• <卒業生インタビュー>三角屋根 パンとコーヒー オーナー 中澤 一道さん、中澤 ゆかさん

    2012年07月05日(木)

「ウィズコロナ」の時代。

外食産業を担う卒業生たちは、今どのような心持ちでビジネスをしているのでしょうか?

最前線で活躍されている卒業生にヒントをもらうべく、神奈川県葉山町にて「三角屋根 パンとコーヒー」を経営する、オーナーバリスタ・中澤 一道さん&オーナーブーランジェリー中澤 ゆかさんにインタビューを行いました。

 

 

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<在校中について>

 

 

――― 一道さんが学ばれたコースは?

 

一道さん「バンタンデザイン研究所キャリアカレッジ雑貨コース(※)で1年間学びました。卒業して、27歳のときに植物を取り扱う企業に就職しました。大手インテリアショップに卸をしていて、他の花屋さんとは違う点に魅力を感じました。2年ほど勤めてから、友人と開業をするためレコールバンタンキャリアカレッジに入学しました」

 

 

――― バンタンデザイン研究所キャリアカレッジに入学時は、おいくつでしたか。

 

「25 歳です。大学を卒業後、イギリス、ニュージーランド、オーストラリアなどに計2年留学した後に入学しました」

 

 

――― 入学された理由は?

 

「留学に行く前から、輸入雑貨のお店をやりたいと思っていたからです」

 

 

――― バンタンデザイン研究所キャリアカレッジで印象に残っている講師は?

 

「お名前は忘れてしまいましたが、無印の立ち上げに携わっていた講師に、商品の陳列方法や、プロダクトデザインのポイントを学びました」

 

 

――― バンタンデザイン研究所キャリアカレッジでの学びが、現在のお店経営に活かされているなと感じることはありますか。

 

「『商品の陳列は、三角形を意識するといい』と学んだことです。インテリアショップの陳列を見てみると、どんなお店も三角形を意識していることが分かります。ショーケースの真ん中は、ゴールデンスペースと呼ばれていて人間がいちばん見やすいところなので、そこにオススメを置いたりしています。

『三角屋根 パンとコーヒー』ではエントランスから入って左角に植物が置いているのですが、これは左角に置いているものの印象が強く残るから。

また、外からは庭が見えませんが、中に入ると庭が広がっていて、心地よさを感じる間取りになっています。人間の目線の運び方のセオリーは変わらないので、そうしたポイントを学べたことは良かったです」

 

 

――― 在校中、販売実習などはありましたか。

 

「校舎の1Fでオリジナルアクセサリーを20点ほど作って販売しました。自分が作った作品が売れるのは嬉しいですし良い経験になりました」

 

 

――― 在学中、他の専攻のメンバーと関りはありましたか?

 

「ありました。別専攻で学ぶ人と意気投合し、お店を開こうという話になったんです」

 

――― レコールバンタンキャリアカレッジに入学されたキッカケは?

 

「友だちと開業を計画していたときに、飲食部門は友人に任せるつもりでした。飲食部門で収益を上げて、雑貨は付随してやればいいと思っていましたが、飲食について全く知らないので基礎知識を身に着けておいたほうがいいだろうと考え、29歳で、2年制カフェオーナー専攻に入学しました。

ですが、その友人の家業の都合で、計画は頓挫してしまいました。また、輸入雑貨店のオーナーさんは、全国あちこち飛び回れるようなフットワークの軽い人が多い印象でした。自分は、フットワークが軽いほうではなく、どちらかというと考える方が好きなので、輸入雑貨店開業の道をイメージできなかったという理由もあります」

 

中澤ゆかさん(以下、ゆかさん)「私は、カフェを開業したいと思ってカフェオーナー専攻に入りました。高校卒業後、撮影・映像編集を学ぶ大学に入りましたが、実際に撮影していくと、自由に制作するイメージとは異なり、たくさんの制約があり、仕事も緻密で自分が目指す道とは違うと感じました。将来を真剣に考えた結果、大学を辞めました。

父からは『専門校に入学してもお店をできるわけではない』と反対されましたが、レコールバンタンキャリアカレッジに入ることは決めていたので、交渉を重ねました。結果、学費は出さないけれど入学していいということになり、アルバイトをしながら20歳で入学しました。父からは『開業できない』と言われて、とても腹が立ちましたが、それもやる気というか、モチベーションにつながったと思います」

 

 

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――― クラスは何名くらいでしたか?


ゆかさん「12人くらいだったと思います」

 

 

――― レコールバンタンキャリアカレッジを知ったキッカケは?

 

ゆかさん「雑誌に広告が載っていて、話を聞きに行ってみようかなと思いました。来校したときに淹れていただいたウェルカムカフェラテが、とても美味しかったです。本格的なコーヒーは味わったことはありませんでしたが、感激したことを覚えています」

 

一道さん「もともと、バンタンデザイン研究所に通っていたので、スクールの存在は知っていました。体験イベントで、篠崎講師が優しく接してくださったのも良かったです」

 

 

―――― 学びたい、身につけたい目標は何でしたか?

 

一道さん「僕は、明確なものは無かったです。包丁を握ったこともありませんでした」

ゆかさん「私も、調理をやるとは思っていなくて、経営だけを学ぶものだと思っていました。入学まで調理はしていませんでしたが、手塚講師に教えていただき、パスタ作りなどにハマりました」

 

 

―――― 印象的だった講師、授業はありますか

 

一道さん「『ショップシミュレーション』が印象に残っています。自分がやりたいお店を一枚のボードにまとめて発表する授業です」

 

ゆかさん「架空のお店を想定し、どんな場所で、どんなメニューを出すのか、クラスメイトのアイデアも知れたのが良かったです。実は、授業で『食パン専門店 三角屋根』というコンセプトを考えていました。もともと実家が狭かったということもあって、家にこだわりたいという想いがありました。こんな家に住めたらいいなぁと思って考えた理想が、『三角屋根』だったんです。販売するパンも、考えていました」

 

一道さん「僕はクラフトチョコレートのお店を提案したと思います。オーストラリアのチョコレート屋さんが印象に残っていて、それを参考にしました」

 

 

――― 卒業後の進路について教えてください。

 

一道さん「BE A GOOD NEIGHBOR COFFEE KIOSKスカイツリー店に、バリスタとして入社しました。決め手は、奥さんでも飲める美味しいコーヒーを提供していたから。入社して『そのお店が何をポイントにおいて運営しているか』を意識しました。BE A GOOD NEIGHBOR COFFEE KIOSKの場合、5坪のコーヒースタンドからスタートしています。母体の会社があり、ブランドを作り上げることに注力していることが分かりました。日本におけるサードウェイブコーヒーの走りのお店なので、どのようにブランディングしているかはとても参考になりました。僕は仕事を2年で辞めて、1年間は開業準備に専念しました」

 

ゆかさん「都内のベーカリーに就職し、製造を3年間経験しました。大量仕込み、大量生産の技術を学ぶつもりでした。どんな機械を使っていて、発酵の方法なども見ました。お店で働くことで、内側が分かりますし業者さんとの繋がりができるので、個人的には開業前に働いたほうがいいと思います。卸業者さんには開業後もお世話になっています」

 

 

――― おふたりで開業することは決めていたんですね。

 

一道さん「そうですね。開業することありきだったので、結婚は別で考えていました。でも資金面を考慮したところ、一緒にお店をやるんだったら結婚しないのも……という流れになり、籍を入れました」

 

 

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<卒業後について>

 

 

―――― 現在の場所を選ばれた理由は?

 

一道さん「鎌倉の不動産屋さんに見つけてもらいました。僕は雑貨屋さんやりたいと思っていたときから、物件を探していました。都内は、自然が多い場所だと狭くて、家賃も高いし決め手がないなと思っていました」

 

ゆかさん「面白い物件を持っている不動産屋さんなので、信頼して任せていました。森戸神社に近い物件も候補でしたが、検討している間に別の人が契約してしまったんです。葉山を気に入っていたので諦めたくなくて、海の近くで探し続け、現在の場所に出合いました。」

 

 

―――― 開業された時期、場所、店名、コンセプトなど、こだわりをお教えください。

 

<オープン>

 

一道さん「2016年5月オープンです」

 

<コンセプト>

 

ゆかさん「『パンとコーヒー』を提供することは、決めていました。ただ、最初から明確なコンセプトを設けていたわけではありません」

 

<場所>

 

一道さん「色々な物件を見てきたので、物件の個性に合わせて、お店を考えようと思っていました。マンションの一階も、居抜きでもいいと思っていました。現在の場所は、更地の状態で見つけました」

 

<ロゴ>

 

一道さん「千駄ヶ谷の『PAPIER LABO.』店主・江藤さんにお願いしています。『ブランディングしていくのであれば、名前はなんでもいいと思います』という意見をもらい、『ショップシミレーション』授業で考えた名前を付けました」

 

<デザイン>

 

一道さん「内装は、職場の同期の旦那さんにお願いしました。友だちと、旦那さんと、設計士さんとみんなで考えました。時間はかかるけれど、一つひとつさまざまな角度から検証しました。元は更地だったので、どの方角に入り口を設置するのか?上に住むのか、住まないのか?駐車場、庭の有無も、一つずつ検討して決めていきました。時間的にリミットを設けなかったことと、信頼できるメンバーにお願いしたことは結果的に良かったです。考え始めてから、完成まで約1年半かかりました」

 

ゆかさん「内装のデザインを含めて、夫と意見がぶつかることはありませんでした」

 

<客層>

 

一道さん「世田谷から来る人が多いです。江の島は、比較的若い観光客が多い印象ですが、葉山は落ち着いたお客さまが多いです。もともと葉山を知っている人や別荘族、社長さんなども多いです」

 

<焙煎機>

 

一道さん「PROBAT社の半熱風式焙煎機を選びました。葉山という土地柄と、雰囲気が合っているのではないかと考えました。熱風式は、スッキリした味が出ますが、豆を入れるときの吸引音がうるさく、近所迷惑になってしまうと思い辞めました。5泊6日の『焙煎合宿』に参加した際に、好きな焙煎機を使って、好きな豆で焙煎し、ブラインドでカッピングしたのですが、その体験を通して決めました」

 

<お庭>

 

一道さん「庭師の人にお願いしています。今は、壁面緑化をやりたいと思っています。ツタが生えてきているところです」

 

<店内のお花>

 

一道さん「常連さんが『センスがいい花屋さんがある』と紹介してくれたのが、逗子駅前にお店を構えるDande Lion Petitさん。5月はドウダンツツジ、6月はヒマワリなど季節のお花を飾ってくれています」

 

 

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―――― メニュー構成は?

 

ゆかさん「開業当時、パンは4種類でした。食パン、フランスパン、カンパーニュ、クロワッサンで、その生地を使って少しずつ調理パンが増えていきました。メニューはシンプルに『自分たちが食べたいもの』。食べたいから作っているという感じです」

 

一道さん「コーヒー豆は、ブレンドが増えました。パンは、食べた人全員が美味しいと分かるパンを作るようにしています。想像を超えた味わいに、人は感動すると思います」

 

 

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―――― 開業されて経験されたご苦労についてお聞かせください。

 

ゆかさん「2015年に9月に長女を出産して、2016年5月にオープンだったので、仕事と子育てが大変でした。保育園が決まるまでは子どもの月齢も低いので、おばあちゃんに託していました。なので、上手くやっている人がすごいなと思います。

時間的に余裕がなくなると、不機嫌なときも多くなっていると思うので、常に自分をご機嫌でいさせないといけないなと思います。今も勉強中ですし、仕事と子育ての両立が課題です」

一道さん「開業してみて、住人がこんなにいっぱいいるんだ、というのが意外でした。二人でゆっくり営業していくことをイメージしていましたが、お客さんが絶えず並ぶお店になり、仕事に追われました。カップもテイクアウトを用意し、基本テイクアウトにしないと回らなくなりました。お客さんにセルフサービスでお皿を上げ下げしてもらうようにしています。夏は、特にお客さんが増えるので有難いですが、導線を修正するのが大変でした」

 

 

―――― 飲食ビジネスの面白さ、喜びについて教えてください。

 

一道さん「専門がコーヒーなので、『コーヒーが美味しい』と、喜んでもらえると嬉しいです。パンは、妻に教えてもらったレシピで作っています」

ゆかさん「お客さまが、この空間に来て楽しんでいる姿を見られるのが好きです」

 

―――― 大変さはどのようなところでしょうか。

 

ゆかさん「スタッフ教育ですね」

 

一道さん「スタッフさんが10名ほどいらっしゃるので、気持ちよく仕事をしてもらうことを考え、お店の想いを共有すること。もう一つは、僕がパンを作るようになってから寝れていないので今はそこが大変です。睡眠時間が削られています」

 

 

――― 飲食店巡りでは、どのようなポイントをチェックされたのですか。

 

ゆかさん「3つあります。1.トイレ、2.無料の水の美味しさ、3.段ボール、タッパー、プラスチックのまな板が見えていないかどうか。トイレが汚くて狭いところは衛生管理を疑ってしまいますし、味も美味しくないという印象です。また、無料のお水も浄水器を使っているお店で提供されるものは美味しいです。そして、お客さまの目に見えるところには、タッパーなど生活感があるものは、できるだけ置かない方がいいと思います。見えないスペースならいいと思いますが、テーマパークと一緒で現実感を出さない方がいいと思います」

 

一道さん「開業するにあたり失敗したくないので、お店の悪いところを意識的に見るようにしました。そうすれば、悪い点は改善することができます。味だけ見ていたら、発展がないと思います」

 

――― 今後の目標は?

 

ゆかさん「目標は決めていません。いつ辞めてもいいという覚悟を持ちながら、一日一日を大事にして営業していきたいです。私の性格上、目標を決めるとダレてしまうので、美味しいと思えるものをしっかりと提供することを大切にしていきたいです」

 

―――― レコールバンタンキャリアカレッジへの入学を検討されている方に、ぜひ前向きなメッセージをお願いします。

 

ゆかさん「食材の扱い方から調理まで、幅広く学びました。食材に対する興味も育ったと感じます」

 

一道さん「同感です。レコールバンタンキャリアカレッジに入ったら、飲食業界で活躍するスキルが身に着くと思います。包丁の握り方から、キッチンでの立ち方、また人の後ろを通るとき『包丁、通ります』など声を掛けることまで、細かく教えてもらえます。調理道具の扱い方や、調理場を綺麗にしながら仕事をするといった基本は、『基本を知らないお店』で働いても学べません。一流シェフから指導を受けられるので、お店を長く続けたい人ほど身に着けておくと良いと思います」

 

 

 

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<SHOP INFO>

三角屋根 パンとコーヒー

神奈川県三浦郡葉山町堀内1047-3

9:00〜17:00(期間限定)

046-884-9113

Instagram : @sankaku.yane

HP : http://sankaku-yane.net/home/

 

 

※……現在、雑貨コースは、空間デザインコースのカリキュラムに含まれています。

さらに詳しいスクールの特長はパンフレットに
記載しています。お気軽にお問い合わせください。

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