21.03.04 24.04.01 更新

<卒業生インタビュー>「HOMEROASTING 7325 COFFEE」 オーナーバリスタ 亀井雄介さん

学生インタビュー
卒業生
東京校

「ウィズコロナ」の時代。外食産業を担う卒業生たちは、今どのような心持ちでビジネスをしているのでしょうか?

最前線で活躍されている卒業生にヒントをもらうべく、HOMEROASTING 7325 COFFEE オーナーバリスタ亀井雄介さんにインタビューを行いました。

 

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<在校中について>

―――― レコールバンタンキャリアカレッジでのコース名、卒業年次を教えてください。

2011年にカフェ&バリスタコースに、1年間通っていました。

授業が始まる前から、入学してすぐに意気投合した友達と水を使ってラテアートの練習をしていましたね。コップに水を入れて、ピッチャーで水を注ぐんです。注ぐ感覚は一緒なので、ピッチャーの傾け方とか振り方とか、ラテアートの感覚を体でつかむようにしていました。あとは、エスプレッソマシーンでミルクを泡立てるときも、水で練習していましたね。透明なのでノズルを水面のどこまで入れるかも確認しやすいんです。

 

―――― レコールバンタンキャリアカレッジ東京校を選ばれた理由を教えてください。

それまでは、旅行会社で添乗員として働いたり、スイミングスクールインストラクターをしたりしていました。会社ならではの「上下関係」が苦手で。上司がいて後輩がいて、という環境が自分に合っていないと感じ、「このまま仕事を続けてもつまらない」と思うようになりました。そんなとき、スイミングスクールで事務として働いていた妻と出合いました。彼女は何でも相談できる存在で「いずれ、ふたりで仕事をしたい。自営業なら上下関係もないし、人を雇わずに自分たちでやりたいね」という話になりました。彼女はパンやクッキーを作るのが上手だったので、それなら僕はコーヒーだなと。もともと、コーヒーがすごく好きでしたしね。ただ、当時は手に職がない状態だったので「1年だけ学校にいこう」と決めて、ネットで調べてレコールバンタンキャリアカレッジに資料請求しました。

説明会に行き、実力のある講師たちだと感じ、すぐに決めました。実際にプロとして活躍している方が教えてくれるのもいいと思いました。学費も、安くはないけれど払える金額でした。

 

―――― 学びたい、身につけたい目標は何でしたか。

ノウハウと技術です。嫁に、ケーキやクッキーは任せて、僕はコーヒー専門でいこうと決めていました。

在学中に長男が誕生し、年齢も20後半だったこともあり、調理の講師からは心配されていました(笑)就職活動をするつもりはありませんでしたが、「仕事しないとまずいぞ」と思い、少しだけチェーンのコーヒーショップでアルバイトしました。

 

―――― 印象的だった講師、授業はありますか。

入学前に、初めて校舎に行ったときに篠崎講師が対応してくれました。目の前でラテアートの実演を見せてくれて、とても優しい先生だな、信用して大丈夫だなと安心しました。卒業後も、エスプレッソマシーン選びの相談に乗ってくれて、「この製品がいい」というアドバイスをメールしてくれましたね。

印象的だった授業は、ラテアートの技能チェックです。制限時間内に一人ずつラテアートを提供し、僕が作った一杯が、いちばん評価が高く、優勝賞品としてイタリアのコップをいただきました。今でもそのコップは大切に取ってありますよ。一緒に朝早くから練習していた金子くんも2位に入賞し、ふたりで「頑張って良かったな」と。嬉しかったですね。

 

―――― レコールバンタンキャリアカレッジでの学びが「実践的だった」「今のビジネスに活かされている」と感じることはありますか

オープンすること自体は、誰でもできると思いますが、ノウハウが全くない状況で開くよりも、勢いと自信がつきました。レコールバンタンキャリアカレッジに通ったことで、「やらなきゃ!」という気持ちが強くなりましたし、自信と安心感を持てたと思います。

江澤講師には、紅茶やドリンクの開発について教えていただきました。役に立つ知識が多かったと感じます。

 

―――― 印象的だったイベント、販売実習などはありますか。

恵比寿・ボヌール校舎1階で自分たちのお店を出す、という実習がありました。そのとき店長を務めたんですが、やはり、人をまとめる仕事は合っていないと実感(笑)クラスメイトには「本番、頑張ろう!」とメールしたり、リーダーとしての仕事は全うしていましたが、僕自身は自分の思った接客を自由にしたいタイプだと再認識しましたね。

 

―――― 在学中、アルバイトなどで飲食業界の経験をされていましたか?

卒業後は、1年間、スターバックスでアルバイトしていました。店長にも「1年後に開業する」という意思を伝えて働いていました。

スターバックスは、業務をこなしていれば自由に接客させてくれるのが性に合っていました。そこまで忙しくないお店だったので、テラスでワンちゃん連れのお客さまと会話したりしていました。接客面で、より開業のイメージをつかめたと思います。

 

<卒業後について>

―――― 場所、店名、コンセプト、お客さまの層について教えてください。

<場所>

今の店舗を見つけるまえに、実は失敗しているんです。商店街のど真ん中で、10畳ほどの元お寿司屋さんの物件がありました。契約寸前まで話が進んでいたんです。友達に話すと「あの店は食中毒で辞めたんだよ」と教えてくれました。でも僕は、不動産屋さんから何も聞かされていなくて。もしも入居していたら「食中毒のお店」という印象がついてしまうところでした。大屋さんが不動産業者に口止めをしていたそうで……、僕は「前のテナントは商売に満足して辞めた」と伝えられていたんです。

途方に暮れていたところ、商店街の端を入ったところにある今の場所を見つけました。ガラス張りの雑貨屋さんで、雰囲気も良かった。しかも、管理しているのが偶然、自分の住んでいるアパートの管理会社でした。当時、鵠沼近くのアパートに住んでいたんですが、管理している会社さんとも仲が良かったので即決。開業したのは2013年です。

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<店名>

東日本大震災のような怖い津波がこないように、波がニコっとしていますとようにと願いを込めて73(なみ)25(にこ)と名付けました。

<五右衛門風呂焙煎所について>

2年前、焙煎所を作りました。焙煎所を始めようと思ったときに、煙が出るし、周りにお家がなくて、ある程度のスペースを確保できる場所は……と考えて曾祖父の小屋をフル改装することにしました。曾祖父が建てた小屋には、五右衛門風呂があり、農具置き場として保存されていましたが活用されておらず「勿体ないなぁ」と感じていたんです。

焙煎所は、神奈川県藤沢市菖蒲沢にあります。お店から車で25分くらいの場所で、週2回3時間ほど焙煎しています。現在は、10店舗ほどに卸を行っています。

 

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<客層について>

観光客は、鵠沼海岸駅を出て海側に行きます。僕の店は逆サイドの右側のいちばんはじっこなので、あんまり観光客は来ません。今になっては、それが良かったと思います。観光客がメインだと、夏はすごく混んで冬は誰も来なくなっちゃう。8割以上は、地元のリピーターのお客さんです。

僕たち家族は、お店の2階に住んでいます。商店街はチェーン店がなく、雰囲気もいい。海が近いのでラフな方、サーフィンする方が多いですね。僕も嫁もサーフィンするし、プライベートもとても充実しています。

 

―――― 特にオススメのメニューについて教えてください。

ブラックコーヒー(380円~・税込)は生豆から仕入れて焙煎しているので、鮮度がとても良い状態で提供できます。風味もいいですよ。いちばん人気は、カフェラテ(380円~・税込)。ワンちゃんと来ているお客さんには、ワンちゃんの似顔絵を描いてあげます。赤ちゃん連れなら赤ちゃんの顔か、お母さんが子どもの名前を呼んでいたら名前を描きます。ラテアートは、みんなとても喜んでくれて写真をバシバシ撮ってくれますね。

フードでは、嫁が作る「濃厚レアチーズケーキ」(390円・税込)が人気で、ブラックコーヒーとの相性も抜群です。オリジナルブレンドと濃厚レアチーズケーキを毎日食べに来てくれるおじいちゃんもいます。

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―――― 焙煎について教えてください。

<豆について>

1キロ単位から買える北海道の早川コーヒーさん、SPECIALTY COFFEE WATARUさん、ユーエスフーズさんから仕入れています。会社によって最低5kg以上の注文とか決まりがあるので使い分けていますね。まずは、サンプルを送ってもらって生豆の状態をチェックすると良いと思います。同じコロンビアでも、この会社のほうがいいとか、あるんですよ。

<焙煎について>

焙煎機は、ワイルドコーヒーさんのものを使っています。全部分解して掃除できるので、メンテナンスの人を呼ばなくてもいいのが魅力。焙煎機はワイルドコーヒーさんで買って、その方に焙煎について教えてもらいましたが、あとは本を買って独学で行っています。微調整を繰り返していくと、味は分かってきます。焙煎のときは、1分ずつ計測して表を作るんですが、繰り返していくうちに、グラフの精度も上がっていきます。1ハゼ(※1)の音はパチパチ、2はぜはピチピチと分かるようになりますし、音でも豆は教えてくれます。

※1……焙煎によってコーヒー豆から炭酸ガスが発生。化学反応によって豆が“裂ける”現象のこと

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―――― 開業されて経験したご苦労について教えてください。

オープン当初、お客さんが来ないこと。

来るには来るんですよ、でも、友達と親戚が「おめでとう」と言いに来てくれる賑わいで、勝負はそれが落ち着いた後。そこから現実が始まります。お店の目の前にあるバス停で、チラシを渡して、「ここにお店があるよ」ということが知れ渡るまでに時間がかかりました。

 

―――― コロナウィルスの流行で、変化したことはありますか?

ママさんたちの来店は、ここ1年減っています。でも、頑張って店内にお客さんを入れようとは思っていません。家族5人で生活ができて、家賃が払えるだけの売り上げがたてばいいと思っています。なので、イベントを行うとかも考えていません。

変わったことは、コロナ流行前からコーヒー豆の発送をしていて、その注文は増えていますね。以前、7325 COFFEEに来てくれた人が思い出してくれて、コーヒー豆の発注をしてくれることが多いです。きっと「応援しよう」という気持ちなのだと思います。

ウチの場合は、オンラインショップ形式でカートに入れて……というスタイルではないんです。メールに欲しい豆を書いて送信してもらいます。ウチからも、機械的な感じではなく、文章で返信するようにしていて、個人店ならではのやり方を大事にしています。お代は、コーヒー豆が届いてから、振込用紙で振り込んでいただく形式ですが、これまでに振り込まない人はゼロ。信頼関係で成り立っていますよね。BASEでショップを作ったときは発注がゼロだったので、今のやり方がウチには合っているんだと思います。

 

―――― 飲食ビジネスの面白さ、喜びについて教えてください。

いちばん面白いのは、飲食をしていなければ出会えない人と出会えること。何回も来ているうちに、友だちになっていることも多い。すっかり仲良くなって、「そういえば、あの人は5年前に来たお客さんだよね」みたいな嬉しい出会いがたくさんあります。お客さん同士が仲良くなることもあるし、ウチは出会いをすごく大切にしています。

 

―――― 大変さはどのようなところでしょうか。

売り上げが大変なときもあるけれど、子どもの運動会のときは営業を休みにしたり、時間を短縮したり自由にできるのはいいところです。

 

―――― 飲食業界で活躍するのに、必要なのはどのようなスキルだと感じますか?

コーヒーの味や、料理の美味しさはもちろんそう。でも、お客さまと目を見て勇気を持って話すこと。接客はとても大事だと思います。個人店なので帰り際に一声掛けるように心がけています。話し返してくれると、とても仲良くなれたりもします。

接客が何よりも大事。僕自身もいろんなお店に行きますが、味が良くても、最後店員さんが目も合わさない態度だとちょっとなぁと思うし、気持ちが入っていないとすぐに分かります。

 

―――― レコールバンタンキャリアカレッジへの入学を検討されている方に、ぜひ前向きなメッセージをお願い致します!

入ろうと思った気持ちが、既に一歩踏み出していると思います。そのまま歩みを止めずに全身で入っていってほしい。入学して、開業しないという人もいるかもしれないけれど、行かなくてダメになるよりも、行って失敗したほうがいい。僕も、レコールバンタンキャリアカレッジに入ろうと決めたときの勢いのまま、今日まできていると思います。一歩踏み出すのはとても勇気がいるけれど、その一歩を止めずに進んでいってほしいです。

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※鵠沼海岸での営業は3月半ばまで、6月に五右衛門風呂焙煎所横にショップを移転予定です。

 

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HOMEROASTING 7325 COFFEE

神奈川県藤沢市鵠沼海岸3-2-21

0466-51-7561

自家焙煎 | 五右衛門風呂焙煎所 | 日本 (goemon-7325coffee.com)

@7325goemon

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