんが苦労してることだと思います。メンタルを鍛えていかねばと日々思います。

それから自分のやりたいようにやれる反面、何もかも一人で考え決断し実行しなければならないことも、大変だなぁと感じています。

 

 

――――― 一日にどれくらいの数を仕込みますか?

マフィンレシピは全部で80種類以上あります。そのなかから季節のものを中心に日替わりで10種類くらい焼きます。土日祝日は60~70個、キッシュは5~6個、ビスケットは3個ほど。他にフルーツタルトが加わるときもあります。プリンは、1日5、6個くらいですね。平日は、土日の半分くらいの量ですが天気が良ければ多めに焼いたりもします。焼き菓子の売り上げは、全体の半分以上を占めています。

 

 

――― 飲食業界で活躍するうえで必要なスキルとは?

自分の場合は、自分にしか作れないメニュー(マフィンレシピ)でしょうか。

でも毎日が実践と勉強なので、必要な知識や技術は仕事をしていくうちに失敗しながら身に付くことが多かったです。手探りで一つひとつ積み上げていきながら自信がついている気がします。

 

 

――― レコールバンタンキャリアカレッジへの入学を検討されている方に、ぜひ前向きなメッセージをお願い致します!

夢を実現したいのであれば、レコールバンタンキャリアカレッジを利用するのはひとつの方法だと思います。

わたしはここで学んだことが基礎力になり、自信になりました。開業するためには、まず自分が何をやるべきなのかを教えていただけたから、動き出せたし、そこが踏み台になって飛べた感じがあります。

同じ目的を持つ仲間や、知識と経験が豊富な講師との出会いもすべて財産になると思います。授業料は安くないけれど(笑)投資だと思ったらよいのでは……?

 

 

Pollon

東京都 台東区谷中2-18-6

@pollon3956

https://pollon.link

 

 

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