• <新しい飲食の形>実店舗を持たずに、自身のブランドを確立するバリスタ「andoh coffee」オーナーバリスタ 安藤久雄さん

    2021年08月20日(金)

 

実店舗を持たずに、無店舗経営、間借り経営、シェアキッチン、流し形式で自身のブランドを確立する料理人が増えています。

レコールバンタン在校生も、店舗を持たない“ファントムショコラブランド”「RÉCITcacao」をスタート。2018年開校「トシ・ヨロイヅカ」オーナーシェフ鎧塚俊彦氏が監修する「グラン パティシエ学科」の選抜メンバーが展開しています。

 

なぜ、そのような形式が支持されているのでしょうか。気になるメリット、デメリットは?

 

今回は、東京・吉祥寺の自家焙煎コーヒーショップ「andoh coffee」(@andohcoffee)オーナーバリスタ安藤久雄さんにインタビューしました。現在のスタイルを確立した経緯を話してくれました。

 

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――――― いつから、「andoh coffee」を始めましたか?

2019年9月からです。

 

 

――――― オープンした理由を教えてください。

吉祥寺のTACOS Shop(@tacosshop_kichijoji)の常連だったんですが、2年ほどカフェで働いていた経験がありました。話しているうちに「定休日にコーヒーショップをやってみたいね」という話になったんです。コーヒーが好きだったので、自分でお店をやってみたいなと思っていて、興味がありました。

 

 

――――― それまでのお仕事は?

元々は印刷会社に7年いました。職業訓練校で勉強をしてから、コーヒー屋を経営しているウェブ制作会社に入り1年勤めました。バリスタとして働いたのは30歳くらいからですかね。もともと、コーヒーが大好きで、家で豆を焙煎したり、コーヒーを飲み歩いたりしていました。

 

 

――――― 営業するときは、どのような機材を持ちこんでいますか。

毎回持ち込むものはありませんが、お店に置いているボックスの中に必要なものを収納しています。メニュー表、スケール、温度計など細々したのもですね。1階の棚には電気ケトル、電動ミル、カップなどを置かせてもらっています。お店には2階があって、はしごで行けるようになっているので、細々したのもを収納したボックス、珈琲豆の在庫など、かさばる物は2階に置かせてもらっています。

 

 

――――― 営業時間について教えてください。

当初は、タコスショップの定休日のみ開こうというお話でしたが、「コーヒーショップは毎日空いていたほうがいいよね」という話になりました。最初は午前中だけの営業でしたが、今は朝8時半から夕方4時〜5時までオープンしています。タコスショップは、夜のみの営業なのでその前の時間というイメージですね。月曜は定休日です。

 

 

――――― 事業の括りとしては?

個人事業主です。

 

 

――――― 開業にあたって、かかった費用について可能な範囲で教えていただけますか。

電動ミル、電気ケトル、カップなど細々したものを含めて10万円以内だと思います。印刷会社やウェブ制作会社で働いていたのでデザインソフトが使えるので、ブランドロゴは自分で作りました。

 

 

――――― ロゴが△マークなのは、なぜですか。

シンプルな感じがいいなと思っていたので。△は、Andoh のAっぽいというのもあります。

 

 

――――― 焙煎所も間借りされているとうかがいました。

そうなんです。スタート時の2019年9月から12月頃までは家で小さい手廻しの焙煎機で焙煎していました。2020年1月から11月からまで「TARO’S COFFEE ROASTERY」さんで借りていました。

現在は、「BE A GOOD NEIGHBOR COFFEE KIOSK」さんで借りています。

 

 

――――― 焙煎機を借りる理由は?

家の手廻しの小さい焙煎機だと少量ずつしかできないので限界を感じたからです。どうにかしたいなと思っていたときに、SNSでTARO’S COFFEE ROASTERYさんの「シェアロースタ―」の情報を見つけました。「BE A GOOD NEIGHBOR COFFEE KIOSKさんは、ご縁があって使わせていただいております。焙煎機は、営業を終えた17時頃から借りています。

 

 

――――― 一回の仕込み量は。

焙煎量は大体10kgから14kgくらいですね。

 

 

――――― 焙煎はどのように学んだのでしょうか。

何年か趣味で独学でやっていました。TARO’S COFFEE ROASTERYさんでショップロースターを使うようになって、より意識して勉強しつつ毎回トライ&エラーを繰り返してきました。TARO’S COFFEE ROASTERYさんの松村さんや身近な焙煎される方とも情報共有しながらやってきました。今でも試行錯誤しながら焙煎しています。

 

 

――――― 豆の仕入れはどのように行っていますか。

SPECIALTY COFFEE WATARUさん、海ノ向こうコーヒーさんなどから仕入れています。新しいインポーターさんも増えてきている印象です。常にアンテナを張って質の良いもの、自分の納得いく品質のものを仕入れるようにしています。

 

――――― 間借り形式を選ばれた理由を教えてください。

キッカケがあったからという感じで、僕の場合は、探して「間借り」をしたわけではないんですが……。

実は、始めたばかりのときはウェブ(プログラミング)やデザインの仕事と、間借りコーヒーのWワークにしようと思っていました。コロナ禍になり、コーヒーだけでやっていきたいとう気持ちが強くなり、今はコーヒー1本でやっています。

 

 

――――― 「コーヒーだけに絞ろう」という心境の変化は、なぜ起きたのでしょうか?

最初は、TACOS shopの営業時間との兼ね合いで平日だけの午前中だけしか借りられなかったんですが、午前中だけだと収入が不安定だったんです。途中から営業時間も伸びたのですが、それでもWワークで営業していると「コーヒーが上手くいかなくても、もうひとつの仕事で頑張ればいい」という妥協というか、甘えのようものが出てきてしまうと感じました。「二兎を追う者は一兎をも得ず」というように、中途半端は良くないと思っていましたし、コーヒーに向き合うほど「コーヒー一本で仕事をしていきたい」という気持ちが強まりました。デザイン&ウェブの仕事を受けるのは辞めようと決めたのは、2020年5月でちょうど1回目の緊急事態宣言明けぐらいのときですね。

 

 

――――― 2020年、最初の緊急事態宣言発令時はどのような対応を?

思い切ってお店は閉めていました。店舗営業ができないので、ウェブショップを開設しました。休業中にコーヒー関係者の発信を見て、刺激を受けたこともあります。お店を再開したのは5月下旬でしたが、改めて営業できることの有難さ、来てくださるお客さまの有難さを感じ、モチベーションも上がりました。

 

 

――――― ECサイトは、どちらのものを使っていますか。

STORESです。(https://andohcoffee.stores.jp)いろいろ検討した結果、導入しやすくデザインもシンプルで良かったので導入しました。

 

 

――――― 売り上げに占める割合は。

今は、店舗が7、EC3くらいの割合です。

 

 

――――― ECで人気の商品は?

「テイスティングセット(75g × 3種)」2100円(税込)ですね。いくつかの種類を試せて、手頃なのが支持されていると思います。

ひとつだけ課題だと思っていることはサービスの質。店舗であれば、お客さまの好みを聞いて、やり取りしながら決められますが、現状は難しい。ECでも、同じくらいのサービスまで持っていけたらと思っています 

 

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――――― yori(@yori_coffeeandbaked)さんのお菓子なども販売されていますね。どのようなご縁ですか?

吉祥寺のコマグラカフェさんが、吉祥寺の店舗ともう一つハーモニカ横丁でカフェを始めていたんです。そのとき、間借りで営業されていたのがyoriさん。yoriさん、現在は間借りはされていないんですが、ウチでお菓子を扱えたらいいなと思って声を掛けました。

 

 

――――― 「ゲストスイーツ」など、他のブランドさんとのコラボレーションにも積極的ですよね。

ゲストスイーツは、2021年5月8日に始めました。三鷹で、ポップアップでドーナツをだしている(@days+doughnuts)さんから、「ドーナツに合うコーヒーを開発してもらえませんか」という依頼があって。一緒に何か出来るといいなと思って。三鷹で営業する前に、ウチに商品を届けてもらっています。試験的に始めたので個数は未だ少ないですが、常連さんも関心を示してくれます。見た目もポップで可愛いので、評判が良いですね。

 

 

――――― 人気メニューを教えてください。

季節にもよりますが、「本日のコーヒー」450円(税込)は日替わりでやっています。その週、そのときの飲み頃のコーヒーをチョイスしたもので、他のコーヒーよりも若干安くしています。ドリンクはどれも満遍なく人気ですよ。

 

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――――― 間借り経営のメリットは?

間借り元のお客さまにも、情報がいき渡りやすいと思います。中にはTACOS Shopと両方に来てくれる人もいます。身近で参考になるような飲食店がある、というのは有難いですよね。

もともと、自分が好きだったお店ですし、オーナーさんからも直接学べるのが魅力です。

売り上げから手数料を何%で、というシステムで営業していたときは、売り上げの共有もしていました。「どうしたらお客さんが増えるか」など、アイデアを出しながら営業できるのも心強い。

TACOS shopとandoh coffeeとでイベントに出店したこともあります。そういうときの宣伝の仕方やお客さまとの接し方も身近で学べました。間借り元から離れて、独立して営業するのもいいと思いますが、お互いに気にしながらやっていくと相乗効果があるように思います。

 

 

――――― なるほど。仕事のやり甲斐は?

自分で豆を選んで焙煎したコーヒー豆を扱っているので、「コーヒーには、こんな楽しさもあるんだよ」ということを伝えたいと思っていいます。初めてのコーヒー体験をしてもらえたら嬉しいです。具体的には……提供前に、お客さまの好みは聞くようにしています。「酸味が苦手」という方が多いですが、そのお客さまはどういった経験から酸味が苦手なのかを聞いたうえで、コーヒーのご提案をするようにしています。ウチみたいに、酸味のあるコーヒーも扱っているお店はみんなそうだと思いますが、共感してもらえるようなコーヒー、概念を覆せるようなコーヒーを提供したい。コーヒーの楽しさを伝えていきたいので、苦手意識を持たず、新しい発見をしてもらえたらいいですね。

 

 

――――― 反対に、難しさはありますか。

お客さんが来ないとき、売り上げが良くないときは大変です。そういう状況は、「何ができるかな?」と考えるので、売り上げだけを見れば大変ですが、課題を見直す機会やアイデアの源にはなっていると思います。長い目で見るようにして自分を慰めています。

 

 

――――― コロナ禍でのご苦労は?

一回目の緊急宣言発令時は、お店を締めていました。ECの注文が入ること以外はこれといった仕事がなく、だらだらしてしまった部分があります。ヤバい状況なのに、思うようにモチベーションが保てず、とてももどかしかったですね。

 

 

――――― SNS運用で、心がけているポイントは。

分かりやすいこと。写真に文字をのせて、一発で、「何を伝えたいのか」のかがわかるようにしています。文章は、読みやすく、だらだら書かず、内容も堅くなりすぎないように心がけています。

 

 

――――― 今後どのようにandoh coffeeを展開していきたいですか?

いずれは店舗を持ちたいと思っていて、ちょこちょこ探しています。去年も1つだけ物件を申し込みましたが、他のところに決まっちゃったんです。実店舗を構えるなら、やはり吉祥寺エリアが良いなと思っています。今は、駅チカですが、駅から離れた住宅街でもいいかなと思ったりしています。

 

 

<中島講師コメント>

元デザイナーさんと言う経歴をしっかりと活かされていて、ブランドに必要なバランス感を持ってらっしゃる方ですよね。コーヒーに造形は深いけども、デザイン性はよくわからない、、、とか。デザインに造形は深いけども、コーヒーはわからない、、、と言う方々が世の中のブランドオーナーに多いと思ってます。そのような総合得点が高いのが成功されている要因ですね。飲食店の空いてる時間帯からスタート、そしてEC販売ととても自然な流れで展開されているので、今後はロースタリー、リアル店舗と選択肢もタイミングで色々ありますのでぜひお手本として皆様には参考にしてもらうと良いです!これからの活躍、応援してます!

 

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中島誠講師

エンタメカフェプロデューサー

(株)ZERO CREATIVE 代表取締役

(株)リノベーションプランニング社外取締役

Instagram:@nakajima_makoto_

さらに詳しいスクールの特長はパンフレットに
記載しています。お気軽にお問い合わせください。

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