• KitchenBASE 中目黒店入居「江戸前 海幸」オーナー岡田美幸さん

    2021年04月02日(金)

飲食業界が進化する中、店舗を持たず、コストをかけずに利益を出すにはどういった手法があるのか。

デリバリー・ネット販売専門店の最前線で活躍される方は、どんな工夫をされているのかなど、

ビジネスのエッセンスを学ぶべく、今回は当校でも講師を務めていただいているエンタメカフェプロデューサー中島 誠講師と共に、中目黒のクラウドキッチン「KitchenBASE」を訪れました。

 

<訪ねたのは……>

「江戸前 海幸」オーナー岡田美幸さん

和だしジュレベースでいただく「海鮮重」が人気。提供するパッケージにもユニークなアイデアが。

 

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(以下、インタビューは中島講師)

―――― 寿司職人としてのキャリアについて教えてください。

2019年秋に、寿司の専門学校に通い2か月間お寿司を学びました。その後、専門学校の同期が働いているお寿司屋さんで、半年間付け場に立ちました。私が働いていた店舗ではベテランの職人さんから駆け出しの職人さんまで働いていました。新しいタイプのお店で、雰囲気も良かったです。

 

―――― なぜ、お寿司を選んだのですか?

元々働いていたのは、外資系金融で、外国人の同僚にもお寿司好きが多く、「世界中の人に愛されるお寿司ってすごいな」思っていました。私自身も旅行が好きで出張にも行っていました。世界中、どこに行ってもお寿司はあるし、知名度も高い。あとは、寿司職人が直接、お客さんに握りを提供するのも他にないスタイルで面白いですよね。まさか自分がなれるとは思っていなかったですが、寿司学校を見つけて「面白いかも!」と思い入学。学んでみたら奥深さに魅了されて、すっかりハマってしまいましたね。海外で自分のお店を持つのもいいなと。

―――― なぜクラウドキッチンに入居したのでしょうか?

会社勤めしていたときもITの仕事をしていたので、ITとお寿司を組み合わせて、私ができることをしたいと思いました。コロナ禍というのもありますが、「フードテック」という言葉も定着し、フードデリバリーも最先端の業態で可能性を感じました。

 

―――― KitchenBASEの魅力は?

フードテックをやりたいと思い、見学に行こうと思いました。そこで、取締役・野原さんに現在のキッチンを見せてもらいました。「私達もKitchenBASEを立ち上げたばかり、一緒に成長していきましょう」という言葉にグッときて、飛び込んでみようと思いました。

 

―――― 会社の姿勢も良かった?

そうですね。設備が全て揃っていて、すぐにスタートできるような環境でした。見学に来て、ここでやりたいと即決しました。

 

―――― 他に候補は?

ないです。見学したのも、中目黒店だけ。とにかく早く始めたかったんです。一回目の緊急事態宣言が出る直前に見学に来て、契約したのは2020年4月です。空きが出る予定だったので、店舗が空き次第すぐに入居しました。

 

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―――― 現在、対応しているプラットフォームは?

Uber Eats、Wolt、出前館、FOODNEKO、Chompy、fineDine、menuです。

 

―――― 実店舗に対してはどのようなお考えですか。

ひとつのオプションとしてはもちろん考えます。デリバリー業態と、実店舗の両方を持つことで相乗効果もあるなと思っています。

いつかは、正直分からないです。いい物件があればすぐに開業するかもしれません。ひとつの理由に、集客という点があります。フードデリバリーは、半径約3Km以内のお客さんにしか届けることができません。店構えがあれば、多くの方に知ってもらうことになります。ただし、戦い方はとても違うだろうな、と感じています。

 

―――― メニュー構成の工夫は?

届いたときに、いちばん美味しい状態になるように設計しています。オーダーして、届いて、食べるまでをひとつの「食体験」だと考えています。例えば、海鮮とジュレは透明なカップいっぱいに入れて、ご飯と別に提供します。見た目もいいですし、カップに入れることで運ぶ際の衝撃が緩和されます。海鮮丼特有の「ドリップ」もないので、そういうものを極力避ける設計をしています。めちゃめちゃ考えているんですよ!(笑)ただ、実店舗で提供するのなら方法はまた変わると思います。

 

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―――― このアイデアは、ご自身で考えた?

そうです。普通の店舗さんでもデリバリー始めるところが増えていますが、そこまで考えずに始める方が多いのではないかと思います。今あるメニューをそのまま売ると、どうしても店舗で食べる状態と比較されてしまいます。冷めていたり、麺が伸びていたりすると、ガッカリされるケースが多いと思います。

 

―――― 入居に際して、かかった費用について教えてください。

入居費用、資材、人件費、トータルで100万円くらい。自己資金だけですみました。キッチン設備は全てあるので、設備投資は0円です。プラットフォームによっては端末を貸してくれます。レシートプリンターは買いました。節約したところは特にないですね。

 

―――― 仕入れ業者さんは?

うには、北海道の業者さんから直接買い付けています。うに屋むらかみさんというレストランも運営されている会社で、めちゃめちゃ有名です。私はうにが大好物なので、そこは譲れませんね。原価が高いので、そこまで利益をのせられないんですよ。でも、リピートしてくださるかたは多いので違いが分かるんだと思います。

デリバリーでこれが食べられるの?っていうくらい、クオリティの高いものです。

他のお魚はネットで卸販売している業者さんがいるので、ポチっとクリックしてネットで注文しています。翌朝新鮮な魚が届きます。

 

―――― お米の仕入れは?

ネットです。一般的な業者さんから購入しています。

 

―――― 豊洲などでは、これくらいの量を買わないと卸さない、というケースもあると聞きましたが。

豊洲には、そうした慣習は残っています。顔が効くようにならないとナメられる、といった文化もあると思います。豊洲に毎日通って関係を築くのはとても時間がかかると思います。なので、そこは効率的にインターネットで買うようにしています。

 

 

―――― ゴーストキッチンならではの面白さは?

実店舗と比べるとオーダーの入り方が全然違います。もしも実店舗で営業していたら、お客さんも満席なら入るのをやめたり、空席があれば入ろう、という方もいますよね。当たり前ですが、こちらの状況は全く把握されずにオーダーが入るので、ピーク時はものすごい数がどんどん入るんです。みんなお腹が減る時間は一緒なのかな?それは面白いです。

逆に、入らない時間はピタッと止まります。お客さんがいないときは、データを見て戦略を考え、PRを打ってみようか?など、作戦会議をしています。メニュー変更や、プロモーションをつけたりといった変更はスピーディにできます。それが当たると面白いし、やり甲斐です。

 

―――― PRとはどのようなものですか?

プラットフォームによっては、アプリの一番上に表示される広告枠があるんですよ。あとは、例えば、オーダー3,000円以上なら500円割引というキャンペーンをうってみたり、といったことですね。

 

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―――― ゴーストキッチンのメリットは?

スピード感がすごくあること。この時代、スピードは大事です。例えば、ウチはサラダメニューがありますが、売れ行きがあまり良くなかったんです。もうちょっと売りたいと考えたときに、海鮮丼の店舗から独立したサラダ専門店を作ろうと思いました。思いついて、開業まで2週間以下でできました。新店舗を開けるのがそれくらいのスピード感でできるというのは、大きなメリットです。試してみる感覚で、もう1店舗コストをかけずにオープンできました。ここまでスムーズに運んだのは、KitchenBASEさんが、店舗登録、メニュー開発、メニュー構成もサポートしてくれたおかげ。あとは、私たち自身も慣れてきたのもあるかもしれません。

―――― 売り上げは上がりますか?

そうですね。すごくコストがかかるわけではないので、私たちとしては1万円でも2万円でも売れればいいと思っています。

 

―――― 人気メニューは。

まぐろの海幸宝石重2800円。中トロの海幸宝石重 3200円も追い上げるくらい人気です。本気の中トロ生雲丹重5900円も出ますね。

 

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―――― 他店との交流は?

めちゃくちゃありますよ。昨日の売り上げどうだったー?とか話をしますしね。試食をしてもらって、アドバイスしてもらうこともしょっちゅうです。例えば、海鮮サラダにライム添えることにしたのは、メキシコ料理「Tacos&Burrito アミーゴ 中目黒」さんのアドバイスです。「もうひと味、欲しい」というときに、「ライムが合うと思いますよ」と、厨房からライムを持ってきてくれて。

私たちが、直営以外ではいちばん長いので、今までやってきたような戦略を他店にシェアしたりもします。

 

―――― デメリットは?

シェアキッチンだから、というよりはゴーストキッチンだからこその難しさはふたつ。店構えがない分、お客さまは認知しにくいです。先日あるテレビ番組に出させていただきましたが、実際に買えるのはキッチンから半径3Km圏内の人です。テイクアウトはできるものの、このご時世、食べられる場所も限られているので……。ECは商品特性上、難しいかな。

あとは、お客さまの反応が見えないという点もあります。対面のお寿司屋さんなら、食べている人の様子を見ながら「次は何をオススメしよう」と戦略を立てていくけれど、表情も見られないし会話も聞こえません。今知りたいのは、海鮮重に煮切り醤油をつけているんですが、果たして、これをお客さんは使っているのかな?という点です。アンケートを入れたりもしているけれど、そういった細かいところまで答えていただける方は少ないですね。

 

―――― 必要とされているのか知りたい?

改善したいんですよ。味が飽きたときに、味変になっているのかどうかを知りたいんですが、お客さまの声を拾いづらい。評価をしてもらえる仕組みもあるので、そこはシビアにジャッジが返ってきますよ。でも、そういう細かな意見の抽出は課題ですね。今でいうとClubhouseとかインスタを活用するのが方法ですかね。

 

―――― 出店して得られた発見は?

こうして取材を受けることで、フードテックが注目されていることを感じます。フードデリバリーは最先端産業で、まだまだこれから伸びていく産業。世の中どんどん変わっていっているなという実感が得られるので、それに対応して自分もアップデートしていかなきゃ、と感じます。最終的には日本に限らず、世界の人に提供していきたいですね。

そうそう、先日とても嬉しい出来事があったんですよ!

海外に住んでいる彼女が、海外からUber Eatsをオーダーして中目黒エリアに住む彼氏に届けてほしい、という依頼があったんです。国境を越えて、オーダーを受けたんです!!私たちにもメッセージをくれて、「彼氏にメッセージをつけて送ってください」と。なんでもできるなと感心しましたね。これから技術が進化して、できることが増えていくと思います。この件をTwitterで発言したら、多くの配達員さんがシェアしてくれました。配達員に関する悪いニュースもありますが、協力的な方が多いですよ。無機質に見えて、意外と温かい世界です。

注文してからのワクワク感、パッケージを開けた瞬間の驚き、食べて美味しい、という食体験を世界中の人に届けたいなと思います。

世界中の人が状況変化に対応して、フードテックに注目して、こういう結果が出ているんだと思います。常に最先端でいけたらと思います。

 

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Order 醤油をかけない海鮮丼 江戸前 海幸 Edomae UMISACHI Delivery Online | Tokyo | Menu & Prices | Uber Eats

 

 

<中島講師コメント>

「IT業界から飲食へのキャリアチェンジをされる方は昨今多いですよね。フードテックという言葉は以前からありますが、コロナ禍で更に広がってきた印象です。飲食業にもともといなかった方の方がフードテックリテラシーが高いですね。メニュー提案もクイックに対応されているのも素晴らしいですね。フードロスの観点からも具材を使い回しすることはどんな業態でもオススメです。コロナ以前からも変わらずそうですが、ちゃんとファンをつけてから実店舗の必要性があったら検討するっていう考えがスタンダードになってくると思っています。これからの活躍、応援してます!!」

 

中島誠講師

エンタメカフェプロデューサー

(株)ZERO CREATIVE 代表取締役

(株)リノベーションプランニング社外取締役

Instagram:nakajima_makoto_

さらに詳しいスクールの特長はパンフレットに
記載しています。お気軽にお問い合わせください。

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